戊辰戦争を戦い抜いた異色の幕臣・大鳥圭介ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第9回】
2018年7月27日 更新

戊辰戦争を戦い抜いた異色の幕臣・大鳥圭介ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第9回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第9回は大鳥圭介ゆかりの地です。新選組の土方歳三が戦死したことで知られる函館戦争。そのとき旧幕府軍・総裁だったのが榎本武揚、陸軍奉行だったのが大鳥圭介でした。「全身これ肝」といわれ、幕臣となって戊辰戦争を戦い抜いた大鳥の生涯とゆかりの地をご紹介します。

小栗さくら小栗さくら

蕃書調所跡(東京都千代田区)

蕃書調所跡(東京都千代田区)

大鳥が教授として出仕した「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」。江戸幕府直轄の洋学研究教育機関でした。九段下駅のすぐそばで、皇女和宮が通った江戸城・清水門からも近い場所にありますよ。
via 提供:小栗さくら

日本初の金属活字「大鳥活字」

人に教える立場になった大鳥は、兵書を講義するために「いちいち写本では不便だ」と考え、教科書の必要性を感じました。かつて生活費を稼ぐために筆写をやっていた大鳥ですから、その大変さを身をもって知っていたこともあるでしょうね。

彼は西洋の活字の方法から考えて、鉛や錫(すず)を使った合金で型を作り、ついに日本初の金属活字で『築城典刑』という教材を作り上げました。この本はオランダの築城学の教本で、もちろん翻訳は大鳥自身!そのほかにも大鳥は多くの著作を出版しています。

新選組もののドラマや物語では、ちょっと抜けたイメージで描かれることが多い大鳥ですが、実は万能な人なんですよね。
「築城典型」全5巻より

「築城典型」全5巻より

via 国立国会図書館蔵

文官から武官へ

医学の道から兵学の道へと進んだ大鳥は、尼崎藩士、徳島藩士となった後、江戸へ戻ります。
そして文久2年(1862)、幕府の兵制改革により洋式陸軍が創設されると、洋学者の人材の一人として大鳥も採用されました。

そこで幕臣・小栗忠順(おぐり・ただまさ)と出会った大鳥は、洋学者の意見を取り入れる小栗を「先見の明ありしと感服のほかなし」と尊敬したといいます。そのあまり、駿河台の小栗屋敷には夜中にも行き来して国事を論じあったのだとか。
小栗忠順

小栗忠順

日米修好通商条約批准のため遣米使節に随行。帰国後は外国奉行に。その後も勘定奉行、町奉行などを歴任します。
小栗の計らいで陸軍伝習をすることになった大鳥は、文官から武官へと足を踏み入れることになります。そして、のちに箱館戦争で共に戦う荒井郁之助と出会い、切磋琢磨しあいました。

通訳もこなすようになった大鳥は昇進し、やがて兵を訓練する側となります。そうして結成されたのが幕府精鋭の部隊「伝習隊」です。大鳥はこの伝習隊の隊長となって戊辰戦争を戦うことになるのでした。
小栗忠順胸像(神奈川県横須賀市)

小栗忠順胸像(神奈川県横須賀市)

大鳥が感服した、幕臣・小栗忠順の胸像。横須賀中央公園の博物館近くにあり、小栗の盟友・栗本鋤雲(じょうん)の胸像と並んでいます。
via 提供:小栗さくら

そして、戊辰戦争へ

慶応4年(1868)正月、戊辰戦争の火蓋が切られます。
これより3年ほど前に幕臣となっていた大鳥は、「主家の滅びに答えるには一死あるのみ」としながらも「徒死(とし/無駄死)はしない」と告げて、転戦に転戦を重ねることになります。

代々の幕臣ではない大鳥のこの言葉は、意外にも思えます。ですが弟に宛てた手紙には、大鳥が幕府に抜擢されたことをありがたく思い、一命をもって忠節を尽そうとした想いがつづられています。
法恩寺(東京都墨田区)

法恩寺(東京都墨田区)

大鳥が江戸を脱する際、伝習隊と合流した法恩寺。門の後ろにはスカイツリーが見えます。江戸城を築いた戦国武将・太田道灌のお墓もこちらにありますよ。
via 提供:小栗さくら

戦下手ではない大鳥

戊辰戦争を描いた作品、特に新選組の土方歳三を中心に描いたストーリーでは、戦上手の土方に対し、実戦が得意でない大鳥のように描かれることがあります。
実際には、小山の戦いで快勝し、自軍より数の多い敵軍を退けています。また、不利な戦を自分が請け負って殿(しんがり)をつとめたり、敗退した戦の中には大鳥に意思決定権がなかったものもあったといいます。
戊辰戦争のひとつ、宇都宮城(栃木県宇都宮市)での戦いは...

戊辰戦争のひとつ、宇都宮城(栃木県宇都宮市)での戦いは軍総監を大鳥圭介が、軍参謀を土方歳三が務めていたとされます。

via 提供:小栗さくら
50 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

真田幸村、坂本龍馬…超有名人を討ち取った!?知られざる「実行犯」たち

真田幸村、坂本龍馬…超有名人を討ち取った!?知られざる「実行犯」たち

真田幸村、坂本龍馬など、討死や暗殺によって最期を遂げた有名人を討ち取った「実行犯」に迫る書籍『あの方を斬ったの…それがしです-日本史の実行犯-』が3月19日(月)に発売!討ち取られた人物に比べるとマイナーな彼らは、どんな人物だったのでしょうか?本書の著者で歴史ナビゲーターの長谷川ヨシテルさんに、書籍の中からとくにおすすめの3人をご紹介いただきました。
幕末維新に活躍した肥前佐賀藩の先人「佐賀の七賢人」まとめ

幕末維新に活躍した肥前佐賀藩の先人「佐賀の七賢人」まとめ

幕末から明治にかけて、数多くの人材を輩出した肥前佐賀藩。その中でも中心的な役割を果たした7人を「佐賀の七賢人」と呼びます。幕末の佐賀藩主・鍋島直正や、早稲田大学創設者の大隈重信などの有名人から知られざる?人物まで、七賢人をまとめてご紹介。3月17日(土)から始まる「肥前さが幕末維新博覧会」の予習にどうぞ!
【 武将隊、刀剣、西郷どんのスタンプラリーも!】寒さ吹き飛ぶ!2月のイベントまとめ

【 武将隊、刀剣、西郷どんのスタンプラリーも!】寒さ吹き飛ぶ!2月のイベントまとめ

あまりの寒さに家に引きこもりたくなる冬。しかし2月は寒さも吹き飛ぶ熱いイベントが続々開催されます。全国の武将隊が集結する武将博から、沖田総司の愛用していた刀工の刀剣展示、大河ドラマ「西郷どん」のスタンプラリーなど、歴史系イベントをご紹介します。
あの名シーンを再現!?大河ドラマ「真田丸」ゆかりの地まとめ

あの名シーンを再現!?大河ドラマ「真田丸」ゆかりの地まとめ

大人気2016年大河ドラマ「真田丸」。劇中で主人公の真田幸村(信繁)と、彼を取り巻く真田一族や戦国武将たちによる数々の名シーンの舞台となったゆかりの地をまとめてご紹介します。
夏休みに行きたい!ご当地の歴史も学べる人気「道の駅」5選

夏休みに行きたい!ご当地の歴史も学べる人気「道の駅」5選

ご当地の特産品やグルメを楽しむことができ、ドライブの途中で立ち寄れる人気観光スポット「道の駅」。なかにはその土地の歴史を紹介する施設が併設されている道の駅もあるんですよ。今回は「歴史も学べる道の駅」を全国から厳選!夏休みの旅行の際に、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
藩主自ら脱藩!?「最後の大名」林忠崇の戊辰戦争【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第18回】

藩主自ら脱藩!?「最後の大名」林忠崇の戊辰戦争【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第18回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第18回は、昭和まで生きた最後の大名・林忠崇ゆかりの地。請西藩の第3代藩主でありながら、大名自らが脱藩してしまうという異色の経歴を持つ稀有な人物でもあります。あまり知られていない人物ではありますが、彼の戊辰戦争の軌跡を辿れば、きっと興味がわくはずですよ。
西郷隆盛も好物のスイカを買っていた日本橋・千疋屋総本店

西郷隆盛も好物のスイカを買っていた日本橋・千疋屋総本店

夏といえばスイカ。その歴史は古く、あの西郷隆盛も好物だったといいます。西郷が江戸に住んでいた際、スイカを購入したといわれるのが、皆さんもご存知のあの有名果物店でした。今回は西郷とスイカにまつわるエピソードを紹介します。
創業200年!勝海舟やジョン万次郎も愛した浅草の名店『鰻やっこ』

創業200年!勝海舟やジョン万次郎も愛した浅草の名店『鰻やっこ』

2018年7月20日は「土用の丑(うし)の日」。暑い夏を乗り切るために、栄養価の高い鰻(うなぎ)を食べようという日本の風習ですが、古くから鰻は江戸っ子たちに人気でした。今回は老舗のうなぎ屋さんのなかでも、勝海舟など歴史上の人物にゆかりのあるお店を紹介します。
剣・書・禅に生きた山岡鉄舟、逸話をもとに辿るゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第17回】

剣・書・禅に生きた山岡鉄舟、逸話をもとに辿るゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第17回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第17回は、江戸無血開城へと導いた幕臣・山岡鉄舟ゆかりの地。「幕末の三舟」のひとりとされ、剣や書の名人でもある一方、食に関しては無茶苦茶なエピソードも残る鉄舟。多才な彼の生涯を様々な側面から感じてみませんか?
戊辰戦争終結の地・函館に残る榎本武揚や土方歳三…旧幕府軍ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第16回】

戊辰戦争終結の地・函館に残る榎本武揚や土方歳三…旧幕府軍ゆかりの地【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち:第16回】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第16回は、戊辰戦争最後の地・函館にある、榎本武揚や土方歳三たち旧幕府軍ゆかりの地をご紹介します。2019年は箱館戦争終結、そして土方歳三没後150年の年。改めてその最期の舞台を巡ってみてください。