日本の「パン祖」江川英龍が焼いたパンとは?パンを愛した偉人たち
2018年4月12日 更新

日本の「パン祖」江川英龍が焼いたパンとは?パンを愛した偉人たち

天保13年(1842)4月12日、あるパンが焼きあげられました。「兵糧パン」と呼ばれたそのパンこそ、日本人が初めて作ったパンだったのです。世界遺産・韮山反射炉の製造で知られる幕末の才人・江川英龍は、パンの製造にも目をつけていました。どんな経緯で生まれたのか、またその他の偉人とパンのエピソードもご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

パンを初めて作った!?「パン祖」江川英龍

江川英龍

江川英龍

江川英龍の別名「太郎左衛門」は、当主が代々名乗る名前でした。
江川英龍(太郎左衛門)は、伊豆国田方郡韮山(静岡県伊豆の国市韮山町)の代官で、「世直し江川大明神」と領民に慕われた名代官でした。

しかし、伊豆・相模沿岸に外国船が出現するようになり、アヘン戦争で清がイギリスに敗れると、江川はこの地の代官として海防に強い関心を抱くようになります。

そこで彼は、西洋流の技術を取り入れることを幕府に進言し、品川台場の築造の他、大砲鋳造のため韮山反射炉の建設にも取り掛かったのでした。
そして地方代官としては異例の大出世を果たし、勘定吟味役にまで昇進したのです。

現存する反射炉では日本最古の韮山反射炉(静岡県伊豆の国市)

韮山反射炉

韮山反射炉

炉の外側は当地産出の「伊豆石」、内側は伊豆天城山産出の土で焼かれたレンガでできています。
via 写真提供:静岡県
世界遺産にも登録された韮山反射炉は、江川の進言によって造られました。
しかし、彼自身はその完成を見ずに病死しています。その事業を引き継いで完成させたのは、息子の英敏でした。

炉本体と煙突が完全に残る国内唯一の反射炉は、高さ約16mの4つの炉で構成されています。
アーチ状の天井に炎と熱を反射させて鉄に集め、その熱で溶かしたことから「反射炉」と名付けられました。

パンに着目、「兵糧パン」を作る

江川邸(静岡県伊豆の国市)

江川邸(静岡県伊豆の国市)

江戸時代、代官を務めた江川家の邸宅。主屋・蔵・門・塀などの建物や、保有する古文書などの資料は、国の重要文化財になっています。大河ドラマ『篤姫』など、時代劇のロケ地に使われることも多いとか。
via 写真提供:静岡県
外国との抗争もちらつくようになる中、江川は兵糧の重要さを感じ、保存のきくパンに着目しました。
自身の師匠の従者に長崎で製パンを学んだ者がいたため、さっそく呼び寄せて焼き上げたのが「兵糧パン」であり、日本のパン第一号だったのです。
その後、薩摩や水戸でもパンは作られるようになり、後に江川は「パン祖」として、尊崇されることとなったのでした。
江川邸のパン焼き釜

江川邸のパン焼き釜

当時の兵糧パンを再現した「パン祖のパン」

当時の兵糧パンを再現した「パン祖のパン」

食感は乾パンに近いとか・・・飲み物必須!?
via 写真提供:伊豆の国市観光協会
江川が生み出した日本初のパンは、とても堅かったようです。
韮山反射炉や市内では、当時の兵糧パンを再現した「パン祖のパン」が販売されています。
原材料は小麦粉(全粒粉)・塩・米糀(こうじ)のみ。ぜひ、当時の堅さを味わってみてください。
製造元「蔵屋鳴沢」では通販もできます

製造元「蔵屋鳴沢」では通販もできます

5個入り600円(蔵屋鳴沢)

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