戦国武将ゆかりの地「戦国の城」をとことん楽しむ方法
2017年1月18日 更新

戦国武将ゆかりの地「戦国の城」をとことん楽しむ方法

「戦国の城」と言えば、天守も石垣もある立派な城を思い浮かべる人も多いはず……ですが、戦うために作られた「土の城」を知れば、戦国時代がもっと楽しくなります。初心者もOK、全国無数にある戦国武将ゆかりの「土の城」の魅力をご紹介します。

みのうち社みのうち社

土の城の魅力は「ナマナマしさ」

「戦国の城」とは、主に戦うためにつくられた土の城のことです。

 戦国の城へのハマり方は、人それぞれ。普通に近世の城めぐりをしているうちに、その近くにある戦国の城にも足をのばすようになって、だんだんハマっていったという人もいれば、最初からいきなり土の城にハマってしまう人もいます。

 推し武将のゆかりの地をたどっているうちに、城に興味を持つようになった人もいるし、山歩きをしているうちに山城が気になってきて、という人もいます。
 
 そんな中で、戦国の城にハマった人の多くが、口にする感想があります。それは、「建物も石垣もない土の城の方が、ナマナマしい」というもの。それはなぜでしょう。
イラスト/みかめゆきよみ (1491)

via イラスト/みかめゆきよみ
高くそびえる天守や石垣は、たしかに大迫力。けれども、誰がどのようにしてつくったのかが、ピンとこない。石をどう切り出して運び、積み上げたのか、天守の内部がどういうつくりになっているのかを学んでわかってゆくのは、とても楽しいですが、パッと見て、感覚的にというか、実感としてピンとこないのも事実です。

 そこへゆくと、土の城はパッと見て、人の手でせっせと土を掘って、積み上げていったのだと感覚的にわかります。重機もダンプもない時代に、目の前にある堀や土塁を築き上げた人たちの労力が、身体感覚で理解できるのです。

 と同時に、それほどまでの労力をかけなければならなかった危機感や緊張感が、伝わってくる──いつ攻めてくるかもわからない敵に、備えなければならなかったのだなあ──と。

小さいからこそリアルに感じる「戦国の城」

【山中城】土の城といえば、山中城の障子堀

【山中城】土の城といえば、山中城の障子堀

ワッフルのような障子堀で有名な山中城(静岡県三島市)。北条氏の小田原城の支城のひとつで、氏康により築城。氏政の時代になり、豊臣秀吉との関係が悪化したため、強固に改修された。1590年(天正18)、豊臣秀吉の小田原征伐で、壮絶な攻防戦が行われる。
 また、土づくりの戦国の城はたいがいの場合、石垣や天守を備えた近世の城より、小さいのも特徴です。その分、戦う人たちの息づかいのようなものが、身近に感じられるのも魅力です。「なるほど、この虎口の前に立った瞬間、背中から矢を射られるのだなあ」とか「この間合いなら槍で突き伏せられるなあ」など。
 
 中には、笑ってしまうくらいセコイ堀切や竪堀もあります。でも、そんなセコイ堀をじっと見ているうちに、そうまでして敵を食い止めたかった築城者の、切羽つまった立場が感じられ、ちょっとせつなくなることもあります。

 城は、歩く人それぞれの身体感覚の延長上に、妄想が立ち上がるもの。しかも、廃墟である分、イマジネーションを自由にふくらませられる余地がある。
 
 たとえば、櫓台ひとつをとっても、この上には井楼櫓が建っていたのだろうか、それとも楯や竹束だけを並べていたのだろうか、などいろいろな想像ができるのです。

 この楽しさを、もっと多くの人たちに知ってもらえたら、と思います。

跡はなくても景色は変わらず

 高知県の桂浜(かつらはま)に面して、浦戸城(うらどじょう)という城があります。長宗我部元親が、豊臣秀吉に下ったのちに新たな本拠として築いた城です。残念ながら、中心部には宿泊施設や公共施設が建っていて、堀や曲輪などの遺構はあまり残っていません。

 でも、そのホテルのバルコニーに立って、弓なりにどこまでもつづく海岸線を眺めていると、ああ、ここは土佐の覇者がいた城なんだなあ、と実感できます。かつて元親も、自分と同じ景色を眺めていたのだと。
【浦戸城】城趾から見た西浜の眺め

【浦戸城】城趾から見た西浜の眺め

高知市桂浜の北部丘陵の浦戸山(標高59m)上に築かれた平山城跡。長宗我部元親が居城とし、山内一豊も高知城に移るまで居城とした。現在、遺構はほとんどなく、本丸石垣の一部と、二の丸付近に3条の堀切がわずかに残っている。

戦国武将が最も身近に感じられる「土の城」

 あるいは、上杉謙信の居城として知られる、新潟県の春日山城(かすがやまじょう)。山頂の本丸は、決して広くはないけれど、かの孤高の軍神は、間違いなくそこに立っていた。これは、鳥肌が立つような体験ではないでしょうか。
【春日山城】城趾からみた上越市

【春日山城】城趾からみた上越市

上越市中部にある春日山山頂に築かれた春日山城。天然の要害のある難攻不落の城として、上杉為景、晴景、謙信、景勝の四代の居城となった。最近かなり見やすくなり、上杉ファンならずとも、一度は訪れたい城。
 群馬県の名胡桃城(なぐるみじょう)も、城好きにはたまらないスポットのひとつ。群馬県、つまり上野(こうづけ)の国は、北条・武田・上杉といった有力大名がしのぎを削っていた地域ですが、その中で翻弄されつつも、たくみに勢力をのばしたのが真田氏です。

 名胡桃城は、その真田氏の最前線を担う城でしたが、1589年(天正17)に北条氏政が、猪俣邦憲という武将に命じて城を奪ってしまいます。これを、豊臣政権による領土裁定に違反する勝手な武力行使、と秀吉が見なしたことにより、北条氏の討伐が決まるのです。

 この名胡桃城、実際に行ってみると、決して小さくはないですが、かといって特別大きいわけでもありません。縄張りも、工夫がないわけではなく、かといって特別感心するほど巧みでもない、関東ではさほど珍しくない、中の上くらいの城です。
 
 でも、そんな城が、あの大戦争の発火点になったのだと思うと、感慨深いものがあります。
【名胡桃城】ささ郭から堀切越しに本郭を望む

【名胡桃城】ささ郭から堀切越しに本郭を望む

群馬県利根郡みなかみ町下津にあった城。真田昌幸の沼田城の支城として、また小田原征伐の誘因となった。遺構は馬出しから主要な郭が直に並ぶ連郭式の山城で、両側が切り立った天然の要害である。近年の発掘調査で、土塁址・三日月堀・虎口などの重要な遺構が多数確認されている。
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みのうち社

みのうち社

歴史好きなイラストレーター&ライター、デザイナー、編集者の3人組。 武将の城や偉人の史跡、神社仏閣、美術など、身近にあるものでも最大限に楽しめる「歴史エコ」な情報を発信していきたいと思います。 今後は、各種イベントや本の企画など、歴史にまつわる仕事をしていく予定です。よろしくお願いします! 公式

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