「日本男色史巡り 第11回:日本仏教の男色」美少年を巡って寺同士が大抗争!?
2018年3月30日 更新

「日本男色史巡り 第11回:日本仏教の男色」美少年を巡って寺同士が大抗争!?

日本の男色史を、ゆかりの品や場所とともにご紹介する連載『日本男色史巡り』。第11回は、実は美少年の園だった日本の有名な寺社仏閣を巡ります。今月公開する日中合作映画「空海 KU-KAI」の主人公、弘法大師空海が中国から持ち込んだといわれる日本の男色。ときに惑わし、ときに悟りへと導いた美しい稚児たちの秘密とは!?

黒澤はゆま黒澤はゆま

日本の男色の起原は空海!?

空海

空海

唐より真言密教を持ち帰り、真言宗を開いた僧侶・空海。弘法大師の名で知られ、東寺(教王護国寺)や高野山の金剛峰寺など、今も残る名寺を建立し、当時の日本の仏教界を席巻しました。
世界に冠たる日本の男色。
その起源は、弘法大師、空海であるとずっと信じられてきたようです。

例えば、『醒睡笑(すいせいしょう)』という室町末期に成立した書物には、
「この若道という事は、昔たれがたくみ出したるぞや」

「この道は高野大師弘法といふ人、これの御影堂に殊勝顔して居らるる坊主の、唐までありき廻り、かやうの難儀を仕出されたる」
via 『江戸男色考〈若衆篇〉』(柴山肇著、批評社)
と稚児同士の問答という形で記されています。

また、江戸時代に著された『新童児往来万世宝鑑(しんどうじおうらいばんせいほうかん)』にも、
かの情けどころは、まえうしろ共、四十八ひだあればとて、いろは四十八字をつくり、男女にそのわけをしらするかくし歌をおしへ給ひしとなん
via 『江戸男色考〈若衆篇〉』(柴山肇著、批評社)
とあります。

説明すると、前だろうが後ろだろうが、性愛の要たる繊細な部分「情けどころ」には、四十八の襞があると信じられており、それにちなんで、弘法大師はいろは四十八文字を作ったというわけです。
 (15290)

戯れ句のだしにされることも多く、いくらなんでも偉大な宗教家がこんな下品な歌を残すわけはないのですが、作者として擬されているのが、
恋といふその源をたずぬれば ばり、くそ穴の二つなるべし
via 『江戸男色考〈若衆篇〉』(柴山肇著、批評社)
他にも「きゃたつがえし」というアクロバティックな体位の創始者にされもていますし、男色にぴったりの"広い"お尻を「文殊尻」と呼ぶ由来も、
弘法大師、文殊といえる年増の地若衆に揉まれ、此の道の祖師となる
via 『江戸男色考〈若衆篇〉』(柴山肇著、批評社)
と勝手に空海のせいにされています。

これは、空海が日本最古かつ最大級の文化的英雄で、平仮名から温泉、果ては讃岐うどんまで、なんでもかんでも開祖にされちゃう人ということもありますが、彼が高野山という、男だけが集住する巨大宗教都市を作ったことも要因の一つだと思います。

戒律に縛られているうえ、物理的に女性がいない環境。

若い体をもてあました僧侶たちは、その性的リビドーを同性、特に少年に向けました。そして、この高野山と、同時期に出来た比叡山で生まれた男色という隠花は、宗派を超えて、日本仏教界全体にはびこることになるのです。
高野山 金剛峰寺(和歌山県伊都郡)

高野山 金剛峰寺(和歌山県伊都郡)

弘仁7年(816)に空海が真言密教の道場として創建した真言宗の総本山。高野山全体を境内地として総本山金剛峯寺と称し、山内には117社の寺があります。また国宝の不動堂のほか多くの文化財も保有。

95人の少年を抱いた高僧とは!?

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黒澤はゆま

黒澤はゆま

宮崎生まれ。大阪在住。2013年に歴史小説『劉邦の宦官』でデビュー。他著作に真田昌幸の少年時代を描いた『九度山秘録』、世界史・日本史上の少年愛を紹介した『なぜ闘う男は少年が好きなのか』がある。愛するものはお酒と路地の猫。 公式

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