朝ドラヒロインのモデル・広岡浅子、ゆかりの品から見える意外な一面とは?【後編】
2017年6月19日 更新

朝ドラヒロインのモデル・広岡浅子、ゆかりの品から見える意外な一面とは?【後編】

平成27年後期連続テレビ小説「あさが来た」のモデルとなった広岡浅子。大阪市西区にある大同生命大阪本社ビルで開催中の「大同生命の源流“加島屋と広岡浅子”」では、加島屋と浅子のつながりと浅子の人柄がわかる品々が展示がされています。今回の後編では、ドラマでは見られなかった浅子の意外な一面に、歴史エッセイストの堀江宏樹さんが迫ります。

堀江宏樹堀江宏樹

多趣味な広岡浅子の一面に触れられる展覧会

写真/堀江宏樹 (4671)

via 写真/堀江宏樹
大阪市西区にある大同生命大阪本社ビルで開催中の「大同生命の源流“加島屋と広岡浅子”」。【前編】では彼女の既成概念にとらわれない自由な精神と、建築家・ヴォーリズとのつながりをご紹介しました。
【後篇】では浅子ゆかりの品々とともに、ドラマとは違う、意外な一面についてご紹介します。

展覧会では、多趣味な浅子がとくに熱心に取り組んでいたらしい、和歌の詠草(和歌の草稿、歌の下書きノート)などが展示されていました。若かりし頃、着物姿の浅子が、少しはにかんだような表情をうかべながら庭で何かを読んでいる写真を見たことがある方もおられると思います。
庭で自分の作った和歌を読む広岡浅子

庭で自分の作った和歌を読む広岡浅子

via 写真/堀江宏樹
今回、展覧会を行うにあたって大同生命さんが調査を重ねた結果、あの本は、彼女御自身の詠草だったと判明したそうですよ。

実物も展示で見ることが出来るのですが、「春」「夏」「秋」「冬」の他、「雑(その他)」といった伝統的な和歌のテーマ別にノートが存在し、興味深いのは「恋」も含まれているところ。書かれた和歌がもっとも少ないのがこの「恋」の巻で、30首もないそうです(一番多いのは「春」の歌だそうです)。

意外すぎる? 情熱的な恋の歌とは

浅子の詠草と、伝統的な形式で書かれた季節の挨拶の手紙

浅子の詠草と、伝統的な形式で書かれた季節の挨拶の手紙

via 写真/堀江宏樹
広岡家に所蔵されていた浅子の短冊和歌。

広岡家に所蔵されていた浅子の短冊和歌。

via 写真/堀江宏樹
しかし意外にも……というと浅子に失礼かもしれませんが、実にしっとりした情緒的なもの、もっというと艶やかな表現が目立つ歌を浅子は詠んでいます。

たとえば……「恋枕」という題で詠まれた次の二首などは、ステキですよ。
「むつごとを かたりあかしし きぬぎぬは 我まくらにも はづかしき哉(かな)」。
「つらかりし 人の心と 思ふより 残る枕も 恨みられつつ」。
言葉を補いながら意訳すれば、

「あの人と愛の言葉を囁き合って朝まで過ごした後は、それを聞かれていた枕にすら、はじらいを覚えてしまう」

「最初から冷たい心の人だったと思えたら良いのだろうけれど……彼が残していった(体温の残る)枕までうらめしく思われる」

……という感じでしょうか。いかがでしょうか、浅子のイメージが変わるような気がしませんか?

しかし残念ながら(?)、お題はお題。平安時代から、とくに和歌を学ぶ人は師匠からお題を与えられて、それに沿って(実感をこめつつ、おもには想像で)詠むという「題詠」を行います。浅子の恋歌もおそらくはそれでしょうね。試行錯誤がうかがえるようで、少し微笑ましくなりますね。
浅子の筆跡

浅子の筆跡

朝ドラでは手習い=書が苦手な人物として描かれたが、実際はTPOで手紙の書体も使い分けるなど、なかなかの名書家。
via 写真/堀江宏樹
また、朝ドラでも描かれていましたが、江戸期の日本で通貨として用いられていた金と銀の他、コメも第二、第三の通貨といえるような存在でした。

言い換えれば、コメさえあれば、現金の融資を受ける際の担保にすらなったのです。浅子が嫁いでくる時代の前から加島屋にも先見の明はあり、江戸時代中期以降は各地の特産品を担保として融資を行っていた……というような話は、筆者としては興味深い発見でした。
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堀江宏樹

堀江宏樹

歴史エッセイスト。 2017年の文庫化・新作は 『乙女の美術史 世界編』(角川文庫)7月25日発売 『本当は恐い日本史(仮)』(三笠書房)9月発売予定 『偉人たちのウソ名言(仮)』(PHP)11ー12月発売予定 近著に 『本当は恐い世界史』(三笠書房)、文庫版『乙女の美術史 日本編』(角川書店)、文庫版『愛と夜の日本史スキャンダル』、『三大遊郭』(幻冬舎)、『乙女の真田丸』(主婦と生活社)などがある。 公式

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