長宗我部元親がひとり気を吐く四国の銅像事情「ニッポン銅像探訪記 第10回:四国の名城」
2017年12月22日 更新

長宗我部元親がひとり気を吐く四国の銅像事情「ニッポン銅像探訪記 第10回:四国の名城」

めでたく、本連載も10回目を迎えることができました。読者のみなさま、全国の銅像ファンのみなさま、いつもありがとうございます! そこでこれまでの連載を見返していたのですが、なんと第1回の龍馬(高知編)以降、四国の銅像を1体も取り上げていないことが発覚!これは四国の読者と銅像に対して失礼です。そこで今回は「名城と英雄像」シリーズの第2弾として、四国のお城を巡って行きましょう。

滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

2体ある元親像はどちらもイケメン銅像武将!

若宮八幡宮前の広場に立つ長宗我部元親初陣像。初陣前の元...

若宮八幡宮前の広場に立つ長宗我部元親初陣像。初陣前の元親は「姫若子」と呼ばれていたとされるが、そんな異名とは正反対の猛者ぶり。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
四国で有名な戦国武将といえば、多くの武将ファンは真っ先に長宗我部元親を思い浮かべるでしょう。統一を目前にして(統一した説も有)、秀吉に四国を簒奪された〝土佐の出来人〟。そしてゲーム『戦国BASARA』のヒットによって、一躍人気武将の仲間入りを果たした〝天衣無縫〟の鬼武者。その元親といえば、上で掲載した、まるで見栄を切っているかのような銅像が有名ですが、高知には元親像がもう1体あります。それがこちら↓↓
高知県立歴史民俗資料館の元親像。背後の階段を登ると、そ...

高知県立歴史民俗資料館の元親像。背後の階段を登ると、そこは岡豊城。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
岡豊城(高知県)の麓、高知県立歴史民俗資料館に立つイケメン元親像です。長槍を高々と掲げ、長髪をなびかせた姿。ダイナミックなポージングは平成以降の作品であることを感じさせますが、それもそのはず。この元親像はたった2年前、2015年に建立されたものです。
デザインは超人気絵師の添田一平さん。銅像の原画となった...

デザインは超人気絵師の添田一平さん。銅像の原画となったイラストが一時、観光ポスターに使われていましたが、それもさすがというカッコ良さ。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
この元親像が出迎えてくれる岡豊城は、長宗我部氏の父祖伝来の山城で、現在の城跡は元親が改修した姿とされます。元親は秀吉に屈服したのち、九州征伐に参加するも、軍監であった仙石秀久の傲慢にして稚拙な作戦ミスによって、愛する嫡男の信親を失ってしまいます(マンガ『センゴク権兵衛』でようやく描かれますね)。その後の元親は失意の中で迷走を続け、家臣を粛清し、居城も高知城の前身である大高坂城、さらに浦戸城へと移します。同情を禁じ得ない晩年です。
城跡に立つ「長宗我部氏岡豊城址」の碑。岡豊城は典型的な...

城跡に立つ「長宗我部氏岡豊城址」の碑。岡豊城は典型的な戦国大名の山城である。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

山内一豊と千代の立身出世ストーリー

5mの台座に立つ山内一豊像。自身の高さも4m以上あり、...

5mの台座に立つ山内一豊像。自身の高さも4m以上あり、騎馬像としては国内最大クラス。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
元親を継いだ長宗我部盛親は、関ヶ原の戦いに西軍として参戦するも、何もしないまま敗北。それによって盛親は改易となり、代わって土佐を治めることになったのが山内一豊。この一豊の騎馬像が、高知城追手門のすぐそば、県立図書館前にそびえ立ちます。

 一豊は元々、尾張の岩倉織田家(織田信長の遠い主家筋)の重臣の嫡男。それがひょんなことから信長に仕え、秀吉の家臣としてともに出世を果たし、関ヶ原の戦いでは家康について、その功績から土佐一国を与えられました。つまり、四国とは縁もゆかりもないわけですね。一豊は土佐の新領主となってすぐに、旧長宗我部氏の家臣団である一両具足を徹底的に弾圧。さらに自らの家臣は上、旧長宗我部の家臣を下とする身分制度を確立させたことで、一豊は今も地元では人気がなく、どこかヨソ者扱いをされているわけですが、現在に通じる高知の礎を築いたのが一豊であることは疑いようがありません。彼は国宝天守を抱く高知城を築き、城下町の発展に尽力しました。
銅像ではガッチリとした体格の一豊だが、戦功や戦場でのエ...

銅像ではガッチリとした体格の一豊だが、戦功や戦場でのエピソードはそれほど多くない。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
さて、山内一豊というと、司馬遼太郎の小説『功名が辻』と、それを原作としたドラマが知られています(というか、一豊のパブリックイメージは、ほぼ『功名が辻』に拠るもの)。2006年の大河ドラマでは、一豊を上川隆也、その妻である主人公の千代を仲間由紀恵が演じました。その千代の像も、高知城内に残ります。
へそくりで購入した(?)名馬と千代像。いっしょにダンス...

へそくりで購入した(?)名馬と千代像。いっしょにダンスしているかのよう。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
凜とした馬のとなりに寄り添う千代の像。すぐにピンときた人も多いでしょう。この銅像は、織田信長の馬揃えという晴れの舞台で夫の一豊が主君から目をつけられるように、溜めたへそくりで名馬を購入した、というエピソードをモチーフにしています。この逸話を知って銅像を見ると、夫・一豊が高知城城主になったことを祝って、千代は小躍りでもしているかのように見えますね。
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滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

かみゆ歴史編集部は「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。最近の編集制作物に『エリア別だから流れがつながる世界史』(朝日新聞出版)、『歴史REAL 山城を歩く』(洋泉社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(学研プラス)、『廃城をゆく5〜戦国の城を極める!』など。代表の滝沢弘康は講演や講座、メディア出演も行う。 公式

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