第9回:戊辰戦争を戦い抜いた異色の幕臣・大鳥圭介ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】
2018年3月30日 更新

第9回:戊辰戦争を戦い抜いた異色の幕臣・大鳥圭介ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第9回は大鳥圭介ゆかりの地です。新選組の土方歳三が戦死したことで知られる函館戦争。そのとき旧幕府軍・総裁だったのが榎本武揚、陸軍奉行だったのが大鳥圭介でした。「全身これ肝」といわれ、幕臣となって戊辰戦争を戦い抜いた大鳥の生涯とゆかりの地をご紹介します。

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蕃書調所跡(東京都千代田区)

蕃書調所跡(東京都千代田区)

大鳥が教授として出仕した「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」。江戸幕府直轄の洋学研究教育機関でした。九段下駅のすぐそばで、皇女和宮が通った江戸城・清水門からも近い場所にありますよ。
via 提供:小栗さくら

日本初の金属活字「大鳥活字」

人に教える立場になった大鳥は、兵書を講義するために「いちいち写本では不便だ」と考え、教科書の必要性を感じました。かつて生活費を稼ぐために筆写をやっていた大鳥ですから、その大変さを身をもって知っていたこともあるでしょうね。

彼は西洋の活字の方法から考えて、鉛や錫(すず)を使った合金で型を作り、ついに日本初の金属活字で『築城典刑』という教材を作り上げました。この本はオランダの築城学の教本で、もちろん翻訳は大鳥自身!そのほかにも大鳥は多くの著作を出版しています。

新選組もののドラマや物語では、ちょっと抜けたイメージで描かれることが多い大鳥ですが、実は万能な人なんですよね。
「築城典型」全5巻より

「築城典型」全5巻より

via 国立国会図書館蔵

文官から武官へ

医学の道から兵学の道へと進んだ大鳥は、尼崎藩士、徳島藩士となった後、江戸へ戻ります。
そして文久2年(1862)、幕府の兵制改革により洋式陸軍が創設されると、洋学者の人材の一人として大鳥も採用されました。

そこで幕臣・小栗忠順(おぐり・ただまさ)と出会った大鳥は、洋学者の意見を取り入れる小栗を「先見の明ありしと感服のほかなし」と尊敬したといいます。そのあまり、駿河台の小栗屋敷には夜中にも行き来して国事を論じあったのだとか。
小栗忠順

小栗忠順

日米修好通商条約批准のため遣米使節に随行。帰国後は外国奉行に。その後も勘定奉行、町奉行などを歴任します。
小栗の計らいで陸軍伝習をすることになった大鳥は、文官から武官へと足を踏み入れることになります。そして、のちに箱館戦争で共に戦う荒井郁之助と出会い、切磋琢磨しあいました。

通訳もこなすようになった大鳥は昇進し、やがて兵を訓練する側となります。そうして結成されたのが幕府精鋭の部隊「伝習隊」です。大鳥はこの伝習隊の隊長となって戊辰戦争を戦うことになるのでした。
小栗忠順胸像(神奈川県横須賀市)

小栗忠順胸像(神奈川県横須賀市)

大鳥が感服した、幕臣・小栗忠順の胸像。横須賀中央公園の博物館近くにあり、小栗の盟友・栗本鋤雲(じょうん)の胸像と並んでいます。
via 提供:小栗さくら

そして、戊辰戦争へ

慶応4年(1868)正月、戊辰戦争の火蓋が切られます。
これより3年ほど前に幕臣となっていた大鳥は、「主家の滅びに答えるには一死あるのみ」としながらも「徒死(とし/無駄死)はしない」と告げて、転戦に転戦を重ねることになります。

代々の幕臣ではない大鳥のこの言葉は、意外にも思えます。ですが弟に宛てた手紙には、大鳥が幕府に抜擢されたことをありがたく思い、一命をもって忠節を尽そうとした想いがつづられています。
法恩寺(東京都墨田区)

法恩寺(東京都墨田区)

大鳥が江戸を脱する際、伝習隊と合流した法恩寺。門の後ろにはスカイツリーが見えます。江戸城を築いた戦国武将・太田道灌のお墓もこちらにありますよ。
via 提供:小栗さくら

戦下手ではない大鳥

戊辰戦争を描いた作品、特に新選組の土方歳三を中心に描いたストーリーでは、戦上手の土方に対し、実戦が得意でない大鳥のように描かれることがあります。
実際には、小山の戦いで快勝し、自軍より数の多い敵軍を退けています。また、不利な戦を自分が請け負って殿(しんがり)をつとめたり、敗退した戦の中には大鳥に意思決定権がなかったものもあったといいます。
戊辰戦争のひとつ、宇都宮城(栃木県宇都宮市)での戦いは...

戊辰戦争のひとつ、宇都宮城(栃木県宇都宮市)での戦いは軍総監を大鳥圭介が、軍参謀を土方歳三が務めていたとされます。

via 提供:小栗さくら
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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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