【最果ての国際貿易港?】謎の豪族・安東氏ゆかりの地「幻の中世都市」十三湊
2017年3月6日 更新

【最果ての国際貿易港?】謎の豪族・安東氏ゆかりの地「幻の中世都市」十三湊

現在の青森県に、博多や堺と並ぶ国際貿易都市があったのをご存知ですか? 「十三湊」と呼ばれる港町で、繁栄の陰には安東氏というこれまた謎に包まれた豪族が影響を及ぼしていました。近年になって発掘が本格的に行われ、徐々にその実態が解明されてきています。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

東日本最大級の国際貿易都市「十三湊」

青森県南西部の日本海側にある十三湖。南北7km、東西5km、周囲31kmの汽水湖で、特産のシジミが全国的によく知られています。冬には日本海から強い風が吹き付けて荒涼とした風景になるせいか、同県出身の作家・太宰治は十三湖を「孤独の湖」と形容しました。

そんな最果ての地にある十三湖ですが、日本海と湖を隔てる細長い砂州の突端付近は、昔から天然の良港で「十三湊(じゅうさんみなと)」と呼ばれ、蝦夷地(現在の北海道)や日本海各地の産物の中継地として利用されていました。特に津軽地方(青森県西部)一帯を支配した豪族、安東(安藤とも)氏が本拠地を置いた、鎌倉時代後期から室町時代中期にかけては最盛期を迎え、朝鮮半島や中国大陸、沿海州との貿易も行われていました。発掘調査で見つかった中国製の陶磁器や高麗製の青磁器がそのことを裏付けており、当時の文献でも「三津七湊(さんしんしちそう)」の一つとして国内有数の港町に数えられていました。同時代、アジアの玄関口だった博多湊にも匹敵する、東日本最大級の国際貿易都市が形成されていたのです。
青森県五所川原市の十三湖

青森県五所川原市の十三湖

調査で明らかになった十三湊遺跡の規模は砂州に沿う形で南北約1.5km、東西約500mの広さがあり、当時としては本格的な都市が形成されていました。遺跡の北部が船着場などのあった港湾地区、中部が武家や町人の居住地区、そして南部は寺院などの宗教施設が立ち並んだ地区として整備されていたようです。

大帝国・元に立ち向かった安東氏

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北からも日本を狙っていた?元の皇帝・クビライ・カアン肖像画(国立故宮博物院所蔵)

十三湊を発展させた安東氏ですが、その実態は謎に包まれています。蝦夷の流れを汲み、前九年の役(1051~1062年)で源頼義に滅ぼされた安倍貞任の末裔が、津軽地方に流れ着いたともいわれています。鎌倉時代には幕府に従い、交易で得た収入の一部を専制政治を行っていた北条得宗家に納める見返りとして、蝦夷地の支配権など北方における権益を認められていました。

しかし、安東氏の北方経営にモンゴル族が打ち立てた元が立ちはだかります。日本の歴史では13世紀後半、九州北部に攻め寄せた元を幕府軍が迎え撃った「元寇」がよく知られていますが、元は同時期に沿海州(現在のロシア東南端)や樺太にも勢力を伸ばしており、蝦夷地を経て北日本に攻め込んでくる可能性もあったのです。
詳細は分かっていませんが安東氏は元の脅威に抵抗し、なんと永仁5(1297)年には蝦夷地や樺太のアイヌを率いて大陸に攻め込み、黒竜江(アムール川)流域で元軍と戦ったとも伝えられています。強力な水軍で元が蝦夷地に上陸するのを阻止したともいわれ、安東氏が非常に大きな勢力を持っていたことがうかがえます。

突然姿を消してしまった十三湊

元との衝突が収束した後、一族の内紛や鎌倉幕府への反乱などを曲折を経ましたが、安東氏は十三湊を拠点に北方の日本海を舞台とした一大交流圏を築きあげました。しかし、15世紀に安東氏が新興勢力の南部氏に追われてから十三湊は急速に衰退し、それまでの繁栄は失われてしまいました。新しく津軽の覇者となった南部氏はなぜか十三湊を打ち棄てたのです。大津波によって壊滅したともいわれていますが、これ以降、中世の港湾都市は砂に埋もれて二度と再建されることはなかったのです。

現在の十三湖周辺には古くからの寺社仏閣跡や城跡などが点在しており、中世の繁栄の名残を今に伝えています。実は十三湊遺跡の調査が本格的に始まったのは平成に入ってからと、つい最近のことです。さらに調査が進めば、中世の日本史を塗り替えるような大発見が期待できるかもしれませんね。

(黄老師)
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