平安美女・小野小町の美容食は『熊の掌』だった!【偉人が愛した肉料理:第5回】
2018年8月29日 更新

平安美女・小野小町の美容食は『熊の掌』だった!【偉人が愛した肉料理:第5回】

毎月29日の「肉の日」にちなみ、食文化史研究家の永山久夫さんが偉人の愛した肉料理を紹介する連載。第5回は小野小町が食べていたといわれる『熊の掌』です。コラーゲン豊富で女性におすすめという熊の掌、小町の美の秘訣はその食べ方にあった?

永山久夫永山久夫

花の色は移りにけりないたづらに

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「すれ違うだけでもよいから、出会ってみたい」。都の貴公子たちが、胸をときめかせた美しい女性こそ、小野小町だった。

小町と運良く出会えたとしても、じっと見つめられれば、たいがいの男たちはめまいがして震えが止まらなかったと伝えられている。

小町は、平安前期に活躍した女流歌人で、何と言っても有名なのは『古今和歌集』などでよく知られたこの作品。
花の色は移りにけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに
via 『古今和歌集』
「花の色も、私の美しさも、もう消え失せてしまいました。物思いにふけりながら眺めているうちに、すっかり衰えてしまいました。」という意であるが、同時に、人生の時間の経過の速さへの嘆きにもなっている。

美容食は『熊の掌』

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実は、小町は女盛りを伸ばそうとして、大変努力していたというエピソードがある。
平安後期の著作にみられる『玉造小町子壮衰書』のヒロイン・玉造小町は、小町をモデルにしたといわれ、若いときにさる貴族に愛され栄華を極めたという物語。

玉造小町の食膳は山海の珍味であふれていたが、どれも美容効果のあるものばかり。
主菜の「熊の掌」は、単に美味なだけではなく、美容効果のあるコラーゲンがたっぷりなのだ。

コラーゲンはタンパク質の一種で、老化を防ぎ、肌などの若さを維持するには重要な成分。
歳をとるにつれて肌が衰えシワが増えるのは、コラーゲンの生成能力が低下するのが原因のひとつ。したがって、歳をとればとるほど、コラーゲン成分の多いものをとることが、若さを保つ長寿法にもつながるのだ。

老化を防ぎ美肌作用のビタミンC

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美女にとって、何よりも恐ろしいのは老醜につきる。どうすれば美しい表情を保ち、若さを維持しながら加齢を迎えられるか。

本能的に着目したのがコラーゲンたっぷりの熊の掌だったのではないだろうか。他にも献立には、サケやコイ、ウナギ、それにアワビなど、やはりコラーゲン含有量の多い料理が並べられている。

注目したいのは、果物も多い点。
玉造小町が好んだフルーツとして、ウリ、ナシ、アンズ、カキ、ユズなどがあげられており、ビタミンCを含んだものが多い。
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コラーゲン効果を高めてくれるビタミンCは、細胞の酸化、つまり老化を防ぐ作用もあり、熊の掌とフルーツの組み合わせは小町の美容食であると同時に長寿食でもあった。

やがて、都の生活に空しさを覚えた小町は、故郷といわれる秋田に帰る。そこを安住の地とし、心も満たされ、微笑を浮かべながら九十二歳で没したと伝えられている。

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永山久夫

永山久夫

食文化史研究家。食文化史研究所、綜合長寿食研究所所長。元西武文理大学客員教授。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や伝統的な和食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年研究している。著書に『永山豆腐店 豆腐をどーぞ』『和食の起源』『日本人は何を食べてきたのか』『100歳食入門』『長寿食365日』『なぜ和食は世界一なのか』など多数。 公式

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