古地図で発見!真田、黒田、毛利…東京に残る戦国武将の遺構
2018年5月31日 更新

古地図で発見!真田、黒田、毛利…東京に残る戦国武将の遺構

関ヶ原合戦後、藩主となり江戸に藩邸を持った武将たち。東京には彼らの遺構がいくつも残されています。今回は、真田信之が東軍に参戦した真田家、黒田長政が関ヶ原で奮闘した黒田家、西軍敗北となるも減封にとどまった毛利家の遺構を、歴史をテーマにした街歩きガイドを務める岡田英之さんが古地図をもとにご紹介します。

岡田英之岡田英之

真田家の遺構:真田壕(東京都千代田区)

関ヶ原の戦いでは東軍と西軍に分かれて参戦した真田家。
真田幸村として知られる信繁の兄、信之は東軍に参戦して勝利し、信濃松代藩10万石の藩主となりました。

江戸城築城においては江戸城西側、甲州街道の近くの要衝を抑える外濠を建設、管理やメンテナンスをしたと伝わります。
それは紀尾井坂から続く喰違見附の北側、現在の上智大学グラウンド(真田堀グラウンド)として使われている一帯です。
真田濠を江戸城内、上智大学側から見る。

真田濠を江戸城内、上智大学側から見る。

via 写真提供:岡田英之
真田壕の場所。

真田壕の場所。

via 提供:岡田英之
真田濠に出向かれた際には、ぜひ城内の土塁の上に作られた散策路を歩いてみてください。
外濠として非常に幅の広い水濠が設けられている上に、城内側には土塁がそびえ、守りをより堅固にしています。
土塁の傾斜も土を積み上げても崩れにくく、かつ敵兵の侵入を阻む絶妙な角度を楽しめます。
この様な場所、そして構造を作ることを命じられた真田家は、江戸幕府の中でも一定の評価(同時に脅威ともいえるもの)を得ていて、なおかつそれだけの技術力をもっていたと考えることができるでしょう。

残念ながら真田濠自体は先の東京大空襲によって大量に発生したがれきを処分する場所となり、埋め立てられてしまいました。
この処理作業に上智大学が協力したことにより、その埋め立て地を上智大学がグラウンドとして貸し出しているという歴史があるのです。

真田家の屋敷跡を巡る

真田家の主家である信濃松代藩の真田家の江戸屋敷ですが、「上屋敷」は西新橋一丁目の交差点に程近い場所にありました。
江戸城外濠に面した場所に、今はオフィスビルが建っています。
真田家上屋敷のあった場所

真田家上屋敷のあった場所

外濠(オフィスビルが外濠上に連なる)場所から、真田家上屋敷方向を見る。
via 写真提供:岡田秀之
真田家上屋敷の場所。

真田家上屋敷の場所。

via 提供:岡田英之
同じく真田家の「下屋敷(古地図表記は中屋敷)」は赤坂氷川神社の門前東側、現在のアメリカ大使館宿舎の一部にありました。
真田家下屋敷の場所。

真田家下屋敷の場所。

via 提供:岡田英之
この場所には時代を感じる花崗岩で築かれた見事な石垣が広がっているのですが、これは真田家の屋敷のものではなく、後世に三井財閥が買い取って屋敷とした時のものと考えられます。
赤坂氷川神社正面門前。

赤坂氷川神社正面門前。

via 写真提供:岡田英之
花崗岩は白に黒のまだら模様が美しく、また削ることが難しいためかなりの費用を費やし、隙間の見えない石垣を構築したと考えられます。
真田家がこれを築いたとすると、江戸城城門の要や天守台に使われる様な石をふんだんに使うことになり、大変恐れ多いことになったでしょう。

ちなみに真田家の「下屋敷」から南部坂を挟んだ対面には、筑前福岡藩黒田家の「中屋敷」が広がっていました。
古地図には「松平」の苗字になっていますが、これは「松平」の名乗りを許されたものです。
これは古地図によくあるケースで、後ほどご紹介する毛利家もそうなっています。
写真提供:岡田英之 (20277)

南部坂、写真右手が信濃松代藩真田家屋敷、左手が筑前福岡藩黒田家屋敷。
via 写真提供:岡田英之
36 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

岡田英之

岡田英之

おかだひでゆき。1977年、神奈川県生まれ。株式会社歩き旅応援舎での古地図散歩や、SNSを活用した博物館散歩、鎌倉散歩といった街歩きなどのガイドを務める。特に、歴史ある「場所」「モノ」に対する、専門用語を使わない、わかりやすい解説を得意としている。テレビ朝日系列「羽鳥慎一のモーニングショー」のコーナー、「良純未来図」や、BS朝日の「テイバン・タイムズ」に歴史案内人として複数回出演。著書に『東京街かど タイムトリップ』(河出書房新社)がある。 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

江戸の町にタイムトリップ!?深川江戸資料館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第5回】

江戸の町にタイムトリップ!?深川江戸資料館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第5回】

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は深川江戸資料館です。江戸時代末期の町並みを実物大で再現、細部までこだわった展示室は、まるで当時にタイムトリップしたかのよう。初めての人はもちろん、再度訪れたくなる資料館のディープな魅力をご案内します。
どこから撮ってもフォトジェニック!国宝「松江城」【月刊 日本の城】

どこから撮ってもフォトジェニック!国宝「松江城」【月刊 日本の城】

webサイト「日本の城写真集」の管理人・けいすけさんが、日本の名城の見どころ、撮りどころを徹底的に紹介する連載「月刊 日本の城」。第10回は松江城をご紹介します。水濠脇にそびえる高い石垣、石垣上に建つ櫓、そして現存天守と、どこを切り取っても絵になる松江城のおすすめポイントを写真を中心にご紹介します。
歴ニン君:諸国漫遊記編★第二忍「半蔵門編」

歴ニン君:諸国漫遊記編★第二忍「半蔵門編」

さすらいの忍者・歴ニン君が日本各地の忍者ゆかりの地を旅してまじめに忍術を学ぶ(?)「諸国漫遊記編」。今回は江戸城跡の半蔵門だよ。徳川家康に仕えた服部半蔵(正成)の屋敷が目の前にあったことからそう呼ばれてるようだけど・・・その真相をハンゾー君がお答えします!
天下の名器・国宝「曜変天目」が公開中!静嘉堂文庫美術館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第4回】

天下の名器・国宝「曜変天目」が公開中!静嘉堂文庫美術館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第4回】

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は三菱財閥の2代目・岩﨑彌之助とその息子・小彌太の集めた美術品を所蔵する静嘉堂文庫美術館です。江戸をはじめとする日本や東洋の貴重な美術品のなかでも国宝「曜変天目」の所蔵で知られる美術館の魅力をお届けします。
隅田川花火大会の歴史は300年!夏の風物詩の意外なルーツ

隅田川花火大会の歴史は300年!夏の風物詩の意外なルーツ

夏の風物詩といえば花火。全国各地で趣向を凝らした花火が打ち上げられる大会を心待ちにしている人も多いと思います。なかでも有名な東京・隅田川花火大会の始まりは意外なものだったんです。日本で初めて花火を見た人や、隅田川より古い?花火大会など、知ればもっと楽しめる?花火や花火大会のルーツをご紹介します。
こいつら、全員悪人!江戸の「悪」を集めた展覧会が東京で開催

こいつら、全員悪人!江戸の「悪」を集めた展覧会が東京で開催

つい惹かれてしまう「悪」の魅力。盗賊や小悪党、悪女まで、悪人を集めた展覧会「江戸の悪 PARTⅡ」が東京・太田記念美術館にて6月2日(土)より開催されます。2015年に開催された同名の展覧会がさらにパワーアップ。しかも今年は同時期に連携展が開催されるなど、東京中が「悪」に染まる?その詳細をご紹介します。
【2018年6月開催】百万石まつりや武将祭りなど歴史イベントまとめ

【2018年6月開催】百万石まつりや武将祭りなど歴史イベントまとめ

6月も盛りだくさんの歴史イベント。織田信長の命日にちなんだものや、有名人が前田利家とお松の方に扮する「金沢百万石まつり」などの大祭、平清盛生誕900年の今年は盛り上がり必至の「平家大祭」まで。歴史好きにおすすめのイベントをご紹介します。
信長もおもてなしに取り入れた!岐阜・長良川の鵜飼の歴史

信長もおもてなしに取り入れた!岐阜・長良川の鵜飼の歴史

水鳥である鵜(ウ)を使って鮎などを獲る漁法・鵜飼。特に岐阜県長良川の鵜飼は、織田信長や徳川家康にも好まれ、現在は宮内庁式部職である鵜匠により、毎年5月中旬から10月中旬まで年8回、御料鵜飼が行われています。今回は長良川の鵜飼の歴史から、同じ長良川でもタイプの違う岐阜市と関市の鵜飼をご紹介します。
再オープンでショップ、ガイドも充実!【加治まやの美術館 de 江戸巡り】第3回:東京都江戸東京博物館

再オープンでショップ、ガイドも充実!【加治まやの美術館 de 江戸巡り】第3回:東京都江戸東京博物館

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は4月に再オープンした東京都江戸東京博物館です。歴史を扱う博物館の中でも特にこちらがお気に入りというまやさんが、新しくなったポイントとともに通ならではの楽しみ方を伝授します!
実は明智光秀という説も!?謎多き天海の正体とゆかりの寺

実は明智光秀という説も!?謎多き天海の正体とゆかりの寺

家康・秀忠・家光の徳川三代に仕え、上野の寛永寺や、日光東照宮の建立に力を尽くした僧侶・南光坊天海。しかし、その前半生はいまだ謎に包まれています。高貴落胤説、あるいは2020年の大河ドラマの主役に決定した明智光秀という説もある、天海の謎の一端を、ゆかりの寺を巡りながら解き明かしていきましょう。