【男だけど女になり切って】土佐日記に詠まれた和歌のゆかりの地
2019年1月29日 更新

【男だけど女になり切って】土佐日記に詠まれた和歌のゆかりの地

紀貫之による土佐日記は、彼が女性に仮託して書き上げた一種の旅行記です。旅のつれづれが描かれ、それを彩る50首以上の和歌が特徴ですね。今回は、土佐日記に登場する和歌とゆかりの地をいくつかご紹介したいと思います。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

土佐日記とは?

「平安時代を代表する歌人・紀貫之」

「平安時代を代表する歌人・紀貫之」

土佐日記は、延長8(930)年から承平4(934)年にかけて土佐の国司として赴任した紀貫之が、任期を終えて京へ戻る際の出来事を日記スタイルで記したものです。成立は承平5(935)年ごろと言われています。
書き手を女性として仮名文字で書いた点が最大の特徴で、漢文をメインとして書く男性が仮名文字で文章を著したことは、当時としては画期的でした。その後に登場する「蜻蛉日記」などの女流日記に大きな影響を与えています。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」という書き出しは有名ですね。
土佐を離れる時から、なかなか進まない航海にやきもきしたり、海賊の襲来を恐れたり、京が近づくと望郷の思いを新たにするなど、飾らない心情がつづられています。

紀貫之船出の地・高知県高知市大津

一行が船出した大津は、現在の高知県高知市大津だったそうです。大津小学校の敷地内には、「紀貫之船出の地」という碑が建てられていますよ。

ここで詠まれた歌が、「都へと 思ふをものの 悲しきは 帰らぬ人の あればなりけり」です。京で生まれ、土佐へと連れてきた子が、ここで亡くなってしまいました。その子を思って詠んだ歌となります。

「あるものと 忘れつつなほ なき人を いづらととふぞ かなしかりける」とも詠んでおり、子が亡くなったことを忘れて思わず「どこか」と問うてしまうことの悲しさが表れています。

紀貫之の子への想いが感じられる高知県室戸市羽根町

「羽根崎にある紀貫之土佐日記の碑:実際に、貫之は土佐で...

「羽根崎にある紀貫之土佐日記の碑:実際に、貫之は土佐で子供を亡くしている」

via 写真提供:室戸市教育委員会
一行が立ち寄った羽根という土地は、現在の高知県室戸市羽根町にあたります。室戸阿南南海岸国定公園の西入口に貫之の歌碑が設置されており、「まことにて 名に聞く所 羽根ならば 飛ぶがごとくに 都へもがな」という歌が刻まれています。

日記中では、幼い子供が「はね」という地名を聞いて呼んだ歌とされており、「ここが羽根という土地ならば、飛ぶように都へ帰りたい」という思いを表したそうです。
ただ、この子供が歌を詠む姿から、亡くなった子を思い出して悲しむ様子も描かれています。

紀貫之の歌碑がある徳島県鳴門市の土佐泊

「鳴門市の文化財に指定されている貫之の歌碑」

「鳴門市の文化財に指定されている貫之の歌碑」

via 写真提供:一般社団法人 鳴門市うずしお観光協会
一行が立ち寄った土佐泊は、現在の徳島県鳴門市鳴門町にあります。潮明寺には、「としころを 住みし所の なにしおえば きよる浪をも あわれとぞ見る」という歌碑が設置されています。
日記中では、土佐と言う別の所に住んでいた女性が「ここは昔住んでいたところと同じ名なので懐かしく、寄せる波さえもしみじみと眺めることです」と詠んだ歌とされています。


失った子への思いがあちこちに見られる土佐日記。ゆかりの地とそこで詠まれた和歌を知ると、貫之の思いも感じられると思いますよ。

(xiao)
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