仕掛け人が語る!福岡市博物館『侍展』の舞台裏
2019年2月25日 更新

仕掛け人が語る!福岡市博物館『侍展』の舞台裏

福岡市博物館で2019年9月より開催される特別展『侍~もののふの美の系譜~』。本展は、約600年間にわたる甲冑・刀剣等の優品約150点を一堂に展示、そのうち6割が国宝・重要文化財という豪華な大展覧会として話題を呼んでいます。秋の開催に先駆け、特別展を企画した仕掛け人にその見どころや舞台裏を伺ってみました。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

注目の「侍展」仕掛け人が語る舞台裏

北は東北、南は九州まで、全国各地の有名神社や旧大名家、博物館や美術館などからあらゆる名宝を集めた福岡市博物館の特別展『侍~もののふの美の系譜~』、通称『侍展』。その企画者が、同館で学芸課主査を務める堀本一繁さんです。
「侍展」を担当している福岡市博物館学芸課主査・堀本一繁さん

「侍展」を担当している福岡市博物館学芸課主査・堀本一繁さん

美術品としてではなく、実戦のなかで進化してきた歴史的変遷を知ってほしい

――かなり豪華な展覧会となりそうな『侍展』ですが、開催のきっかけは何だったのでしょうか?

堀本氏(以下、「」)「刀剣や甲冑の展覧会は、刀剣だけ、甲冑だけを美術的な視点で紹介することが多いですよね。しかし、刀剣も甲冑も、戦い方の変化に応じて共に変化してきたものです。合戦をとおしてどのように進化してきたかを歴史的視点で紹介したいと思ったのがきっかけです。

だから今回展示する刀剣や甲冑は、武士が興った平安半ばから関ヶ原の戦いまで約600年間のものとしています。江戸時代に入り戦いがなくなると、見栄えを良くするため飾り立てられていくので、『侍展』ではあくまで実戦で使うための武具に限定。時代の変遷がわかるように、展示する武具を選びました」

大鎧から腹巻・胴丸…甲冑の変遷

[重要文化財] 紺糸威胴丸 兜・大袖・杏葉付【後村上天...

[重要文化財] 紺糸威胴丸 兜・大袖・杏葉付【後村上天皇から南部政長へ】(林原美術館蔵)

via 画像提供:福岡市博物館
「今回制作した3種類のチラシでも、その変遷が分かるようにしています。
例えばピンクのチラシに掲載している甲冑は、本展でも目玉となる「国宝 小桜韋黄返威鎧 兜・大袖付」(嚴島神社所蔵)という大鎧。
平安~鎌倉時代に着用された大鎧は、当時主流だった“馬に乗り矢を射って戦う”スタイルに合わせたものです。横向きや振り返って矢を放つため、体を回転しやすいようにゆとりがあります。四角い箱を肩からぶらぶら吊っているような感じですね。

しかし、南北朝時代になり立って戦うのが主流になると、大鎧では戦いにくい。すると徒立ちの従者が使っていたような、軽量化されて体にフィットする腹巻や胴丸の形が主流になっていきます。そして刀で斬られないように、隙間を埋めるパーツが付加されていきます。

南北朝時代には弓矢に代わって刀で相手にダメージを与えようとするから、1mを超すような大太刀がでてくる。斬るものと斬られるものをあわせて見ると、理に適った変化をしていることが分かります」
同館「黒田家名宝展示」コーナーに展示されている大身鎗 ...

同館「黒田家名宝展示」コーナーに展示されている大身鎗 名物「日本号」と国宝 刀 名物「圧切長谷部」

via 撮影:ユカリノ編集部

時代や地域性の違いにも注目

――今回、東北から九州まで、幅広いエリアから名品が集められていますが、地域性の違いなども表れているのでしょうか?

「戦国時代、伊達政宗が愛用したタイプの甲冑なんかは分かりやすいですね。基本的には時代とともに軽量化していきますが、有名な“雪下胴”は鉄板だからとても重い。ただ量産でき、コンパクトに収納できるんです。それが伊達家中で流行り、東北では重い甲冑に慣れていたから、秀吉から拝領した軽量化した小札仕立ての甲冑は実戦向きじゃないと勘違いしたようです。」
――確かに、甲冑などは運ぶのが大変そうですよね。展示交渉にあたり、やはりそのあたりもネックになるのでしょうか?

「各パーツに分解して梱包するので、1領で5~6箱になります。古い甲冑はほとんど国宝か重要文化財に指定され、それぞれの宝物として伝来していますから、やはり大変です。1回断られたからといって諦めません。何度も交渉します。」

刀剣ファン垂涎の名刀ラインナップ

[国宝] 太刀 銘 筑州住左【名物 江雪左文字】(ふく...

[国宝] 太刀 銘 筑州住左【名物 江雪左文字】(ふくやま美術館蔵・小松コレクション)

via 画像提供:福岡市博物館
『侍展』では刀剣ファン必見の名刀も揃い踏み。
同館が所蔵する圧切長谷部や日光一文字のほか、福岡にゆかりがある大典太や江雪左文字、義元左文字といった刀剣も展示されます。
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