『応天の門』の舞台背景を知る!太宰府天満宮の講演会「応天門を往く」レポート
2019年2月25日 更新

『応天の門』の舞台背景を知る!太宰府天満宮の講演会「応天門を往く」レポート

福岡県の太宰府天満宮にて開催中の人気歴史コミック『応天の門』展。好評につき、その関連講演会「応天門を往くー菅原道真を語る」が2月10日に開催されました。満員御礼となった講演、気になるその内容とは?当日参加できなかった方も、ぜひご一読ください!

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道真公ゆかりの地・太宰府天満宮で『応天の門』の舞台背景を知る

撮影:ユカリノ編集部 (27720)

via 撮影:ユカリノ編集部
梅も見頃を迎えた2月10日、太宰府天満宮で「応天の門展」の関連講演会「応天門を往くー菅原道真公を語る」が開催されました。専門家3名による、菅原道真公の生涯や功績、そして『応天の門』の舞台である平安時代について解説される貴重な機会ということで、当日は定員オーバーになるほどの参加者が聴講。『応天の門』の世界をより深く楽しむ、その内容をレポートします。

平安前期はどんな時代だった?

講演会は「平安の諸相と菅家のおこり」と題し、平安前期がどんな時代であったか、また道真公の生い立ちや菅原家のおこりについて解説する太宰府天満宮文化研究所主管学芸員・味酒氏の講演からスタート。

「平安前期は藤原氏が立ち位置を確立する基盤となる時期。漫画でも描かれているように、当時の構図は藤原氏対一世源氏、それから大伴氏などの旧豪族という三者の時代でした。
また、嵯峨天皇が“文章経国”(もんじょうけいこく)という、学問をもって国をつくろうという思想を持っていたのも重要なポイント。これにより学者の地位がぐんと上がり、道真公が右大臣まで栄華を極める大きな要因になるのです。」
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菅原家のおこり

「菅原氏のおこりは天穂日命とされ、野見宿禰を先祖とする土師氏の子孫といわれています。土師氏の古人が菅原姓を名乗りはじめ、さらにその子・清公の働きが菅原家に大きく影響します。清公は、嵯峨天皇と学識で投合し、また中国から書籍を持ち帰ってくるという大事な役目を果たしました。それらを読みに友人たちが訪れた菅家の書斎が、のちに有名な菅家廊下となるわけです。そして菅原家は、古人―清公―是善―道真と栄えていきます。

意外に知られていませんが、日本人の名前を一もしくは二文字にし、女の子の名前を“〇子”としたのも道真公の祖父にあたるこの清公なんです。彼の業績は非常に大きく、もっと評価されるべきなのではと思います。」

道真公3つの姿

また、道真公を3つの側面からみる考察では、『応天の門』読者の皆様にもぜひ知ってもらいたい道真公の秀才ぶりが伺えます。

「まず一つ目は、学者・詩人としての姿です。
道真公は六国史を解体しカテゴリ分けした『類聚国史』を編纂しています。このように、学問をカテゴリ別に分類したのは道真公が初めてだといわれています。これにより、例えば地震が起きた際の対処法を調べるのに一から探すのでなく、それに関する項目を読めばわかるようにしたのです。
また、中国に『菅家万葉集』を送っています。これは日本文化を理解して日本語に詳しいだけでなく、中国語を理解し中国の文化にも通じていなければならないので、実はかなり大変なことなんですね。

二つ目は、政治家としての姿です。
漫画『応天の門』では政治に関わりたがらない若き道真公が描かれていますが、この時代、学者であれば政治をしなければなりませんでした。政治家になるにも、学問を積んでいなければならないのです。道真公は政治に関与しなければ大宰府に流されることはなかったという方もいらっしゃいますが、学者だった道真公が政治に関わっていくのは必然だったのですね。

そして三つめは、教育者としての姿です。
秀才・進士を100人以上も輩出したといわれる菅家廊下ですが、道真公は“学問の道は、抄出を宗となし、抄出に用は稾草を本となす”という言葉を残しています。
つまり、大事なところ抜き出し、自分なりの本を作りなさいという意味。道真公はこのような教育方針をもって優秀な弟子たちの力をうまく引き出し、集団学習方法を見出したのです。だからこそ『類聚国史』のような編纂も短期間で行うことができたと考えます。」

道真公と敵対する藤原氏、そして摂関政治の始まり

一方、九州歴史資料館学芸調査室学芸員の酒井氏は「応天門の変から阿衡(あこう)の紛議、摂関政治のはじまり」と題し、道真公と敵対する藤原家や摂関政治を中心に解説。

「天皇大権が重要とされてきた時代、帝が亡くなり皇子が幼い場合には祖母や姉といった皇女が中継ぎの女帝として即位しました。
しかし承和9(842)年に承和の変が起き、二つの皇統が一本化されると、血統をより重視するように。この頃には政務決裁システムも簡略化し、政治がシステマチックに成熟したこともあり、天皇の執政能力の必要性が低下していたのです。
そうしたなか、“幼帝”が出現し、それをサポートする“摂政”が生まれたというわけです。」
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応天門の変と摂政の成立

「9歳で即位した清和天皇を、太政大臣として補佐していたのが藤原良房です。漫画でもちょうどこの時代が描かれていますね。
そして、貞観8(866)年3月に応天門が突如炎上するという事件が起こります。
犯人が見つからない中、大納言伴善男が犯人だと密告があり、左大臣源信排除を狙ったとして大伴氏は流罪になります。清和天皇は良房に事件処理の全権を委ね、この勅によって良房は天皇大権の代行権を獲得。ここで初めて、摂政が確立するのです。」
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