「日本男色史巡り 第10回:宇喜多直家」敵を滅ぼす美少年版ハニートラップ
2018年3月30日 更新

「日本男色史巡り 第10回:宇喜多直家」敵を滅ぼす美少年版ハニートラップ

日本の男色史を、ゆかりの品や場所とともにご紹介する連載『日本男色史巡り』。第10回は、尼子経久・毛利元就と並んで中国三代謀将と呼ばれる宇喜多直家。自身も寵童だったという説がある直家が、男色好きの相手に仕掛けた罠とは!?

黒澤はゆま黒澤はゆま

中国三大謀将の一人、宇喜多直家

宇喜多直家

宇喜多直家

備前国の戦国大名。幼い頃の不幸がのちの悪行の数々に…。
「武士は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候」
越前の名将、朝倉宗滴の言葉が端的に示す通り、戦国時代の武将にとって何より大事なのは、たとえ人でなし、犬畜生と罵られようが勝つことでした。
 
そのためには、信義なんてクソ喰らえ。
親兄弟だろうと敵と認定した相手は、だまして、裏切って、陥れて、滅ぼしてしまうことこそが、武士の本領だったのです。
 
そのため、全国各地で虚々実々の謀略戦が繰り広げられましたが、なかでも中国地方は白昼の合戦より、闇夜の謀略を好む土地柄であったようです。
なかでも中国三大謀将と称される、尼子経久・毛利元就・宇喜多直家の三人は有名で、前回、大内義隆の回でも登場した、尼子経久・毛利元就の二人は、それぞれ「謀聖」「謀神」という異名を世間からもらっています。
尼子経久(右)と毛利元就

尼子経久(右)と毛利元就

出雲国(島根県)の守護代で、周防国(山口県)の戦国大名・大内義興と戦い、尼子氏の領地を広げた尼子経久。毛利元就は、安芸国(広島県)の戦国大名で、尼子氏滅亡後、中国地方の支配者となります。

弟も警戒していた悪魔のような男・直家

今回の主人公、宇喜多直家は元就や経久のようなかっこいい二つ名こそありませんが、この二人に勝るとも劣らぬ神をもだます知略と、残忍な心の持ち主でした。
 ただ、他の二人が私生活においては寛仁・大度な長者だったのに対し、直家は敵味方関係なく、全方面に悪魔のような存在でした。
 
彼に生涯忠実に使えた弟の忠家でさえ、兄の死後、「兄上は心の底がまったく分からない人で、御前に呼ばれたときはいつも生きた心地がしなかった。兄とは会うときは、常に鎖帷子を仕込んでいたものだ」と述懐しているほどです。
宇喜多忠家

宇喜多忠家

兄の直家を古くから補佐していたという忠家。また兄の死後は甥である秀家の補佐に務めます。
そのため、もし直家にあえて経久や元就のような異名をつけるとしたら「謀魔」といったところになるでしょうか。しかし、この「謀魔」、『古今武家盛衰記』に拠れば「生得美童」とあり、内面に反して(いや比例して?)、大変な美男子だったようです。

彼が世に出るきっかけとなったのも、主君、浦上宗景がその美貌を多として、寵愛したためでした。
そして、直家は男色を出世の糸がかりとするだけでなく、敵を陥れる罠としても男色を利用するのです。

名将だった祖父を謀略によって殺される

宇喜多直家は、享禄2年(1529)、備前の国の武将、宇喜多興家の子として生を受けました。
 
同年、他の三大謀将の二人は、尼子経久がすでに老人の71歳、毛利元就は男盛りの31歳なので、大分年が離れていますね。他の有名大名たちと比べると、大永元年(1521)生まれの武田信玄の8つ下、享禄3年(1530)生まれの上杉謙信の一つ上、天文3年(1534)生まれの織田信長の5つ上です。
 
要は戦国期でも、一番華やかだった元亀天正の天下取り合戦の主役たちと同世代ということになります。 
出生地は史料がなく、定かなことは分かっていませんが、一説には、当時宇喜多氏が城番をつとめていた邑久郡豊原荘の砥石城とされ、近くには宇喜多直家生誕の碑もあります。 

6歳にして、家が没落

その頃の宇喜多氏は、父の興家は暗愚だったものの、祖父の能家が傑物で、備前の戦国大名、浦上氏の重臣として重きを為していました。
浦上氏はもともとは備前国守護赤松氏の家臣で、守護代をつとめていました。それが応仁の乱以来の乱世に乗じ、主家から実権を奪い取ったのですね。
 
宇喜多能家は、浦上氏が赤松氏からの自立を目指す戦いのなかで大活躍。特に永正17年(1520)に、赤松義村が大軍を差し向けた際は、周囲が次々に敵方に寝返る中、孤軍奮闘、ゲリラ戦を仕掛けて打ち破っています。
宇喜多能家

宇喜多能家

直家の祖父。智勇に優れた人物で、則宗からの信任が厚かったのですが…。
浦上家が戦国大名として、備前・播磨(兵庫県)・美作(岡山県北東部)に君臨するには、能家の働きが大きかったのですが、浦上氏は能家の実力が怖くなったようです。天文3年(1534)、主家の指図を受けた、宇喜多と双璧をなす重臣、島村盛実に砥石城を奇襲され、能家は自害に追い込まれました。

幸い興家とその妻は、息子の直家を連れて落ちのびることが出来ましたが、これで備前の名族、宇喜多氏は完全に没落しました。

この時、直家はわずか6歳。
彼の履歴は、裏切られることからはじまりました。
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黒澤はゆま

黒澤はゆま

宮崎生まれ。大阪在住。2013年に歴史小説『劉邦の宦官』でデビュー。他著作に真田昌幸の少年時代を描いた『九度山秘録』、世界史・日本史上の少年愛を紹介した『なぜ闘う男は少年が好きなのか』がある。愛するものはお酒と路地の猫。 公式

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