激動の時代を生きた「最後の浮世絵師」月岡芳年の画業を辿る
2018年6月9日 更新

激動の時代を生きた「最後の浮世絵師」月岡芳年の画業を辿る

まるで現在の漫画のような躍動感のある月岡芳年の浮世絵。歴史好きなら一度は見たことのあるのでは?幕末に生まれ明治にかけて活躍した芳年の展覧会「芳年ー激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」が8月5日(日)より練馬区立美術館で開催されます。最後の浮世絵師と呼ぶにふさわしい画業を堪能できる貴重な機会です。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

最後の浮世絵師・月岡芳年

「義経記五條橋之図」明治14年(1881)

「義経記五條橋之図」明治14年(1881)

via 写真提供:練馬区立美術館
月岡芳年は天保10年(1839)に江戸で生まれ、12歳で武者絵の名手・歌川国芳に入門します。
幕末は武者絵を中心に美人画、戯画など師に倣った作品を発表しますが、明治以降はリアルな戦闘画を手がけるようになります。

その後は新聞挿絵や風俗画、歴史画などで人気絵師に。
特に晩年の10年間に描いた作品は名作・代表作揃いで、激動の時代を生きた「最後の浮世絵師」と呼ぶにふさわしい画業を展開しました。
今までは回顧展が少なかった芳年ですが、263点もの作品から彼の画業の全貌を紹介する展覧会の開催が決定。
そんな彼の画業を追いながら「芳年ー激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」の見どころをご紹介します。

芳年が15歳の時に描いたデビュー作

「文治元年平家の一門亡海中落入る図」嘉永6年(1853)

「文治元年平家の一門亡海中落入る図」嘉永6年(1853)

via 写真提供:練馬区立美術館
芳年が12歳で歌川国芳に弟子入りし、3年後に発表したのが「文治元年平家の一門亡海中落入る図」です。
主人公を中心に、海底の潮の流れを表現する黒い線が横断し、スピード感と迫力に満ちた武者絵に仕上がっています。ダイナミックな構図力はデビュー作にして発揮されていたようです。

リアリズムを追求した“血みどろ絵”

「英名二十八衆句 稲田九蔵新助」

「英名二十八衆句 稲田九蔵新助」

慶応3年(1867)
via 写真提供:練馬区立美術館
今回、兄弟子の落合芳幾が手がけた14枚とともに公開される「英名二十八衆句」などの衝撃的な“血みどろ絵”。
芳年といえばこのような絵をイメージする方もいるのではないでしょうか?
上野戦争を目にした芳年が描く現実世界の戦闘絵は、リアリズムを重んじる近代に強く求められていたようです。
幕末から明治にかけ、劇的に変化する環境に重圧とストレスを感じていたのか、芳年は明治5年(1872)に神経を病んでしまいます。

劇的な動きをもたらす“芳年風”の確立

「隆盛龍城攻之図」明治10年(1877)

「隆盛龍城攻之図」明治10年(1877)

via 写真提供:練馬区立美術館
“血みどろ絵”は一時的なもので、明治6年(1873)末より“大蘇”の号を名乗り、意欲的に制作に携わるようになります。
新聞錦絵の「隆盛龍城攻之図」は、西南戦争を取材して描かれたものです。
このように風俗、時事的な要素が濃くなると同時に、歴史画や神話画、徳川の治世を見返す作品も描くようになり、人物に劇的な動きをもたらす“芳年風”を確立。人気風俗画家としての地位を得ていったのです。

現代も生き続ける芳年の絵

「芳年武者無類 相模次郎平将門」明治16年(1883)頃

「芳年武者無類 相模次郎平将門」明治16年(1883)頃

via 写真提供:練馬区立美術館
芳年は明治25年(1892)6月9日に没するまでの約10年間、のちに代表作となる作品を次々と発表します。
斬新な武者絵の「芳年武者無類」、月をテーマにした壮大なアンソロジー「月百姿」、美人画を集めた「風俗三十二相」など、現在もさまざまな展覧会でひっぱりだこの作品ばかりです。
21 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

ユカリノ編集部

ユカリノ編集部

全国各地の「ゆかりの」エピソードをほぼ毎日お届け。知ればもっと行きたくなる、歴史の聖地巡礼へご案内します! 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

警察博物館“大警視コーナー”は必見!日本警察の父・川路利良ゆかりの品とその軌跡【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】第15回

警察博物館“大警視コーナー”は必見!日本警察の父・川路利良ゆかりの品とその軌跡【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】第15回

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第15回は、現在の警視総監にあたる初代大警視・川路利良ゆかりの地。川路ゆかりの品が多く展示されている東京の警察博物館を中心に、出生地・鹿児島にある銅像まで、その生涯を辿ります。
戊辰戦争150周年の今こそ見るべき!国立公文書館『戊辰戦争―菊と葵の500日―』展

戊辰戦争150周年の今こそ見るべき!国立公文書館『戊辰戦争―菊と葵の500日―』展

明治維新、そして戊辰戦争から150年の今年、全国各地で関連イベントが開催されています。2018年5月26日~6月30日まで東京・国立公文書館では「戊辰戦争―菊と葵の500日―」と題した企画展が開催中。日本各地で行われた戦闘の記録や、参加した人物にまつわる資料から、戊辰戦争の実像に迫ります。同館ならではの豊富な所蔵品は必見!その展示内容をレポートします。
2018年は明治維新150年!夏に開催のおすすめ企画展5選

2018年は明治維新150年!夏に開催のおすすめ企画展5選

明治維新150年にあたる今年。高知や山口などの主要箇所もちろん、全国各地で企画展が開催されています。普段の歴史旅や夏休みにプラスしたい企画展の内容をご紹介します。
河鍋暁斎と娘・暁翠の華麗なる父娘競演!「暁斎・暁翠伝」展

河鍋暁斎と娘・暁翠の華麗なる父娘競演!「暁斎・暁翠伝」展

絵師の父娘といえば葛飾北斎とその娘・応為が浮かびますが、幕末から明治前半に活躍した絵師・河鍋暁斎にも、絵師になった長女・暁翠がいたんです。そんな河鍋父娘の作品が見られる「暁斎・暁翠伝」が東京富士美術館にて開催中。近年人気を集める暁斎の魅力と、娘に引き継がれた画業を網羅した展覧会をご紹介します。
【 理想の上司!?】兄・隆盛に劣らず有能だった!西郷従道の生涯

【 理想の上司!?】兄・隆盛に劣らず有能だった!西郷従道の生涯

2018年の大河ドラマ「西郷どん」の主人公・西郷隆盛は、日本人では知らぬものがいないほどの有名人。その実弟である従道にはいまいち光が当たっていませんでしたが、実は兄に負けじと有能だったのです。「西郷どん」では錦戸亮さんが演じ、さらに注目度が高まる従道の生涯とゆかりの地をご紹介します。
【始まりからサンタまで】日本初のクリスマスゆかりの地

【始まりからサンタまで】日本初のクリスマスゆかりの地

日本におけるクリスマスの歴史は古く、天文21年(1552)、現在の山口市にあった教会で降誕祭のミサが行われたことが始まりとされます。その後、鎖国によって消えてしまいますが、明治期の禁教令の廃止と共に復活。やがて日本の冬を彩る一大イベントとして定着しました。今回は始まりから、日本初のサンタにケーキ、イルミネーションまで、初づくしのクリスマスとゆかりの地をご紹介します。
「日本男色史巡り 第4回:幕末・明治の男色」新撰組局長、近藤勇も悩んだ幕末・明治の男色の流行!?

「日本男色史巡り 第4回:幕末・明治の男色」新撰組局長、近藤勇も悩んだ幕末・明治の男色の流行!?

日本の男色史を、ゆかりの品や場所とともにご紹介する連載『日本男色史巡り』。第4回は、次回大河ドラマ「西郷どん」の舞台、幕末・明治。新撰組局長、近藤勇も悩んだ、幕末・明治の男色隆盛の理由とは?
【日本を愛したお雇い外国人】ジョサイア・コンドルが手がけた建築物の数々

【日本を愛したお雇い外国人】ジョサイア・コンドルが手がけた建築物の数々

明治政府の「お雇い外国人」ジョサイア・コンドル。コンドルは明治新政府関係の建造物を手がけた建築家であり、日本における新進気鋭の建築家を育成することにも尽力しました。また、日本文化をこよなく愛した日本通でもあったのです。今回は、今もまだ見ることができるコンドルゆかりの建築物をご紹介します。
日本初の新婚旅行は小松帯刀夫妻だった?薩摩藩の若き家老の生涯

日本初の新婚旅行は小松帯刀夫妻だった?薩摩藩の若き家老の生涯

薩摩藩の家老として、西郷隆盛や大久保利通らとともに倒幕を推し進めながらも若くして亡くなった小松帯刀。日本初の新婚旅行を行ったのは坂本龍馬夫妻ではなく、小松帯刀夫妻だったともいわれています。『西郷どん』では劇団EXILEの町田啓太さんが演じることでも話題の帯刀の生涯とゆかりの地を紹介します。
高杉晋作、桂小五郎…明治維新の偉人たちが泊まった旅館3選

高杉晋作、桂小五郎…明治維新の偉人たちが泊まった旅館3選

幕末から明治にかけて活躍した偉人たち。彼らが心身を癒した旅館が現在も残っています。高杉晋作が刻んだ「憂国の楓」を保管する山口・松田屋ホテルや、桂小五郎が潜伏した兵庫・城崎温泉のつたや旅館など、歴史情緒あふれる佇まいも魅力です。今回は週末や夏休みにもおすすめの旅館をエピソードとともにご紹介します。