新設!「高輪ゲートウェイ駅」周辺の歴史と背景を探る【古地図と巡る江戸街並み探訪:第6回】
2018年12月25日 更新

新設!「高輪ゲートウェイ駅」周辺の歴史と背景を探る【古地図と巡る江戸街並み探訪:第6回】

JR山手線の田町駅から品川駅の間に新設される駅が「高輪ゲートウェイ駅」とされることが発表され、色々と話題になっています。公募では下位にあった候補でしたが、「高輪」「芝浦」「芝浜」と言った歴史的名称を抑えて、一躍の採用。「ゲートウェイ」とは「玄関口」の意味。今回は、その背景や周辺の歴史を、古地図と今後の都市構想から探ってみます。

岡田英之岡田英之

古地図片手に、田町駅北側から「高輪ゲートウェイ駅」を目指す

江戸時代末期の古地図と、現代地図とを見比べてみると、ずいぶんと海岸線の形が変わっているのがわかります。埋め立てが進み、陸地がせり出しています。
江戸時代末期の切絵図、尾張屋金隣堂の「芝高輪絵図」

江戸時代末期の切絵図、尾張屋金隣堂の「芝高輪絵図」

via 国立国会図書館デジタルライブラリー
現代の周辺地図

現代の周辺地図

via 国土地理院 地理院地図
それぞれ、赤丸が高輪ゲートウェイ駅建設予定地、青矢印が東海道、緑矢印が古川(金杉川)を指していますので、比較のご参考にして下さい。
なお、この古地図では、武家屋敷が白抜き、寺社仏閣が赤、町人の町屋が灰色で塗り分けられています。

埋め立て、開発の進む東京湾の要所

江戸時代には、ちょうど鉄道が通っている辺りはもう海になり、砂浜などが広がっていました。当時はこの一帯を、「高輪」、「芝浦」、「芝浜」などと呼んでいました。
今回は、散策している気分で、田町駅の北側から「高輪ゲートウェイ駅」方面に、南下してみましょう。
江戸時代に海岸近くにあった寺を二か所、訪問してみました。日蓮宗の松流山正傳寺と、徳聚山圓珠寺です。
松流山正傳寺

松流山正傳寺

入口から本堂を見ています。
via 岡田英之
松流山正傳寺の毘沙門天の祀られているお堂

松流山正傳寺の毘沙門天の祀られているお堂

古地図に「毘沙門天」とあるのは、こちらのお堂を指しています。
毘沙門天は寅年、寅の日、寅の刻に出現したとの伝説から、護っているのは、獅子や狛犬ではなく、「狛寅」。
因みに、平成31(2019)年の1月5日の寅の日には、御開帳があるとご住職。
via 岡田英之
徳聚山圓珠寺の門から境内を見ています

徳聚山圓珠寺の門から境内を見ています

なぜか古地図では、漢字表記が異なっています。
via 岡田英之
本堂

本堂

こちらのご本尊は、何と神社のお稲荷さんの神(が、仏教で仏になった方)。神仏習合で、明治時代を越えて祀られています。
入口には、屋根にあったと思われる狐の瓦があります。
via 岡田英之
江戸切絵図「芝高輪絵図」の北東部分を拡大した図

江戸切絵図「芝高輪絵図」の北東部分を拡大した図

古地図に記した赤矢印が正傳寺と圓珠寺です。圓珠寺はなぜか漢字表記が異なります。
青矢印が西郷隆盛の活躍した薩摩藩島津家屋敷。緑矢印は現在、若松屋・東京港醸造のある場所。
どちらも17世紀すぐに創建され、江戸時代の古地図にあり、更には、素敵なご住職に美しい御朱印をいただけると聞いて伺いましたが、ビル群の中で静謐な素敵な境内地をお持ちでした。

特に圓珠寺は、江戸後期に入り、身延山久遠寺から日蓮上人像が出開帳(お像を運び入れて開帳と法要を行うもの)が行われ、大変に賑わったそうです。
北側にかかる金杉橋を描いた、安藤広重の浮世絵「金杉橋芝浦」にその賑わいが見られます。
安藤広重「金杉橋芝浦」

安藤広重「金杉橋芝浦」

金杉橋から見たこの辺り芝浦の海岸の景色。
圓珠寺は日蓮宗の寺院で、行列の日蓮宗ののぼりなどが関連を表しています。
via 国立国会図書館デジタルライブラリー
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岡田英之

岡田英之

おかだひでゆき。1977年、神奈川県生まれ。株式会社歩き旅応援舎での古地図散歩ガイドの後、SNSを活用した歴史散策、博物館散歩、横浜や鎌倉散策といった街歩きなどのガイドを務める。特に、歴史ある「場所」「モノ」に対する、専門用語を使わない、わかりやすい解説を得意としている。テレビ朝日系列「羽鳥慎一のモーニングショー」のコーナー、「良純未来図」や、BS朝日の「テイバン・タイムズ」に歴史案内人として複数回出演。著書に『東京街かど タイムトリップ』(河出書房新社)がある。 公式

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