戦国に生きた細川ガラシャ、父・明智光秀の実像に迫る「細川ガラシャ展」
2018年9月19日 更新

戦国に生きた細川ガラシャ、父・明智光秀の実像に迫る「細川ガラシャ展」

細川家ゆかりの名品が展示されている永青文庫展示室。その開設10周年を記念し、熊本県立美術館で好評開催中の特別展「細川ガラシャ」。なぜガラシャは今も人々を惹きつけてやまないのか?戦国の乱世を生きた彼女の実像に迫る本展には、父・明智光秀に関する新史料や「本能寺の変」関連文書、夫・細川忠興の愛刀「歌仙兼定」など話題の品が勢ぞろい。注目の特別展の模様をレポートします。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

撮影:ユカリノ編集部 (24017)

via 撮影:ユカリノ編集部
本展の主役である、明智光秀の娘、そして細川忠興に嫁いだ女性、玉。
父・光秀による本能寺の変をきっかけに、幸せな新婚生活は一転。反逆者の娘として幽閉され、その後はキリスト教を信仰、関ヶ原の戦いを前に悲劇的な最期を迎えました。
現在では洗礼名「細川ガラシャ」の名で知られ、その波乱万丈な生涯に注目が集まりますが、意外にもその実像はよくわかっていないといいます。

彼女の何がそこまで人々を惹きつけるのか。
私たちがイメージする「ガラシャ像」は、どのように形成されたのか。

ガラシャや、彼女を取り巻く人々のゆかりの品からその実像に迫る本展を取材しました。

明治時代に逆輸入された?キリシタン・ガラシャのイメージ

ガラシャを題材にした作品から、そのイメージの変遷が見られる

ガラシャを題材にした作品から、そのイメージの変遷が見られる

via 撮影:ユカリノ編集部
細川ガラシャの最期といえば、石田三成軍に屋敷を囲まれ、キリシタンとして自害できなかったため家臣に自らを殺させたというエピソードが知られています。
これは元侍女の証言による「霜女覚書」や、「イエズス会日本年報」がもとになっています。

しかし江戸時代から明治時代にかけて、ガラシャの最期は、夫の指示に従い家のために死を選んだ「節女」「烈女」として広まっていました。私たちが知る「キリシタン」としての姿は、当時そこになかったのです。

実は、ガラシャは「信仰を守りつつ最期を迎えた、日本を代表するキリスト教徒」として、ヨーロッパで語り継がれてきました。
そして明治時代になり、キリシタンとしてのイメージが日本に逆輸入。十字架を身にまとったガラシャの肖像が描かれ始めます。ここから、今日私たちが「キリシタンのガラシャ」のイメージを強めていったといえます。
本展のメインビジュアルにも使用されている「ガラシャ夫人...

本展のメインビジュアルにも使用されている「ガラシャ夫人像」(島根県立美術館所蔵)橋本明治、大正12年

キリシタンとして描かれた最初期のガラシャ像。
via 撮影:ユカリノ編集部

ガラシャの実像が垣間見える手紙

では実際のガラシャはどんな人物だったのでしょうか?
ゆかりの品のなかでも、特に信ぴょう性が高いとされるのが、ガラシャが残した「手紙(消息)」です。
現在確認されている全17通のうち、本展ではガラシャの自筆とみられる手紙も展示されています。
甥に宛てた、ガラシャ自筆とみられる手紙「細川ガラシャ消...

甥に宛てた、ガラシャ自筆とみられる手紙「細川ガラシャ消息」(熊本県立美術館所蔵)

via 撮影:ユカリノ編集部
ガラシャの手紙は大半が小侍従宛てのもので、閉鎖的な生活のなか、彼女にとって侍女たちの存在意義が大きかったことがうかがえます。

なかには、洗礼名である「からしや(ガラシャ)」と署名された夫・忠興宛ての手紙も。内容は家中の息災を伝えるものですが、他の手紙では忠興のことを『ゑもしさま』と記すことが多いなか、この手紙では『たゝおき殿』とあります。はたして何らかの意図があったのでしょうか・・・。理由が分かれば、ガラシャの性格もみえてきそうな貴重な資料です。

ガラシャと忠興の夫婦関係が垣間見れるゆかりの品

「露払」(永青文庫所蔵)

「露払」(永青文庫所蔵)

via 撮影:ユカリノ編集部
夫・忠興との夫婦仲も気になるところですが、本展にはガラシャが忠興のために仕立てた「露払」が展示されています。「露払」という名称から、おそらく雨具とされるもので、茶色の染料は防水効果のある柿渋の可能性が高いとのこと。
高価なものではありませんが、その状態から、夫婦ゆかりの品として大切に伝わってきたことがわかります。

話題の刀剣!細川忠興の愛刀「歌仙兼定」

「刀 銘 濃州関住兼定作」室町時代(16世紀)永青文庫所蔵

「刀 銘 濃州関住兼定作」室町時代(16世紀)永青文庫所蔵

via 撮影:ユカリノ編集部
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