藩主自ら脱藩!?「最後の大名」林忠崇の戊辰戦争【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第18回】
2018年7月28日 更新

藩主自ら脱藩!?「最後の大名」林忠崇の戊辰戦争【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第18回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第18回は、昭和まで生きた最後の大名・林忠崇ゆかりの地。請西藩の第3代藩主でありながら、大名自らが脱藩してしまうという異色の経歴を持つ稀有な人物でもあります。あまり知られていない人物ではありますが、彼の戊辰戦争の軌跡を辿れば、きっと興味がわくはずですよ。

小栗さくら小栗さくら

脱藩した「最後の大名」

林忠崇(はやし・ただたか)という名前を聞いたことがあるでしょうか?知っている方はかなりの幕末通!忠崇は、昭和16年(1941)まで生きた「最後の大名」であり、その大名自らが脱藩してしまったという経歴を持つ、非常に稀有な人物なのです。
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請西藩第3代藩主・林忠崇

若き藩主・忠崇

請西藩上屋敷周辺

請西藩上屋敷周辺

水天宮前駅近くの請西藩上屋敷跡周辺。忠崇はこの上屋敷で生まれたとされます。
via 提供:小栗さくら
「江戸切絵図」日本橋北神田浜町絵図より。赤丸の部分が林家屋敷

「江戸切絵図」日本橋北神田浜町絵図より。赤丸の部分が林家屋敷

via 国立国会図書館デジタルコレクション
忠崇は、嘉永元年(1848)年、江戸浜町の請西藩(じょうざいはん)上屋敷に生まれます。父が隠居したとき、忠崇はまだ幼少だったため、藩を継いだのは父の弟・忠交(ただかた)でした。
この叔父・忠交は、伏見奉行となり坂本龍馬を捕縛しようとした寺田屋事件に関わった人物です。しかしその叔父も35歳の若さで亡くなったため、慶応3年(1867)忠崇は20歳で請西藩主の座を継ぐことになるのです。
寺田屋

寺田屋

叔父・忠交は伏見奉行として寺田屋事件に関わりました。
via 提供:小栗さくら

4ヶ月目の大政奉還

ようやく藩を継いだ忠崇でしたが、その年の10月、大政奉還により徳川家は政権を朝廷に返上することになります。忠崇が藩主になってまだ4ヶ月目の出来事でした。

大政奉還というと、二条城で大名たちが平伏している姿が想像されると思いますが、この呼び出しに応じない者たちもいました。「朝廷からいただいているのは官位だけなのだから、その官位を朝廷に返し、徳川家臣の義を明らかにしよう」としたグループです。若き忠崇もこのグループの一員として、佐幕の動きを強めていくことになります。

譜代家臣・林家

徳川家のため、「一命をなげうち、粉骨砕身つかまつり候」とまで覚悟した忠崇。彼が徳川にそこまで尽くそうとした理由は、林家の歴史にありそうです。
一心寺

一心寺

大阪天王寺の一心寺。
忠崇の叔父・忠交や、先祖である吉忠の墓所もあります。
via 提供:小栗さくら
徳川本家が松平を名乗っていた頃から家臣だった林家。
7代・林吉忠は、大坂の陣で活躍し、真田信繁が家康本陣に突撃していたときに戦死した人物です。林家にとっては、徳川家を守ろうとした誉れでもあったのではないでしょうか。

その後旗本として仕えた林家ですが、11代将軍・家斉の時代に将軍から重用され、ついに大名の仲間入りを果たします。そうした徳川家への恩や、代々仕えた誇りも、忠崇を動かした理由の一つだったのでしょうね。

戊辰戦争へ

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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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