「日本男色史巡り 第4回:幕末・明治の男色」新撰組局長、近藤勇も悩んだ幕末・明治の男色の流行!?
2018年3月30日 更新

「日本男色史巡り 第4回:幕末・明治の男色」新撰組局長、近藤勇も悩んだ幕末・明治の男色の流行!?

日本の男色史を、ゆかりの品や場所とともにご紹介する連載『日本男色史巡り』。第4回は、次回大河ドラマ「西郷どん」の舞台、幕末・明治。新撰組局長、近藤勇も悩んだ、幕末・明治の男色隆盛の理由とは?

黒澤はゆま黒澤はゆま

近藤勇も悩んだ幕末の男色隆盛

「当節婦人と戯れ候(そうろう)事いささかもこれ無し。局中しきりに男色流行つかまつり候」(中島治郎兵衛宛 近藤勇書簡)

元治元年(1864)五月二十日、かの有名な新撰組局長、近藤勇は郷里の友人にあてた手紙のなかでそうこぼしています。書き下し文でも大意は分かるかと思いますが、現代語訳すると「最近、女遊びはまったくで、新撰組では男色の方がはやっています」くらいになるでしょうか。

手紙の日付の翌月六月五日に、池田屋事件は起きていますので、この頃、新撰組はスターダムを駆けあがる真っ最中。島原だろうが、祇園だろうが、芸子たちから嫌になるほどもてたはずですが、局中では男同士の恋愛の方が流行し、勇の頭を悩ませていたようです。
壬生郷士八木邸 新選組屯所跡石碑

壬生郷士八木邸 新選組屯所跡石碑

新撰組が駐屯した壬生郷士八木邸跡。彼らは文久三年(1863年)から、西本願寺に移る元治二年(1865年)まで同地に滞在しました。勇が例の手紙を送ったのは、この邸からのようです。
via 筆者撮影
手紙の日付の翌月六月五日に、池田屋事件は起きていますので、この頃、新撰組はスターダムを駆けあがる真っ最中。島原だろうが、祇園だろうが、芸子たちから嫌になるほどもてたはずですが、局中では男同士の恋愛の方が流行し、勇の頭を悩ませていたようです。

この手紙が象徴するように、江戸時代初期を頂点に、時代が下るにつれて衰退傾向にあった男色は、幕末に再び、燃え上がりました。

これには二つ理由があって、一つは、ペリーの来航を皮切りに、日本国中がテロと戦争の頻発する、男色が最も盛んだった戦国時代に似た、戦乱の世に逆戻りしたこと。もう一つは、幕末、時代の主役に躍り出た薩摩や土佐といった辺境の藩が、江戸や京都では時代遅れになっていた戦国以来の尚武の気質と、男色賛美の風潮を、色濃く残していた国々であったためです。

例えば、土佐の場合は、前回、「日本男色史巡り 第3回:井伊直政」でも紹介した、土佐藩士「馬場辰猪」の証言を引用することが出来ます。
土佐では古代ギリシャと同じで、少年が花の盛りとなるとき、両親が然るべき武士を見立て、保護者となることを頼むのが普通だった。引き受けた侍がしっかりした人物だったら、親は子供の行く末について安心することができたものだ
via 「武士道とエロス」氏家明人
また、薩摩の場合も、明治になってから当地に小学校教員として赴任した本富安四郎が、こんなことを「薩摩見聞記」のなかで記述しています。
美少年の事は是れ封建時代の蛮風にして、固より醜事に属す。去れども人欲遂に全く防止する能わず
via 「武士道とエロス」氏家明人
また、
昔時此風の盛んなるや、美少年を呼ぶに稚児様を以てし、その出る時は或は美しき振袖を着し、数多の兵児(へこ)二才(にせ)、之を護衛し傍よりは傘をさし掛け、夜は其門に立て寝ずの番を為す者あるに至る
via 「武士道とエロス」氏家明人
句読点を筆者追記
とも。短躯だが骨柄太く、容貌魁偉、弊衣蓬髪の薩摩隼人たちが、美しく着飾った美少年を取り囲み、西洋のナイトよろしく、傘をさし掛けたり、夜はその貞操を守ってやるため、門に立って寝ずの番をしていたというのですね。

戦国時代からだった薩摩の男色

ちなみに、薩摩の男色癖は郷士のような下々のものだけでなく、殿様たちもそうだったようで、戦国時代、関白をつとめ、信長・秀吉・家康との親交もあった近衛前久が、以下のような手紙を島津義久に宛てています。
昨日話した瘡かきの若衆がこっちに来てます。もう瘡は治ってて、綺麗なもんですよ。盃を交わしたいなら、小物を一人だけ連れて、すぐ来てください。念者持ちの若衆になってしまってはと思い、手は付けてません。とにかくはやく来て御意にかけてください
via 島津家文書より筆者意訳
義弘・歳久・家久ら優秀な弟ともに、一時は九州を制覇する勢いを示した島津義久が京都に滞在した際、前久が評判の美少年をあてがおうとしたのですね。結局、この美少年と義久がどうなったかは分かりませんが、その二年後、名護屋城から薩摩へ帰国する義弘にあてて、前久はこんな手紙を書いています。
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黒澤はゆま

黒澤はゆま

宮崎生まれ。大阪在住。2013年に歴史小説『劉邦の宦官』でデビュー。他著作に真田昌幸の少年時代を描いた『九度山秘録』、世界史・日本史上の少年愛を紹介した『なぜ闘う男は少年が好きなのか』がある。愛するものはお酒と路地の猫。 公式

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