第5回:西郷隆盛の盟友たちが眠る「青山霊園」薩摩編【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】
2018年3月30日 更新

第5回:西郷隆盛の盟友たちが眠る「青山霊園」薩摩編【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する「小栗さくらがゆく!幕末維新のみち」。第5回は、幕末維新期に活躍した志士たちの多くが眠る「青山霊園」(東京都港区)。今回は特に大久保利通や精忠組など、西郷隆盛の盟友たちのお墓を、西郷との関わりと共にご紹介します。大河ドラマ「西郷どん」ではどう描かれるのか?お墓参りに行けば、彼らをより身近に感じられるはず。

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「桜田門外の変」に関与した有村家

有村次左衛門の墓

有村次左衛門の墓

(青山霊園 1種ロ12 7〜10側9番)
via 提供:小栗さくら
精忠組のメンバーだった有村兄弟。
一般的に有名なのは「桜田門外の変」実行犯の一人・有村次左衛門(有村家四男)でしょうか。次左衛門は、21歳で江戸・三田の薩摩藩邸に勤めました。そのうちに尊王攘夷派の水戸藩士らと意気投合するようになっていきます。

大老・井伊直弼によって安政の大獄が始まると、次左衛門はこれに憤慨して脱藩し、水戸脱藩浪士らと大老襲撃計画を立てて実行します。これが「桜田門外の変」です。

「桜田門外の変」を描いた浮世絵

「桜田門外の変」を描いた浮世絵

月岡芳年画
井伊直弼を警護していた者たちは浪士らに襲われ、逃れる者、戦い倒れる者さまざまで、駕籠の中にいた直弼本人も銃撃によって負傷し動けない状態になっていました。
そんな直弼を駕籠から引きずり出して首を討ち取ったのが、この有村次左衛門です。しかし、直弼の首をとった次左衛門は、目的を果たした直後、傷を受けながらも生きていた彦根藩士に斬りつけられ負傷してしまいます。
頭部に傷を負った次左衛門は、それでもどうにかその場から去ろうと歩きましたが、やがて力尽き、自刃するにも苦戦し、死を待つばかりとなりました。そうして間もなく息を引き取ったのです。

事件後、次左衛門同様に水戸藩士らと通じ、挙兵を計画していた兄の有村雄助(三男)も、幕府との関係を考慮した薩摩藩の藩命によって命を落としています。

このように「桜田門外の変」は薩摩にとっても一大事件なので、きっと「西郷どん」でも描かれるはずです。
海江田信義(有村俊斎)の墓

海江田信義(有村俊斎)の墓

(青山霊園 1種ロ12 7〜10側1番)
via 提供:小栗さくら
次左衛門の兄・有村俊斎が海江田の名になったのは、この「桜田門外の変」が影響していました。

実は次左衛門は、「桜田門外の変」の直前に祝言をあげていたといわれています。
しかし次左衛門が命を落としたため、俊斎は弟の代わりに、婿養子に入ることになりました。そして妻の家の旧姓・海江田を名乗ることになったのです。

海江田信義は、一説にはイギリス人を斬りつけたあの「生麦事件」で、リチャードソンにとどめを刺したと言われている人物。これが本当だとすると、兄弟で幕末の大事件に関わったことになりますね…!

海江田信義

海江田信義

そんな有村俊斎こと海江田信義は、長州藩の大村益次郎とはとことん気が合わなかったといわれています。戊辰戦争中もその後も、事あるごとに対立していた二人。
明治2年(1872)に大村益次郎が襲撃され、それが原因で命を落とした時も、犯行メンバーの処刑を海江田が反対したため、裏に海江田がいたのでは…と怪しまれたほどでした。
事の真相は分かりませんが、そう思われるほど仲が悪かったのでしょうね…。

「西郷どん」では、高橋光臣さんが演じられます。
弟たちを失い、西郷と共に僧・月照を保護する重要な役どころなので、こちらも注目の人物です。

「西郷隆盛」の名付け親?吉井友実

吉井友実(ともざね)の墓

吉井友実(ともざね)の墓

(青山霊園 1種イ-6 4側4番)

吉井家の墓に合葬されています。
via 提供:小栗さくら
西郷・大久保らと共に鹿児島市下加治屋町で育った吉井友実。
西郷とはご近所さん・幼馴染みとして長い時間をともに過ごしたことでしょう。

彼は政治的にはのちに西郷と袂を分かつことになりますが、友人としては西郷の名誉が回復するよう尽力した人物でした。

その一つとして私たちに馴染み深いのが、上野の西郷隆盛像!
明治22年(1889)、大日本帝国憲法発布にともなう特赦によって、西郷の賊徒の汚名が晴らされます。その時銅像の発起人となったのが、吉井友実でした。
吉井友実

吉井友実

そんな友人思いの吉井は、友・西郷どんの名前を間違えるという痛恨のミスをしてしまいます。
明治に入り、王政復古に功績があった人物に位階が授けられた時のこと。その場に西郷がいなかったため、親しかった吉井が代わりに西郷の「諱(いみな)」を届け出ることになりました。当時は「通称」が使われ、普段「諱」を用いることはなかったため、西郷の諱をなかなか思い出せなかった吉井。
これだと思って届け出た名前が「隆盛」だったのですが、なんとそれは西郷の父の諱。(本来は「隆永」、のち「武雄」)
ところが西郷はこの間違いを怒ることもなく、以後「隆盛」を使っていたといわれています。間違いを笑って許す西郷どんが浮かんできますね。

私たちが馴染んできた「西郷隆盛」が、吉井の勘違いによる命名だったという衝撃のエピソード。ドラマでこのシーンを見るのがとっても楽しみです。

西郷が信頼した軍略家・伊地知正治

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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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