『西郷どん』放映記念!身も心もでっかい西郷像に会いに行く「ニッポン銅像探訪記 第12回:西郷隆盛像」
2017年12月22日 更新

『西郷どん』放映記念!身も心もでっかい西郷像に会いに行く「ニッポン銅像探訪記 第12回:西郷隆盛像」

2018年の大河ドラマの主人公は、倒幕と維新政府樹立の立役者である西郷隆盛。自殺未遂や江戸城無血開城などエピソードも豊富なことでも知られています。仲間の信頼も厚く、最後は西南戦争で明治新政府に弓を引いたにもかかわらず、当時から現在まで広く民衆に支持されている人物です。そんな人気を反映して、幕末の志士では坂本龍馬に次ぐ数の銅像が伝わっています。『西郷どん』放映を記念して、西郷隆盛像を紹介しましょう。

滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

上野の西郷さんは西郷隆盛じゃない!?

皇居外苑の楠木正成像、靖国神社の大村益次郎像と並び、「...

皇居外苑の楠木正成像、靖国神社の大村益次郎像と並び、「東京三大銅像」のひとつに数えられる西郷隆盛像(東京都台東区)。楠木正成像と西郷隆盛像はどちらも明治の仏師・高村光雲が手がけた。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
「上野の西郷さん」といえば、「渋谷のハチ公前」と同じくらい、待ち合わせの代名詞になっているお馴染みの場所。東京都民に限らず、「西郷さん」と聞いて上野の西郷像を思い浮かべる人は多いでしょう。

浴衣を羽織りリラックスした表情で、愛犬のツンを連れて近所をぶらっと散歩している格好。丸顔で恰幅の良い体型も、一般的な西郷のイメージそのものという感じです(本当は逆で、この銅像がパブリックイメージを生み出しているんですけどね)。

こんな有名な上野の西郷さんですが、ちょっとした歴史ミステリーを秘めています。それは、「この銅像は西郷隆盛であって、西郷隆盛ではない」ということ。どういうことかというと、西郷は写真がいっさい残されておらず、銅像制作の際にそれが問題となりました。そこでやむなく、大蔵省のお雇い外国人だったイタリア人版画家・キヨッソーネが描いた西郷の肖像画を参考にしました。

ただし、キヨッソーネは西郷と会ったことはなく、顔の上半分は西郷の弟・従道、下半分は従兄弟である大山巌の顔をモチーフにして、西郷の肖像を完成させたといいます。つまり、上野の西郷さんはモンタージュ顔なのです。
着流し姿の西郷さん。顔が大きいのは、下から見上げたとき...

着流し姿の西郷さん。顔が大きいのは、下から見上げたときに全身のバランスが良くなるためだという。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
西郷像に付き従う愛犬のツン。モデルは不明。この銅像のお...

西郷像に付き従う愛犬のツン。モデルは不明。この銅像のおかげで、日本一有名な歴史人物のペットかもしれない。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
西南戦争を起こしたことで逆賊となった西郷ですが、明治22年(1889)の大日本帝国憲法発布のタイミングで名誉回復を受け、すぐに銅像制作が立案されました。制作にあたり、2万5千人を超す有志から寄付を受け、明治を代表する仏師である高村光雲が彫造を務めたことからも、西郷の人気ぶりがうかがえますね。

そして明治31年(1898)に、除幕式が行われるのですが、ここでも事件が。列席した西郷の後妻・糸子が、「宿んしはこげんなお人じゃなかった……(うちの主人はこんなお人じゃなかった)」とつぶやいたと伝えられます。

それが、「顔が似ていない」という意味なのか「こんな着流しで歩かない」という意味なのか、発言の意図はいまいち不明なのですが、夫の銅像に納得していなかったのは確かです。ただし、生前の西郷を知る人物が「銅像はそっくりな印象がある」とも発言しており、「上野の西郷さんは似ていたのかどうか」論争は、西郷の実際の写真が発見されない限り解決することはないのでしょう。
夕暮れ、ライトアップに照らされる西郷像。日本の将来を見...

夕暮れ、ライトアップに照らされる西郷像。日本の将来を見据え、未来に希望を託しているようでもある。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

器の大きさと銅像の大きさは比例する!

西郷隆盛は、言わずと知れた薩摩藩、現在の鹿児島県出身。そのため、鹿児島には多くの西郷像が残ります。
鹿児島市立美術館そばに立つ西郷像(鹿児島県鹿児島市)。...

鹿児島市立美術館そばに立つ西郷像(鹿児島県鹿児島市)。上野の西郷さんと異なり、こちらは軍服姿。顔も上野よりキリッとしている。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
そのうちの1体が、市立美術館近くの交差点に面して立つ西郷像です。

西郷は西南戦争の最後、市内の中心地にあり鹿児島城の背後にそびえる城山に籠もって自刃しました。この城山を背負うように立つ西郷像は、本体だけで6m弱もある巨大さ。上野の西郷さん像の築造が計画された際、生前の西郷を知る伊藤博文は軍服姿を主張したとされますが、こちらの銅像は陸軍大将としての正装です。薩摩に生まれ薩摩に死んだ西郷を祀るかのようなモニュメントで、鹿児島県のシンボルとなっているといっても、言い過ぎではないでしょう。
銅像の背後にそびえるのが、西郷が自刃した城山。

銅像の背後にそびえるのが、西郷が自刃した城山。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)
銅像の前の広場には、上野にならって愛犬のツンが置かれ、...

銅像の前の広場には、上野にならって愛犬のツンが置かれ、撮影スポットになっている。

via 撮影:滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

高さ10.5mの巨大すぎる西郷像

私立美術館そばの西郷像も充分巨大な銅像ですが、鹿児島にはさらに大きな西郷像がいます。高さ10.5mにも達する西郷像が立つのは、鹿児島屈指の温泉地である霧島。西郷も何度か湯治におもむき、また西南戦争でも激戦が繰り広げられた、ゆかりの深い土地です。
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滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

滝沢弘康(かみゆ歴史編集部)

かみゆ歴史編集部は「歴史はエンタテインメント!」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで編集制作を手がける歴史コンテンツメーカー。最近の編集制作物に『エリア別だから流れがつながる世界史』(朝日新聞出版)、『歴史REAL 山城を歩く』(洋泉社)、『戦国最強の城』(プレジデント社)、『鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(学研プラス)、『廃城をゆく5〜戦国の城を極める!』など。代表の滝沢弘康は講演や講座、メディア出演も行う。 公式

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