鎌倉・荏柄天神社と「学問の神様」菅原道真の書の謎
2016年12月27日 更新

鎌倉・荏柄天神社と「学問の神様」菅原道真の書の謎

鎌倉にある荏柄天神社は、1104年に創建され「学問の神様」菅原道真を祀る神社として有名です。そんな道真公ゆかりの荏柄天神社に伝わるエピソードをご紹介します。

こまきこまき

「天神」とは「天満大自在天神」の略。讒言から太宰府へ左遷され、失意の内に亡くなった菅原道真(845~903)の神号です。嫉みから道真を陥れた人々はその祟りを怖れ、神として崇めました。天神さまの生涯と霊験を描いた「荏柄天神縁起」が伝来し(現在は尊経閣文庫蔵)、「怒り天神」と呼ばれる「天神坐像」「天神立像」がお祀りされているのが鎌倉の荏柄天神社(鎌倉市二階堂74)です。
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ピンチから救出してくれる怒り天神

重要文化財 天神坐像

重要文化財 天神坐像

(天神坐像。弘長元年(1261)造立。国重要文化財。神奈川・荏柄天神社所蔵。)
荏柄天神社の縁起には、道真の死から約200年後の長冶元年(1104)に空から天神さまの絵が降ってきたことから二階堂に社を建てたのが始まりとあります。平安時代の中頃でした。それから時は経ち、二階堂の隣の大蔵の地に源頼朝が鎌倉幕府を開きました。頼朝は鎌倉幕府の鬼門(北東)にある荏柄天神社を守護社として崇敬しました。

北条氏の頃には、謀反の冤罪を訴えた渋河兼守が荏柄天神社へ和歌10首を献じ、それを見た源実朝が歌に感じ入って処刑が取りやめられたこともありました(『吾妻鏡』)。
この他にも天神さまが冤罪を晴らしてくれたいくつもの話が伝わっています。怨霊信仰は怒りの強さと加護の力の強さが比例するものです。荏柄天神社に祀られている憤怒の御顔の「怒り天神」は虐げられた者に味方してくれる神の姿なのですね。

寺子屋での天神さまと筆跡の謎

菊池容斎『前賢故実』内「菅原道真」

菊池容斎『前賢故実』内「菅原道真」

道真が左遷されたのは、抜群に頭が良く文芸に秀でていた上に政治家として有能すぎたからでした。ですから天神さまが学問の神様として崇められるようになったのは自然な流れですね。江戸時代の寺子屋では道真の絵が壁に掲げられ、道真の命日である毎月25日は寺子屋の祝日と定められて手習い上達を祈願しました。

「通りゃんせ」というわらべ唄をご存知ですか。横断歩道の音響信号でメロディを聞いた方も多いことでしょう。この「通りゃんせ」の歌詞の中に「この子の七つの御祝いに御札を納めに参ります」という一節があり、これは7歳になった子どもが天神さまにお参りする習慣からきています。

このように天神さまは書道の神=書聖として信仰されてきた歴史があり、荏柄天神社では1月25日の初天神の日に筆供養が行われています。『政事要略』(平安時代の政要書)にはある僧の夢に弘法大師があらわれて「道真は私を継ぐ者である」と語ったとあり、また『入木抄』(鎌倉時代の書道書)には「聖廟(=道真)抜群也」とあるのですが、道真の真筆は現存していないため、その筆跡は謎に包まれています。

受験生を応援!試験当日も天神さまが後押し

荏柄天神社に合格祈願のお参りをする方々の多くが、お守りをいただき絵馬を奉じて帰ります。
そして、こちらには受験生にありがたい「受験当日早朝祈祷」があります。前日までに受験先や受験日などを申込用紙に記入して申し込むと、受験当日の8時半から9時頃にかけて合格を天神さまにお祈りしていただけて、申込用紙をその日1日天神さまにお供えしてくれます。
不安でいっぱいの受験生にとって何と心強いことでしょう。
また、お参りの際にぜひとも見ていきたいのが境内の2つの筆塚です。
カッパ筆塚はカッパの絵で知られる漫画家・清水崑によって建立されたもので、絵筆塚の方は手塚治虫や藤子不二雄など有名漫画家の描いたカッパ絵のレリーフ群が見事です。
絵筆塚

絵筆塚

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こまき

こまき

歴史ライター。ワイルドサイドを歩くことを信条とする。『時の娘』をはじめとした歴史ミステリーに目がなく、読む→書く→読む→書くの無限ループのうちに日々を過ごす安楽椅子ライター。昼夜を分かたずラジオを流しているラジオ狂でもある。『姓氏家系歴史伝説大事典』『江戸東京魔界紀行』(共に勉誠出版)『社寺縁起伝説辞典』『横溝正史研究』(共に戎光祥出版)等々へ記事執筆多数。

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