西郷隆盛も尊敬!水戸藩の学者・藤田東湖ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第7回】
2018年7月27日 更新

西郷隆盛も尊敬!水戸藩の学者・藤田東湖ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第7回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第7回は、藤田東湖ゆかりの地・水戸。西郷隆盛が師として敬った水戸藩の学者・藤田東湖は、徳川慶喜の父・斉昭の側近としても活躍。西郷や吉田松陰だけでなく、全国の志士や大名にまで影響を与えた人物です。今回はそんな藤田東湖のルーツをご案内します。

小栗さくら小栗さくら

三度目の死の覚悟:病と斉昭の隠居

偕楽園(かいらくえん)

偕楽園(かいらくえん)

藩校・弘道館で学ぶ藩士たちが休養する場所、また民と偕(とも)に楽しむ場所として、斉昭が命名した「偕楽園」。
冬でも竹林や苔が美しい場所です。
via 提供:小栗さくら
藩主となった斉昭は、重臣たちを更迭し、東湖らを採用します。
そして藩政改革に取り組み、検地、藩校・郷校の設置、海防施設の充実など、重臣の反対にあいながらも政策に立ち向かいました。

そんな中の弘化元年(1844)、水戸にいた斉昭に江戸から呼び出しが命じられます。
それは、藩校の土手を高くしたことや、鉄砲の揃いうちをしたのは何故かといった、改革事業への嫌疑でした。斉昭は幕府に命じられるまま江戸へ向かうことになります。

これが東湖三度目の死の覚悟です。

幕府の呼び出しで江戸へ、そのまま幽閉状態に

この時東湖も江戸へ行くのですが、彼は病に伏していて、本当ならとても行ける状態ではなかったのです。医者が止めるのも聞かずに旅立った東湖は、道中ほとんど食べることもできずに江戸に着いたといいます。

しかし東湖の決意はこれに留まらず、斉昭の冤罪を晴らすために、自決することまで考えたのです。が、東湖は考え直します。自分が自決してしまったら、それこそ罪を認めたことになってしまうのではないか…と。

三度目の死の覚悟もその命を散らすことにはなりませんでしたが、幕府の命により斉昭は隠居の身となり、東湖も蟄居となって江戸で幽閉状態になってしまうのでした。
隅田公園(東京都墨田区)

隅田公園(東京都墨田区)

現在の隅田公園にあった水戸藩の小梅藩邸。「旧水戸藩下屋敷石碑」 が立っています。

「三たび死を決して、而して死せず」
とはこういうことだったのですね。

酷く狭い部屋に幽閉されていた東湖は、蒸し暑い中、ひと月も風呂に入れないような状態が続いたそうです。
しかし翌年、水戸藩の小梅藩邸(現在の東京・墨田区)に移されると、蟄居しながらも『弘道館記述義』『回天詩史』などを著し、これがのちに幕末志士達に多大な影響を与えることになるのでした。

日本最大級の藩校・弘道館

弘道館

弘道館

幕末の抗争による弾痕が残る、弘道館の門。
via 提供:小栗さくら
日本最大級の藩校・弘道館。
徳川斉昭が水戸城三の丸に作り、子である最後の将軍・慶喜も学んだ学校です。

天保12年(1841)に仮開館となり、安政4年(1857)に本開館となりました。つまり、東湖が生きていた頃はまだ本開館ではなかったのですね。
弘道館「尊攘」の掛け軸

弘道館「尊攘」の掛け軸

「尊攘」という言葉が出てくるとき、必ず画像として出てくるのがこの弘道館の掛軸ですよね。幕末好きはこれを見ると興奮してしまうはず…!
via 提供:小栗さくら
この弘道館の教育方針について書かれたものを『弘道館記』といいます。
『弘道館記』は、東湖が起草し、斉昭の名で碑文が完成しました。
その内容は水戸学の精神を表していて、「神儒一致」「忠孝一致」「文武一致」「学問事業一致」「治教一致」の五項目を掲げていました。
『弘道館記』

『弘道館記』

本物の碑は、弘道館の八卦堂内に保管されています。
via 提供:小栗さくら

東湖の著書が攘夷派志士のバイブルに

東湖は『弘道館記』の解説書である『弘道館記述義』を著し、会沢正志斎の『新論』などと共に、これらが水戸学の核として、攘夷派志士のバイブルとなっていくのでした。

今回載せている弘道館の写真は、すべて撮影OKのところ。
資料館になっている部分以外は撮影して良いということで、弘道館の太っ腹ぶりに感動しながら、何枚も写真を撮ってしまいました。

斉昭や慶喜ゆかりのもの・部屋も残っていますので、弘道館へ行く際は滞在時間を多めに見積もってくださいね。
冬場はちょっと寒いので、厚めの靴下を履いていくといいかもしれません。
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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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