【幕末の若者を心酔させた!】北辰一刀流の合理的な修養システムとゆかりの聖地「玄武館」
2017年3月21日 更新

【幕末の若者を心酔させた!】北辰一刀流の合理的な修養システムとゆかりの聖地「玄武館」

北辰一刀流といえば、坂本龍馬が免許皆伝を受けた千葉道場が有名ですね。千葉道場は通称「小千葉」。では「大千葉」とは?この「大千葉」こそ、北辰一刀流の創始者・千葉周作が開いた玄武館です。神田の玄武館は幕末期の最高峰ともいうべき道場。幕末の日本を動かした多くの若者が、汗を流した場所だったのです。

こまきこまき

北辰一刀流に人生を賭けた「イケメン」千葉周作

身長180cm越えの偉丈夫だった千葉周作

身長180cm越えの偉丈夫だった千葉周作

寛政5(1793)年に東北(岩手県説と宮城県説あり)で生まれた千葉周作は、父親とともに中西派一刀流の浅利義信のもとで剣術を学びました。浅利義信の娘を妻にした千葉周作でしたが、形稽古のやり方で義父と対立して独立。自分の剣術についての思想をつぎ込んだ北辰一刀流を創ります。この北辰一刀流の看板を引っさげた千葉周作は、各地で他流試合を行って門弟を増やしていき、その名前が広く知れ渡るようになりました。
江戸に着いた29歳の周作は日本橋に玄武館を開きましたが、3年程で神田のお玉ヶ池へ移転。周作は「お玉ヶ池の先生」と呼ばれてさらに多くの門弟が集まりました。

周作は身長が六尺(=180cm)を越える偉丈夫で、眼光の鋭いイケメンだったそうです。北辰一刀流の創始にあたっては、それまでの剣術修行における神秘的な要素を一切排して、徹底した合理的なシステムを作り上げました。男前で剣の腕が滅法強く理知的。周作、かっこよすぎです。
お玉ヶ池跡にある繁栄お玉稲荷神社(千代田区岩本町2-5)

お玉ヶ池跡にある繁栄お玉稲荷神社(千代田区岩本町2-5)

via 撮影:ユカリノ編集部

坂本龍馬も惹きつけた剣術常識を覆す合理的修養システム

高松塚古墳に描かれた玄武-亀と蛇が合体した霊獣

高松塚古墳に描かれた玄武-亀と蛇が合体した霊獣

玄武館の名に冠した「玄武」は北を守護する霊獣。北辰(=北極星)にちなんだ道場名だとされています。玄武館は、江戸三大道場の一つに数えられた名道場でした

北辰一刀流は、他流では修得するまでに約9つの段階を重ねていかなければならないのに対し、わずか3段階に簡素化された画期的な剣術でした。千葉周作によって修養システムが合理化され、それまで修得するまで10年近くかかっていたのが5年程度でOKとなったのです。その分、修得にかかる費用も少なくなりました。日本が激動した幕末期の若者たちにとって、北辰一刀流の合理的なシステムは魅力的に映ったことでしょう。

玄武館の門人には、新撰組のもととなった浪士組を作った清河八郎、江戸城の無血開城に貢献した山岡鉄舟、池田屋事件の斬り込み役だった藤堂平助、新撰組総長の山南敬助など名だたる面々が名を連ねます。そして忘れてはならないのが幕末の風雲児、坂本龍馬。千葉周作の弟、千葉定吉の道場(京橋桶町)で約2年間、北辰一刀流の修行を積んでいます。
坂本龍馬は千葉道場(小千葉)で修業した

坂本龍馬は千葉道場(小千葉)で修業した

お玉ヶ池は「文武両道」にうってつけの場所

右文尚武の碑(千代田区神田東松下町22)※工事中のため...

右文尚武の碑(千代田区神田東松下町22)※工事中のため移転先未定

岩本町3丁目交差点には「お玉ヶ池種痘所記念碑」もあり、こちらは東京大学医学部発祥の地とされています。お玉ヶ池のあった岩本町2丁目へは、地下鉄岩本町駅やJR神田駅あるいは秋葉原駅から5分~10分くらいで歩いて行くことができます。
お玉ヶ池種痘所記念碑

お玉ヶ池種痘所記念碑

via 撮影:ユカリノ編集部

千葉周作がつついたかもしれない鍋料理

周作が活躍していた頃に想いを馳せるなら、お玉ヶ池から歩いて10分ほどのところにあるあんこう料理店「いせ源」にぜひ立ち寄りましょう。天保元年(1830)創業、まさに周作がお玉ヶ池に道場を構えていた時期です。周作や門下生が鍋をつついていたかもしれませんね。また、東京都選定歴史的建造物に選定されている同店の建物は、関東大震災で全焼した後昭和5(1930)年に再建されたもので、おもむき深い風情は一見の価値があります。神田の歴史探訪の際に立ち寄ってみてはいかがでしょう。
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こまき

こまき

歴史ライター。ワイルドサイドを歩くことを信条とする。『時の娘』をはじめとした歴史ミステリーに目がなく、読む→書く→読む→書くの無限ループのうちに日々を過ごす安楽椅子ライター。昼夜を分かたずラジオを流しているラジオ狂でもある。『姓氏家系歴史伝説大事典』『江戸東京魔界紀行』(共に勉誠出版)『社寺縁起伝説辞典』『横溝正史研究』(共に戎光祥出版)等々へ記事執筆多数。

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