西郷隆盛も尊敬!水戸藩の学者・藤田東湖ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第7回】
2018年7月27日 更新

西郷隆盛も尊敬!水戸藩の学者・藤田東湖ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第7回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第7回は、藤田東湖ゆかりの地・水戸。西郷隆盛が師として敬った水戸藩の学者・藤田東湖は、徳川慶喜の父・斉昭の側近としても活躍。西郷や吉田松陰だけでなく、全国の志士や大名にまで影響を与えた人物です。今回はそんな藤田東湖のルーツをご案内します。

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大津漁港

大津漁港

大津浜は現在、大津漁港となり、県内随一の施網漁港として年間数万トンの漁獲量を誇っています。
幽谷は、もし一時の平穏のために彼らが釈放されてしまうのであれば、それは、日本に一人も真の男児がいないことになり非常に恥ずかしいことだ、と考えました。そのため息子・東湖に、「船員らのもとへ突入して斬りつくし、その後自首して裁きを受けよ」と告げるのです。もし幽谷が若ければ、自ら行っていたかもしれませんね。

それに対し、東湖は「教えの通りに」と頷いて水盃(みずさかずき)を交わし、死を覚悟しました。
しかし時すでに遅く、船員らは釈放されていたという報せが届くのです。

二度目の死の覚悟:斉昭のため脱藩

文政9年(1826)、東湖21歳のとき、父・幽谷が亡くなります。
父であり師でもある幽谷を喪った東湖の悲しみは相当なものだったようです。50日間、神前にお供えをしただけでなく、毎日父の墓参りをしていたとか。
藤田幽谷の墓

藤田幽谷の墓

常磐共有墓地には、幽谷・東湖のお墓が並んでいます。
梅香の藤田家から毎日通ったという東湖。往復で6km以上あります!この道のりを、毎日父を想って歩いていたのですね。東湖が歩いたのは寒い時期だったので、その道中は心身共に冷え哀しみが増したのではないでしょうか。
via 提供:小栗さくら

彰考館に勤めるもすぐに退職

そんな東湖もいつまでも哀しんではいられません。
翌年の文政10年(1827)1月26日、家督を相続した東湖は、かつて父が総裁を務めた彰考館に勤めることとなり、24歳で彰考館総裁代役となりました。

しかし彰考館の腐敗を感じた東湖は、意見書を提出したのち職を辞してしまいます。真面目な分、不器用な面もあったのかもしれません。
彰考館跡

彰考館跡

彰考館は初め江戸に設けられ、光圀の死後に水戸にも設置されました。
彰考館跡の碑は、水戸市立第二中学校の前にありますよ。
via 提供:小栗さくら

水戸藩主の後継者問題が浮上

この頃水戸藩では、世継ぎ問題が浮上していました。
8代斉脩に跡継ぎがいなかったためです。
そのため候補に挙がっていたのは、斉脩の弟である斉昭。彼は、幽谷の門人である会沢正志斎から学んでいますし、水戸藩の血筋を守るためにも、当然東湖たちは斉昭を推します。

しかし水戸藩の重臣たち(門閥派)は、藩主・斉脩の妻の弟で、11代将軍・徳川家斉の子である斉彊(なりかつ)を推していました。これは幕府との接点や財政について考えた結果だといわれています。

そんな派閥争いの話が浮上しているうちに、藩主・斉脩が危篤に陥ってしまいました。
一刻を争うと判断した東湖は、仲間たちを集めて江戸へ急行することに決めます。

これが二度目の死の覚悟です!
この時東湖は遺書をしたためていたほどの決心でした。何故なら、彼らは許しもなく勝手に江戸に行くため、脱藩覚悟の江戸急行となってしまうからです。
水戸城にある徳川斉昭公像

水戸城にある徳川斉昭公像

現在大手門の復元工事がされていますが、橋を渡ると彰考館跡に抜けられますよ。
via 提供:小栗さくら

斉昭が藩主になるも、処罰を受ける

東湖たちは江戸に着くと、江戸の同志たちの協力も得て、斉昭を世継ぎにすることを要請しました。その甲斐あってか、斉昭は無事に水戸藩の9代藩主となったのです。

東湖たちが江戸に着いたのが10月3日、斉脩が亡くなったのはその翌日…。彼らが行動を急いだのも分かりますね。

ところが斉昭が藩主となり年が明けた1月、東湖たちは許可なく江戸急行した処分を受けることになります。そうはいっても処罰は軽いもので、逼塞(ひっそく/昼の間は門を出入りできない状態)というものでした。
自分のためとはいえ、身勝手な行動をした家臣を咎めないわけにはいかないという、斉昭なりのけじめの付け方だったのでしょうね。
徳川斉昭

徳川斉昭

諡号の「烈公」にもあるように、荒々しい気性だったといわれる斉昭。
逼塞を解かれた東湖は斉昭の側近となり、江戸で2年以上の間「神道」の研究に没頭します。これがのちの著作に影響を及ぼしていくことになるのです。

継嗣問題は解決したとはいえ、門閥派との争いが治まったわけではなく、派閥争いはこの後も水戸藩が抱える問題となっていきました。また、東湖と斉昭の関係も常に良好だったわけではなく、斉昭が東湖を戒めることもあれば、東湖も斉昭の行動を諌めることがありました。
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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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