アイヌの反乱、家中の争い、その後…松前城に伝わるミステリー
2017年7月18日 更新

アイヌの反乱、家中の争い、その後…松前城に伝わるミステリー

江戸時代、外国同然だった蝦夷地(北海道)にあった唯一の藩・松前藩。寒冷地である蝦夷地での稲作は不可能だったため、アイヌとの独占交易による収入を財政基盤とする特異な藩運営が行われていました。そんな松前では、アイヌの反乱や家中の争いなどが相次ぎ、それに伴うミステリーも生まれました。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

松前城

松前城

江戸時代、外国同然だった蝦夷地(北海道)にあった唯一の藩・松前藩。寒冷地である蝦夷地での稲作は不可能だったため、アイヌとの独占交易による収入を財政基盤とする特異な藩運営が行われていました。

藩の領地は北海道南西部の渡島半島にありましたが、実際は蝦夷地の各地に番所を配置するなどして和人の開拓や交易を支援していたのです。江戸中期からは、昆布やニシン、サケなど蝦夷地の豊かな海産物に目を付けた本州の商人たちによって交易は拡大。天保年間の城下町松前(現在の松前町)には約1万人が住むなど繁栄しましたが、幕府の監視も厳しく藩運営は緊張を強いられていたようです。

特に5代藩主・矩広の治世には、アイヌの反乱や家中の争いなどが相次ぎ、それに伴う不気味な怪談も生まれました。
松前矩広像(『蝦夷国風図絵』より)

松前矩広像(『蝦夷国風図絵』より)

アイヌ民族の最大蜂起・シャクシャインの戦い、そして…

矩広は父・高広の死で寛文5年(1665)年にわずか7歳で家督を相続。しかし、その4年後には首長シャクシャインの指導の下、石狩地方を除く全アイヌが一斉蜂起する最大規模の反乱が起きます。
新ひだか町真歌公園にあるシャクシャイン像

新ひだか町真歌公園にあるシャクシャイン像

松前藩は苦戦を強いられますが、現在のロシア沿海地方にまで勢力を伸ばしていた清国がこの反乱に介入することを恐れた幕府は、幼少の矩広を助けるため、一族で旗本だった松前泰広を派遣。泰広は、和議の席でシャクシャインらアイヌのリーダーをだまし討ちにしました。そこでシャクシャインたちは耳をそぎ落とされたといいます。

松前城の裏には、このとき処刑されたアイヌの首謀者たちの耳が埋められたとされる「耳塚」があります。シャクシャインら殺害後、矩広は夜な夜な「耳を返せ」という声を聞いて発狂したそうな・・・。

松前城には他にもミステリーが…?

また、耳塚の隣には「闇の夜の井戸」と呼ばれる井戸もあります。
この井戸で亡くなったのが、矩広の乱行を諌めていた忠臣の丸山久治郎兵衛でした。
彼の失脚を願う悪臣たちが、殿の鉄扇が井戸に落ちたと嘘をつき、井戸の底へ拾いに行った久治郎兵衛に大石を落としたのです。

するとその後、矩広の子が早世するなど怪異が続きました。久治郎兵衛の祟りを恐れた人々は井戸を埋めようとしましたが、いくら土砂を流し込んでも埋まる気配はなかったといいます。

ちなみに「門昌庵事件」が起きたのも矩広の時代でした。
難事が相次ぎましたが、矩広自身は62歳まで生きます。一連の事件はいずれも20歳前に起きたことを考えると、藩主が若かったゆえに藩内の統率は乱れ、一族や家老たちが壮絶な権力争いを繰り広げていたことがうかがえます。

幕末には蝦夷地交易の中心は函館に移りますが、現在の松前町は北海道でも随一の桜の名所として知られます。本州の商人が持ち込んだ約1万本の桜が咲き乱れる様は壮観で、かつての繁栄を今に伝えています。

(黄老師)
10 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

ユカリノ編集部

ユカリノ編集部

全国各地の「ゆかりの」エピソードをほぼ毎日お届け。知ればもっと行きたくなる、歴史の聖地巡礼へご案内します! 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

【北海道150年】アイヌと開拓の歴史に由来する北海道の地名10選

【北海道150年】アイヌと開拓の歴史に由来する北海道の地名10選

明治2(1869)年8月15日、それまで蝦夷地と呼ばれていた島は松浦武四郎の命名案「北加伊道」を元に「北海道」と名付けられました。2018年は命名150年目の節目として、記念イベントが盛大に行われています。難読地名と本州で馴染み深い地名が多く見られる北海道。地名にはそれぞれ、アイヌ民族の歴史、和人流入の歴史が刻まれています。ここでは10の地名と由来を紹介しながら、その歴史を紐解いていきます。
【酒乱じゃなければ…】薩摩の重鎮・黒田清隆の功績とゆかりの地

【酒乱じゃなければ…】薩摩の重鎮・黒田清隆の功績とゆかりの地

薩摩藩出身の明治の重鎮といえば、黒田清隆を忘れてはいけません。第2代内閣総理大臣であり、北海道開拓の第一人者としても大きな功績を挙げた黒田。しかし一方で、酒乱という困った一面もありました。そのせいで、妻に関する良からぬ噂も…?今回はそんな黒田清隆にまつわるエピソードやゆかりの地をご紹介します。
お土産にぴったり!『北海道150年』今しか買えない限定お菓子3選

お土産にぴったり!『北海道150年』今しか買えない限定お菓子3選

夏に人気の観光地・北海道。2018年は「北海道」命名150年ということで、道内各地で記念のグッズが販売されています。なかには期間・数量限定で今しか購入できないものも。今回はその中から、夏休みの旅行のお土産におすすめしたい限定お菓子をご紹介します。
夏休みに行きたい!ご当地の歴史も学べる人気「道の駅」5選

夏休みに行きたい!ご当地の歴史も学べる人気「道の駅」5選

ご当地の特産品やグルメを楽しむことができ、ドライブの途中で立ち寄れる人気観光スポット「道の駅」。なかにはその土地の歴史を紹介する施設が併設されている道の駅もあるんですよ。今回は「歴史も学べる道の駅」を全国から厳選!夏休みの旅行の際に、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
第11回:星形だけじゃない!函館のシンボル・五稜郭の見どころ【月刊 日本の城】

第11回:星形だけじゃない!函館のシンボル・五稜郭の見どころ【月刊 日本の城】

webサイト「日本の城写真集」の管理人・けいすけが、日本の名城の見どころ、撮りどころを徹底的に紹介する連載「月刊 日本の城」。第11回は五稜郭をご紹介します。旧幕府軍が新政府軍と戦った函館戦争の舞台にもなった稜堡式の城郭。その印象的な星形が特徴ですが、他にもおすすめの撮影ポイントを写真とともにご案内します。
命名から150年!『北海道』の名付け親・松浦武四郎の生涯に迫る特別展が開催

命名から150年!『北海道』の名付け親・松浦武四郎の生涯に迫る特別展が開催

2018年は北海道命名150年記念の年。道内各地で記念事業が行われるなか、改めて注目を集めている人物こそ、北海道の名付け親といわれる松浦武四郎です。北海道博物館では6月30日から特別展「幕末維新を生きた旅の巨人 松浦武四郎」を開催。特別展の見どころとともに、北海道150年記念ドラマ「永遠のニシパ」でも注目を集める武四郎の生涯をご紹介します。
戊辰戦争終結の地・函館に残る榎本武揚や土方歳三…旧幕府軍ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第16回】

戊辰戦争終結の地・函館に残る榎本武揚や土方歳三…旧幕府軍ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第16回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第16回は、戊辰戦争最後の地・函館にある、榎本武揚や土方歳三たち旧幕府軍ゆかりの地をご紹介します。2019年は箱館戦争終結、そして土方歳三没後150年の年。改めてその最期の舞台を巡ってみてください。
『ゴールデンカムイ』効果で注目!北海道・博物館 網走監獄が面白い

『ゴールデンカムイ』効果で注目!北海道・博物館 網走監獄が面白い

旧網走刑務所にあった25の建造物が移築復原、再現建設された博物館 網走監獄。「北海道開拓と監獄受刑者」をテーマとした野外歴史博物館として、北海道の人気観光スポットのひとつです。近年では漫画『ゴールデンカムイ』の舞台として登場したことで、聖地巡礼するファンも訪れるなど改めて注目を集めています。そんな博物館 網走監獄の歴史と、漫画の聖地巡礼スポットをご紹介!
全国より厳選!2018年夏休みにおすすめの歴史イベント10選

全国より厳選!2018年夏休みにおすすめの歴史イベント10選

夏といえばおまつり!2018年の夏休みも全国ではさまざまな歴史イベントが催されます。東京では特別展「縄文」が、京都では二条城の特別公開が開催。アツい武将まつりから涼しい水軍まつり、一度は行きたい伝統のまつりまで、10のイベントを厳選してご紹介。夏休みの国内旅行の予定がまだ決まっていない人は必見です。
この夏行きたい「日本遺産」3選!アイヌ、那須、星降る里…歴史の新たな一面に触れる旅

この夏行きたい「日本遺産」3選!アイヌ、那須、星降る里…歴史の新たな一面に触れる旅

日本各地の文化や伝統を国内外に発信するべく文化庁が認定している「日本遺産」。まだ耳慣れない方もいると思いますが、実は歴史好きにもたまらない、知られざる日本の魅力に出会える遺産が揃っているんです。今回は2018年5月に新たに登録された13件の中から、夏の旅行先におすすめのものを3つご紹介します。