人形が舞い狂う!?天津司の舞(山梨県甲府市)【日本名珍祭り図鑑】
2018年4月1日 更新

人形が舞い狂う!?天津司の舞(山梨県甲府市)【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載がスタート。初回は、山梨県甲府市の「天津司(てんづし)の舞」です。日本最古の人形の舞といわれ、毎年4月10日直前の日曜に開催されます。桜の下で、神様が宿った人形たちが踊り狂う!?重要無形民俗文化財でもある伝統の祭りをご堪能ください。

芳賀日向芳賀日向

今も日本全国で開催されている様々なお祭り。その数は10万とも30万ともいわれていますが、祭りごとに歴史、個性があり、郷土の名物になっています。

その中にはちょっとあやしかったり、怖い思いをする祭りもありますが、一見おかしく見えるものも、その土地の人々の祈りや魂が込められているのです。

この連載では、祭り写真家としてたくさんの取材をしてきた中で、とくに珍しく、見た目もインパクト大な祭りをご紹介したいと思います。

日本最古の人形芝居

天津司の舞 御幸

天津司の舞 御幸

via 写真提供:芳賀日向
古来より人形(ひとがた)は神を表し、稲束や草で作った人形を、村境に立てて邪鬼の侵入を防ぎました。現在でもその風習が残っている地方があります。

平安時代になると、陰陽師が白い紙に人形を刻んだ形代(かたしろ)に、人間の穢れを移して祓いました。やがて、人形は顔に目鼻、身体に手足を持ち、人間へと近づきます。祭りの日にはその人形に神が降り、生命力が宿るとされていました。

そういったお祭りのひとつが、この「天津司の舞」です。
天津司神社(山梨県甲府市)

天津司神社(山梨県甲府市)

「天津司の舞」が行われる神社。健康祈願、無病息災などにご利益があるといわれています。
via 写真提供:芳賀日向
天津司の名は、中世のあやつり人形の名称である手傀儡(てくぐつ)の音が転訛したといい、日本最古の人形芝居といわれています。
写真提供:芳賀日向 (17143)

天津司神社に格納された人形。地元ではオテヅシさん、デッツクさんと呼ばれています。
via 写真提供:芳賀日向
古代、この地・山梨県の小瀬(現在の甲府市小瀬)は沼地でした。大水害が起こり、里人が苦しんでいると、天から12の神様が降りて来られ、沼地で舞い遊ばれると、小瀬は美しい里になったといいます。

2神は天に帰り、1神は西油川村の鏡池に飛び入って亡くなり、残りの9神が里に残り舞い続けたといわれています。そして天津司神社には9体の等身大の人形が残り、この地に祀られるようになったのです。

毎年4月10日前の日曜(2018年は4月8日)の天津司神社の例祭に、年に一度、9体の人形に神様が再び降りて来られる祭りが「天津司の舞」になります。
「甲斐名所図絵」に描かれた天津司の舞

「甲斐名所図絵」に描かれた天津司の舞

嘉永年間(1850年頃)に描かれた図絵。

「お狂い」と呼ばれる激しい舞

御幸

御幸

人形の顔が赤い布で覆われているのは、神様がうつられている人形に俗世界を見せないためだとか。
via 写真提供:芳賀日向
天津司神社拝殿での神事が終わると、人形は神役(しんやく)に掲げられ、笛、太鼓の音にあわせて鈴宮諏訪神社までの約1kmを御幸(おみゆき)します。
2番目の二の御編木様(右)と6番目の御笛様の舞

2番目の二の御編木様(右)と6番目の御笛様の舞

via 写真提供:芳賀日向
行列の1番目と2番目の人形は、豊作を願うビンザサラという楽器を持っています。
3番目と4番目は太鼓、5番目は鼓、6番目は笛。7番目には烏帽子をかぶって両手に小刀を持った御鹿島様。厄災除けの守り神です。
続いて冠をかぶり、赤い打ち掛けに身を包んだ御姫様。最後は打ち杖を持った鬼様が登場します。
御姫様の舞

御姫様の舞

via 写真提供:芳賀日向
23 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

芳賀日向

芳賀日向

はがひなた。祭り写真家。1956年長野県生まれ。米国西イリノイ大学文化人類学科卒業。30年間に渡り世界の祭り48ヵ国、日本各地の祭りを撮り続ける。週刊朝日百科『日本の祭りシリーズ』連載(朝日新聞出版)、『祭りを撮る』監修(旅行読売出版社)、『日本全国祭り図鑑』監修(フレーベル館)など。写真展「世界のカーニバル」、「被災地の夏祭り」(キヤノン)他。日本写真家協会会員。 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

那智、吉田、手筒花火…夏におすすめの火祭り3選【日本名珍祭り図鑑】

那智、吉田、手筒花火…夏におすすめの火祭り3選【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は夏の火祭りです。神霊の送迎や火による清めなどの意味を持つ火祭りは、7~8月の盆行事の頃に行われます。その中でも特におすすめの3つをご紹介。火祭りの上手な撮影方法も伝授します!
2月3日は節分!写真で見る日本各地の節分行事とそのルーツ|日本名珍祭り図鑑

2月3日は節分!写真で見る日本各地の節分行事とそのルーツ|日本名珍祭り図鑑

2019年2月3日は節分です。神社や寺、家庭や保育園、幼稚園などでは鬼のお面をかぶった人に豆を投げますね。この節分、実はルーツが大変興味深いのです。祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は日本各地の節分行事を写真で紹介するとともに、そのルーツに迫ります。
商売繁盛で笹もってこい!浪花のお正月は「十日戎」で始まる|日本名珍祭り図鑑

商売繁盛で笹もってこい!浪花のお正月は「十日戎」で始まる|日本名珍祭り図鑑

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、毎年1月9~11日に大阪市浪速区の今宮戎神社で開催される「十日戎(とおかえびす)」です。年の初めのお祭りとして、3日間で約100万人の参詣者が訪れるという、浪花のお正月を象徴するお祭り。お祭りの見どころや撮影ポイントをご紹介します!
2019年は小田原・静岡・甲府に注目!500年記念に沸く戦国大名ゆかりの地

2019年は小田原・静岡・甲府に注目!500年記念に沸く戦国大名ゆかりの地

2019年、様々な500年の節目を迎える戦国大名たち。神奈川県小田原市では北条早雲の没後500年、静岡県静岡市では今川義元の生誕500年、そして武田氏ゆかりの地・山梨県甲府市では開府から500年となり、それぞれのゆかりの地は記念事業で盛り上がっています。あらためてその功績を見直すとともに、記念のお祝いに出かけてみてはいかがでしょうか?
12月14日は忠臣蔵の日!平成最後の「赤穂義士祭」へ行こう

12月14日は忠臣蔵の日!平成最後の「赤穂義士祭」へ行こう

「忠臣蔵」として知られる赤穂事件が起きた12月14日、全国にあるゆかりの地では赤穂浪士にちなんだ祭りが毎年開催されています。今年で115回目を迎える兵庫県赤穂市の「赤穂義士祭」のほか、東京の泉岳寺でも行われる義士祭。今もなお多くの忠臣蔵ファンが集まる祭りの見どころをご紹介します。
【埼玉県】神々のロマンを花火が祝福!秩父夜祭|日本名珍祭り図鑑

【埼玉県】神々のロマンを花火が祝福!秩父夜祭|日本名珍祭り図鑑

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、秩父市の名物「秩父夜祭」です。毎年12月に開催される秩父神社の例大祭で、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、日本三大曳山祭の1つに数えられる秩父夜祭。歴史ある師走の伝統的なお祭りの見どころや撮影ポイントをご紹介します。
【愛知県】「テーホヘ、テホヘ」鎌倉時代から続く奥三河の花祭|日本名珍祭り図鑑

【愛知県】「テーホヘ、テホヘ」鎌倉時代から続く奥三河の花祭|日本名珍祭り図鑑

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、奥三河の花祭です。毎年11~3月にかけて、愛知県の奥三河各地で開催されるこのお祭り。鎌倉時代から続く、国の重要無形民俗文化財にも指定された伝統芸能は一見の価値あり!
異国情緒たっぷり!エキゾチックな祭り「長崎くんち」【日本名珍祭り図鑑】

異国情緒たっぷり!エキゾチックな祭り「長崎くんち」【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、長崎の氏神・諏訪神社の秋季大祭である「長崎くんち」をご紹介。寛永11(1634)年、二人の遊女が諏訪神社神前に舞を奉納したことが始まりと言われ、以来長崎の秋の風物詩として親しまれています。その見どころを写真とともにご紹介します。
【2018年10月開催】秋は武将祭りに行こう!全国歴史系イベントまとめ

【2018年10月開催】秋は武将祭りに行こう!全国歴史系イベントまとめ

行楽の秋、武将祭りやお城まつりなど、歴史系のお祭りが全国で開催されます。郷土の誇りと讃えられた有名武将の活躍を再現したものや、戦国時代さながらの甲冑姿でのパレード、迫力ある火縄銃演武、有名な合戦を再現したものなど、歴史好きなら胸が熱くなるイベントばかり。お祭りに参加して、あなたの憧れの武将達に会いにいってみませんか?
イケメン漁師がもみ合う!房総半島・秋の風物詩「裸祭り」【日本名珍祭り図鑑】

イケメン漁師がもみ合う!房総半島・秋の風物詩「裸祭り」【日本名珍祭り図鑑】

祭り写真家の芳賀日向さんが、日本全国よりその土地ならではの珍しい祭りを紹介する連載。今回は、千葉県で開催される「大原はだか祭り」「上総十二社祭り」、2つの「裸祭り」をご紹介します。どちらもその起源は古く、秋の風物詩として地元で親しまれています。躍動感ある神輿と参加者の生き生きとした姿はまさにフォトジェニック!その見どころを写真でご紹介します。