夜戦じゃなかった!?日本三大奇襲「河越夜戦」の激戦地・東明寺
2018年4月20日 更新

夜戦じゃなかった!?日本三大奇襲「河越夜戦」の激戦地・東明寺

「小江戸」と呼ばれ、情緒あふれる城下町の雰囲気が今も残る埼玉県川越市。かつてこの地域の覇権をめぐり、激戦が繰り広げられました。4度に渡る「河越城の戦い」のうち、北条氏康らが大逆転勝利で討ち破った「河越夜戦」は、日本三大奇襲のひとつに数えられています。戦いの模様を戦場となった史跡とともにご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

関東の覇権をめぐる古河公方&関東管領vs.北条氏

北条早雲

北条早雲

北条氏の祖。2019年は没後500年を迎えます。
室町時代末期より関東地方では、かつて関東を統治していた鎌倉公方の流れをくむ古河公方の足利氏と、鎌倉公方の執事として関東の政治を総管した関東管領の上杉氏を中心に、激しい覇権争いが繰り広げられていました。
その間隙を縫って勢力を拡大していったのが、戦国大名の先駆けである北条早雲を始祖とする北条氏です。

特に2代当主・氏綱は、上杉氏が、本家筋の山内上杉と庶家の扇谷上杉とで内紛を起こし混乱するなか、扇谷上杉氏の居城で、武蔵国の最重要拠点とされた河越城を攻略。これに脅威を覚えた両上杉氏と、古河公方の足利晴氏が手を結んだことが、戦いの発端となりました。

そして、天文14年(1545)9月、古河公方の足利晴氏、山内上杉憲政、扇谷上杉朝定らは、8万余騎といわれる大連合軍を組織し、河越城を包囲するに至ります。

夜戦じゃなかった!?

北条氏康

北条氏康

北条氏3代当主。河越城の戦いでの勝利により、関東一帯の支配を確立します。
このとき河越城を守っていたのは、北条軍最強とうたわれた北条綱成。しかしその兵力は3000余騎と、圧倒的に劣勢だったことから、ひたすら籠城するほかありませんでした。

天文15年(1546)4月には、北条氏の3代当主・氏康が8000騎の援軍を率いて到着しますが、それでも兵力差は約8倍と不利な状況は変わらず。そこで氏康は、策略を用いて連合軍を油断させると、ついに4月20日子の刻(午前0~2時頃)、夜襲を仕かけることで、これを撃破することに成功しました。

この戦いは「河越夜戦」とも呼ばれますが、近年の研究では、このような夜戦は行われず、後世の軍記物による創作であることが推定されています。
ただし、連合軍側が北条軍より数的優位であったこと、大規模な戦闘があったことについては、史料などから確認されており、氏康らの戦いが高く評価されていることに変わりありません。

「河越夜戦」の戦場となった東明寺(埼玉県川越市)

東明寺にある川越夜戦跡

東明寺にある川越夜戦跡

この戦いにおいて最大の激戦地となったのが、城の北側にあった東明寺です。
この地域には当時、広大な寺領が広がっていましたが、その周辺からは後年、おびただしい数の人骨が出土しています。勝利した北条軍の死傷者が若干名だったのに対し、大敗した連合軍の死傷者は1万3000余名といわれ、戦いの凄まじさを物語っています。

東明寺の境内には、「川越夜戦跡」の碑が建てられており、戦いに破れた将兵の遺骸を納めた富士塚も残っています。

貴重な遺構が残る川越城(埼玉県川越市)

川越城の本丸御殿。本丸御殿大広間が現存しているのは、他...

川越城の本丸御殿。本丸御殿大広間が現存しているのは、他には高知城のみで、大変貴重な遺構です。

via 写真提供:小江戸川越観光協会
河越城(川越城)はその後、天正18年(1590)に起こった小田原の役を経て、徳川氏の城となりますが、江戸時代以降は江戸防衛の重要拠点として、代々、譜代大名が配置されました。

現在、城址の大部分は市街地となっていますが、本丸御殿の一部(大広間と玄関)が現存しており、往時をしのばせてくれます。
川越城 富士見櫓

川越城 富士見櫓

河越城(川越城)は室町時代、古河公方の足利氏に対抗する上杉氏の本拠地として、扇谷上杉氏の家宰の太田道真、太田道灌父子が築城を命じられ、自ら城主となりました。
江戸時代に入っても天守は建てられず、この富士見櫓が代わりになっていました。
via 写真提供:小江戸川越観光協会
三芳野神社

三芳野神社

本丸御殿に隣接する神社。この地には天神曲輪があり、また童歌「通りゃんせ」はこの神社の参道が舞台といわれています。
戦国時代の戦場というと、静岡より西のイメージがありますが、関東地方でもこのような激しい合戦が繰り広げられていました。
蔵造りの街並みが残る「小江戸」川越散策とあわせて、その礎となった合戦の地にも足を運んでみてはいかがでしょうか?

(スノハラケンジ)
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