第11回:徳川慶喜らが眠る谷中霊園【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】
2018年4月1日 更新

第11回:徳川慶喜らが眠る谷中霊園【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第11回は東京都台東区にある谷中霊園です。江戸幕府最後の将軍となった徳川慶喜をはじめ、数多くの有名人が眠るこの霊園。今回は慶喜と、彼の忠臣であり「日本資本主義の父」といわれた渋沢栄一、さらに宇和島藩の名君・伊達宗城の墓所をご案内します。

小栗さくら小栗さくら

多種多様な企業の設立・経営に関わり、「日本資本主義の父」ともいわれる渋沢栄一。
そんな彼が実業家になる前の幕末。彼は攘夷運動を経て、徳川慶喜に仕えることになります。

意見がころころ変わる「二心殿」といわれた主君・慶喜に対し、渋沢自身も思うところはあったようです。戊辰戦争のときには、大坂からひっそりと江戸へ帰ってきてしまった慶喜を「徳川300年の歴史を自ら棄てる行為」と批判しています。しかしそんな慶喜の心情を伝えようとしていたのもまた渋沢でした。
広々とした敷地の中にそびえ建つ渋沢栄一の墓石。 慶喜の...

広々とした敷地の中にそびえ建つ渋沢栄一の墓石。 慶喜の墓所からも近い場所にあり、かつての主従が同じ霊園に眠っていることに胸が熱くなります。

via 撮影:ユカリノ編集部

徳川慶喜の回想録

時に慶喜を批判した渋沢ですが、彼は明治中頃から慶喜の伝記編纂を考え始めます。

そのために慶喜を取材する会の名前は、彼自身によって「昔夢会(せきむかい)」と名付けられました。昔夢会というこの文字から、慶喜のさまざまな想いが感じられるような気がしませんか?

後年になって思い出しているものなので全てが正確ではないでしょうし、慶喜がわざと答えていないような部分も見受けられますが、回想録『昔夢会筆記』はそれを含めて面白い本になっています。

慶喜と渋沢のこの関係性を知ると、お墓参りに行く時により深い感動が得られると思います。
『昔夢会筆記』

『昔夢会筆記』

本のはじめに「徳川慶喜公伝 自序」と渋沢が記した文章があります。
渋沢の慶喜への強い想いに胸を打たれますし、渋沢が「終生をかけて伝記を作りたい」と思った慶喜への興味が湧いてくる一冊です。

校訂が大久保利通の孫というのも面白いですね。
via 提供:小栗さくら

宇和島藩の名君・伊達宗城

伊達宗城

伊達宗城

伊達家に養子として迎えられ、8代藩主となった宗城。
伊達政宗の庶長子・秀宗から始まる宇和島藩。その宇和島藩で有名な人物といえば、幕末の名君・伊達宗城です。

宗城は、島津斉彬(薩摩藩主)、松平春嶽(福井藩主)、山内容堂(土佐藩主)と共に「四賢侯(しけんこう)」に数えられている人物で、将軍継嗣問題では、慶喜を推す一橋派となっていました。
その後、井伊直弼による安政の大獄で隠居の身となりますが、藩内外への発言力を保ち続けました。
伊達宗城墓所

伊達宗城墓所

門の正面にあるのが宗城の墓所。墓石だけでなく石灯籠も立派ですね。
via 撮影:ユカリノ編集部

日本初の蒸気船は宇和島藩?

宗城は、先代・宗紀の藩政改革を継いで殖産興業を推進すると、そこから得た利益で西洋技術の導入・軍制の近代化を図りました。

日本初の蒸気船建造は薩摩藩とされていますが、「日本人の手による蒸気船」となると、宇和島藩が初だといわれています。

ペリー来航後、宗城は蒸気船を作るため大村益次郎を招き、蒸気船の建造を命じました。一説には、大村が医学を心得ていたので、宗城が「医者なら西洋の技術書が読めるだろう」と考えたからだとか…。

船の建造を手がけたのは、もともと提灯などの細工職人をしていた前原巧山です。当然のことながらなかなか上手くいかず、長崎や薩摩に学びながら試行錯誤の末に出来上がったといわれています。
一見するとかなり無謀な蒸気船作りですが、最終的にはちゃんと成し遂げているのが凄いですよね!
大村益次郎

大村益次郎

大村は宇和島藩で西洋兵学・蘭学の講義と翻訳を手がけ、宇和島城北部に樺崎砲台を築きます。

宗城の子どもたち

宗城の子供には、他藩の最後の藩主となった人物がふたりいます。

ひとりは、戦国武将で知られる真田氏・松代藩の藩主となった、真田幸民(ゆきもと)。
もうひとりは、中津藩の藩主となった奥平昌邁(まさゆき)。2018年正月時代劇「風雲児たち」で、前野良沢を支えていた藩主・奥平昌鹿が出てきましたよね。あの奥平です。

戦国時代と繋げて考えると、その関係性が面白く見えてきます。
左・真田幸民 右・奥平昌邁

左・真田幸民 右・奥平昌邁

ふたりとも、宗城とシュッとした感じが似ています。
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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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