ぶっつけ本番の流鏑馬「やんさんま」(富山県射水市)【日本名珍祭り図鑑】
2018年4月27日 更新

ぶっつけ本番の流鏑馬「やんさんま」(富山県射水市)【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は富山県射水市にある加茂神社の流鏑馬「やんさんま」です。毎年5月4日に開催されるこのお祭りは京都の下鴨神社より伝わり、いまも独自の流鏑馬が息づいています。今回は見どころに加え、流鏑馬の上手な撮影方法も伝授します。

芳賀日向芳賀日向

流鏑馬がなまって「やんさんま」

疾走する馬の上より矢で的を射る流鏑馬。
流鏑馬を含む弓馬礼法は、寛平8年(896)に宇多天皇が源能有に命じて制定され、馬上における実戦的弓術の一つとして、平安時代にはすでに存在していたようです。
有名な鶴岡八幡宮の流鏑馬は、源頼朝が奉納したことで知られています。
加茂神社(富山県射水市)

加茂神社(富山県射水市)

正式名称は下村加茂神社。「やんさんま」は加茂祭(5月3日〜5日)のひとつとして行われます。
via 撮影:芳賀日向
加茂神社の流鏑馬「やんさんま」のルーツは、下鴨神社の流鏑馬といわれています。
「やんさんま」とは流鏑馬が訛った言葉です。

平安時代後期の寛治4年(1090)、白河上皇の政策により、京都から離れた現在の富山県射水市加茂地区に荘園が開墾されました。
治暦2年(1066)、京都の下鴨神社から勧請された下村加茂神社は荘園内の総社とされたことから、下鴨神社の流鏑馬が伝わります。
武家が乗る馬ではなく、開墾用の農耕馬などを使って流鏑馬が奉納されました。

弓矢は手作り、しかもぶっつけ本番!

弓矢の材料となる青竹の伐りだしから始まります。

弓矢の材料となる青竹の伐りだしから始まります。

弓となる青竹の長さは一丈二尺(約3.6m)。
via 撮影:芳賀日向
やんさんまに使う弓矢はすべて乗り手自身による手作りです。  
祭りの前日である5月3日に、神社の裏地より青竹を伐りだして弓矢を作り始めます。
やんさんまにはさらに決まりがあり、なんと本番までは決して弓を引いてはいけないのです。
的に当てるのはお祭り当日のみ、ぶっつけ本番というわけです。
手作りの弓矢(左)。高さ3mの的も手作りです。

手作りの弓矢(左)。高さ3mの的も手作りです。

via 撮影:芳賀日向
流鏑馬と違い、やんさんまは武芸の上達を願う神事ではなく、五穀豊穣を願う農耕行事として発展してきました。
昭和40年代までは農耕馬などで行われていましたが、射手の育成をはかるために乗馬クラブが設立されました。
現在は数頭のサラブレッドがおり、氏子たちが中心となって飼育をしています。

いよいよ本番!

お祭り当日の5月4日。まずは加茂神社の拝殿で、射手がお祓いを受けます。
それから、3人の射手は弓矢を持たずに馬に乗り、街の旧北陸道を走ります。これを走馬(そうめ)といいます。
走馬の儀。観客が声援を送る、暖かな雰囲気。

走馬の儀。観客が声援を送る、暖かな雰囲気。

via 撮影:芳賀日向
次に、境内の中を清められた神馬(しんめ)が3周引かれます。
その後、拝殿より大きな御幣につつまれた御神体が運ばれ、境内の御旅所に向かいます。
現れたのは真っ赤な面をつけた田の神。王鼻(おうのはな)と呼ばれています。
田の神・王鼻

田の神・王鼻

やんさんまもさることながら、インパクト大な神様。
やんさんまの前のハイライトとなるのが、この牛乗式です。
黒牛に乗った王鼻が、長さ一丈三尺(約3.94m)もある青竹の弓の弦を1回鳴らし、魔除けをします。
さらに五穀豊穣を願い、拝殿の屋根に向かって矢を放って、黒牛に乗って境内を回ります。
この時に黒牛をひざまづかせると、田の神が土地に留まり、豊作になるといわれています。
31 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

芳賀日向

芳賀日向

はがひなた。祭り写真家。1956年長野県生まれ。米国西イリノイ大学文化人類学科卒業。30年間に渡り世界の祭り48ヵ国、日本各地の祭りを撮り続ける。週刊朝日百科『日本の祭りシリーズ』連載(朝日新聞出版)、『祭りを撮る』監修(旅行読売出版社)、『日本全国祭り図鑑』監修(フレーベル館)など。写真展「世界のカーニバル」、「被災地の夏祭り」(キヤノン)他。日本写真家協会会員。 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

【2018年6月開催】百万石まつりや武将祭りなど歴史イベントまとめ

【2018年6月開催】百万石まつりや武将祭りなど歴史イベントまとめ

6月も盛りだくさんの歴史イベント。織田信長の命日にちなんだものや、有名人が前田利家とお松の方に扮する「金沢百万石まつり」などの大祭、平清盛生誕900年の今年は盛り上がり必至の「平家大祭」まで。歴史好きにおすすめのイベントをご紹介します。
【愛知県】「テーホヘ、テホヘ」鎌倉時代から続く奥三河の花祭|日本名珍祭り図鑑

【愛知県】「テーホヘ、テホヘ」鎌倉時代から続く奥三河の花祭|日本名珍祭り図鑑

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、奥三河の花祭です。毎年11~3月にかけて、愛知県の奥三河各地で開催されるこのお祭り。鎌倉時代から続く、国の重要無形民俗文化財にも指定された伝統芸能は一見の価値あり!
異国情緒たっぷり!エキゾチックな祭り「長崎くんち」【日本名珍祭り図鑑】

異国情緒たっぷり!エキゾチックな祭り「長崎くんち」【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、長崎の氏神・諏訪神社の秋季大祭である「長崎くんち」をご紹介。寛永11(1634)年、二人の遊女が諏訪神社神前に舞を奉納したことが始まりと言われ、以来長崎の秋の風物詩として親しまれています。その見どころを写真とともにご紹介します。
【2018年10月開催】秋は武将祭りに行こう!全国歴史系イベントまとめ

【2018年10月開催】秋は武将祭りに行こう!全国歴史系イベントまとめ

行楽の秋、武将祭りやお城まつりなど、歴史系のお祭りが全国で開催されます。郷土の誇りと讃えられた有名武将の活躍を再現したものや、戦国時代さながらの甲冑姿でのパレード、迫力ある火縄銃演武、有名な合戦を再現したものなど、歴史好きなら胸が熱くなるイベントばかり。お祭りに参加して、あなたの憧れの武将達に会いにいってみませんか?
イケメン漁師がもみ合う!房総半島・秋の風物詩「裸祭り」【日本名珍祭り図鑑】

イケメン漁師がもみ合う!房総半島・秋の風物詩「裸祭り」【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、千葉県で開催される「大原はだか祭り」「上総十二社祭り」、2つの「裸祭り」をご紹介します。どちらもその起源は古く、秋の風物詩として地元で親しまれています。躍動感ある神輿と参加者の生き生きとした姿はまさにフォトジェニック!その見どころを写真でご紹介します。
京博初の刀剣特別展から、戊辰150年関連も!2018年9月歴史イベントまとめ

京博初の刀剣特別展から、戊辰150年関連も!2018年9月歴史イベントまとめ

歴史的にも様々な節目を迎える今年の秋は、記念イベントが各地で開催。没後160年の歌川広重記念展から、会津では戊辰150年特別展や恒例のお祭りも。そして京都ではお待ちかねの刀剣特別展がいよいよ開幕。どれも見逃せない2018年9月の歴史イベントを厳選して紹介します。シルバーウィークのお出かけの参考にどうぞ!
首長おばけも登場!夏に開催するちょっとコワい奇祭5選【日本名珍祭り図鑑】

首長おばけも登場!夏に開催するちょっとコワい奇祭5選【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、夏に開催されるご当地伝統のお祭りから、お化けや仮面、あの世からの亡者も登場するちょっとコワい奇祭を5つご紹介します。
【7月13日はオカルト記念日】日本にもエクソシストはいた?各地に残る悪魔払いの風習

【7月13日はオカルト記念日】日本にもエクソシストはいた?各地に残る悪魔払いの風習

今から44年前の7月13日、日本で初公開され大ヒットしたのが、オカルトブームの火付け役となった映画『エクソシスト』。これを記念して、7月13日は「オカルト記念日」に制定されているのをご存知でしょうか。そこで今回は「エクソシスト=悪魔払いの祈祷師」にちなんで、日本に残る「悪魔払い」の風習や、それにまつわる場所を紹介します。
祭り写真家が教える!フォトジェニックな夏の花火大会&ねぶた祭り【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家が教える!フォトジェニックな夏の花火大会&ねぶた祭り【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は夏の風物詩・花火大会と夜祭りです。全国各地で開催される祭りから、特にフォトジェニックなものをプロが厳選。花火の上手な撮影方法も伝授します!
那智、吉田、手筒花火…夏におすすめの火祭り3選【日本名珍祭り図鑑】

那智、吉田、手筒花火…夏におすすめの火祭り3選【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は夏の火祭りです。神霊の送迎や火による清めなどの意味を持つ火祭りは、7~8月の盆行事の頃に行われます。その中でも特におすすめの3つをご紹介。火祭りの上手な撮影方法も伝授します!