【神々の国の首都】小泉八雲が愛した島根県松江市でゆかりの地散歩
2018年9月26日 更新

【神々の国の首都】小泉八雲が愛した島根県松江市でゆかりの地散歩

今から約120年前、「雪女」や「ろくろ首」「耳無芳一の話」などの日本の怪談を、情緒豊かな文学作品にした小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。彼によって日本古来の伝統や文化が、広く海外に紹介されました。その八雲がこよなく愛したのが島根県松江市です。水郷と称される美しい城下町・松江の、小泉八雲ゆかりの場所をご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

宍道湖と嫁が島

宍道湖と嫁が島

via 写真提供:松江市

日本人以上に古き良き日本を愛した小泉八雲

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、1850-1904年)は、ギリシャのレフカダ島で、アイルランド出身(当時はイギリス)の父、ギリシャ人の母の元に生まれました。2歳でアイルランドに移りますが、4歳で母と生別、7歳で父を亡くします。その後、イギリスとフランスでカトリックの教育を受けますが、ギリシャ神話やアイルランドのケルト神話に親しんでいた八雲はなかなか馴染めなかったといいます。

16歳の時、遊戯中に左目を失明。19歳の時に両親に代わって八雲を養育していた大叔母が破産し、単身アメリカに渡ります。赤貧生活の中、ジャーナリストとして認められるようになった八雲は、ニューオーリンズやカリブ海のマルティークに移り住み、様々な文化の多様性に触れながら旺盛な執筆活動を続けます。

ニューオーリンズ時代に万博で日本文化に触れた八雲は、英訳の「古事記」を読みすっかり日本に魅了されます。そして日本に行くことを決意し、明治23(1890)年に来日しました。

海外から「何もかも不思議ずくめ」と思われていた当時の日本

熊野大社(島根県松江市)

熊野大社(島根県松江市)

via 写真提供:松江市
来日した八雲がまず惹かれたのは、日本の神社仏閣でした。日本人の友人から「本朝文粋」に書かれた弘法大師の話を聞いたり、盆踊りをみたり、地蔵やお盆の風習について調べたり、すぐに日本の文化にのめりこみました。
墓地へ行けば、きっとそこには、来てみてよかったと思うような、夢見るごとき観音や、微笑している地蔵を見つけることができるのである。
via 小泉八雲「神々の国の首都」
八雲は、日本人の生活を“たぐいまれなる美しさ”と賞賛しました。そしてそれは、”ただもう自分の国の古い信仰は恥ずべきものだと思い込んでいる西洋かぶれの上流階級の中には見いだされず、この国の国民的美徳を代表している一般大衆の中にある”といいました。

そればかりか、“我々のうぬぼれている西欧文明の進みゆく道が、果たしてあれが真実人間向上の正道に向かっているものであるかどうか”と、未来を予見するかのような言葉まで残しています。

八雲が愛した”神々の国の首都”、城下町・松江

八雲は来日したその年に、英語教師として島根県尋常中学校(現在の県立松江北高等学校)に赴任するため、島根県松江市を訪れました。そして東京などから消えつつあった、古き良き日本の文化を松江で発見し、すっかり魅せられてしまいます。

さらに後に妻となる松江士族の娘・小泉セツと出会い、セツが語る日本の昔話や神話、怪談に夢中になります。それらは後に「知られぬ日本の面影」(1894年)や「怪談」(1904年)などにまとめられ、広く海外に知れ渡ることになりました。

八雲は松江の事も「知られぬ日本の面影」の中の「神々の国の首都」の章で、大変幻想的に、そして霊的に描いています。
宍道湖

宍道湖

「実は湖ではなくて、夜明けの空と、それと同じ色の水とが漠然と混ざり合った、美しいまぼろしの海のようにみえる」(「神々の国の首都」)
via 写真提供:松江市

まるで建物の竜?国宝・松江城

松江城

松江城

via 写真提供:松江市
八雲から、”本丸の屋根は封建時代の兜のよう”、全体の姿は、”大きな怪物を寄せ集めて造った建物の竜のよう”と表現された松江城。

松江城は慶長16(1611)年、松江藩祖・堀尾吉晴によって築城された「現存12天守」のひとつ。平成27年に国宝に指定されました。
現存する天守の中でも、特に「望楼(ぼうろう)式」と呼ばれる伝統的な構造を残しており、五層六階の天守とあわせ、築城当時の桃山時代の建築様式をそのままの姿で伝えています。
またこの三角屋根が鳥が羽を広げたように見えるので、別名「千鳥城」とも呼ばれています。後に京極氏を経て松平氏の居城となりました。望楼からは松江の街並みや宍道湖が一望できます。
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