【古地図で巡るゆかりの地】『鬼平犯科帳』長谷川平蔵の菩提寺のあった四谷
2018年2月21日 更新

【古地図で巡るゆかりの地】『鬼平犯科帳』長谷川平蔵の菩提寺のあった四谷

時代劇でもお馴染み、池波正太郎の傑作『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵は、「火付盗賊改役」として活躍した長谷川宣以(のぶため)という実在の人物がモデルになっています。今回は、歴史をテーマにした街歩きガイドを務める岡田英之さんが、四谷(東京都新宿区)の寺町界隈を古地図で巡りながら、宣以の生涯とゆかりの地をご案内します。

岡田英之岡田英之

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「平蔵」のモデル・長谷川宣以とは?

江戸時代、「火付盗賊改役」として活躍した長谷川平蔵の「平蔵」はいわゆる通称で、名は宣以(のぶため)といいました。延享2年(1745)、400石の旗本・長谷川宣雄(のぶお)の長男として生まれています。

宣以は、西之丸御書院番(将軍の子の警護役)などを経て、西之丸御書院番御徒頭(将軍の子の警護、特に歩兵部隊長)、御先手組弓頭(先陣をきる部隊で弓兵部隊長)と出世します。

実は宣以の父も、長谷川「平蔵」として火付盗賊改役となり、活躍していました。
さらに宣以の子の宣義(のぶよし)も平蔵を名乗っていまして、書院番などを歴任し御先手弓頭になっています。なので、長谷川平蔵は3代にわたる名前なんですね。
決定版 鬼平犯科帳1

決定版 鬼平犯科帳1

池波正太郎著(文春文庫)

盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられた「鬼平」こと火付盗賊改方長官・長谷川平蔵が主人公の時代小説。映画、テレビドラマにもなり人気を博し、現在もさいとう・たかをさんが漫画を連載中です。

若い頃は遊び人だった宣以

しかし宣以は、若い頃はかなりの遊び人、いわゆる悪(ワル)であった様で、その評判は江戸でも知られたものでした。しかしそれが後の職務に大きな影響を及ぼしたと考えられます。

父宣雄の死去に伴い、30歳で家督を継いだ宣以でしたが、「通」の更に上をいく「大通」と呼ばれた独特のファッションで遊廓通いをするなど、いわゆる「かぶき者」として知られていました。ここから出世を重ねていくこととなります。
御先手組弓頭と出世した一方、世は泰平の時代になっていたので、平時は町奉行の手伝いや火消などで働くことも多くあったようです。ここで遊び人時代の人脈や人望、知名度が活きたのかも知れません。

それが功を奏してか、天明7年(1787)宣以が42歳の時、重罪を中心に取り締まる火付盗賊改役を兼務することとなりました。特にこの役職は前述の様な宣以にとっては天職であり、適任であったのです。
長谷川平蔵・遠山金四郎住居跡(東京都墨田区)

長谷川平蔵・遠山金四郎住居跡(東京都墨田区)

明和元年(1764)父の屋敷替えにより、築地から現在の都営地下鉄新宿線菊川駅の近くに移り住みます。

活躍するも出世はならず…

ただ、その経歴や性質ではさすがに現場では活躍できても、それ以上に出世することは難しかったようです。江戸を恐れさせた犯罪集団を壊滅させたり、凶悪犯を捕えて迅速に処刑したりと、江戸に名を轟かせることになりましたが、上役からの評判はかんばしくなかったとか。

特に、宣以の功績として知られる石川島(現在の東京都中央区佃二丁目付近)の人足寄場の設置に際しては、それを認めた時の老中、松平定信も予算を余り割かず、何と幕府からの資金を一か八かの相場である「投機」に出して予算を工面しています。また、時にその様なやり方をする宣以に対して、同僚たちからの視線も冷たいものがありました。
松平定信

松平定信

田沼意次の失脚後、老中首座に。祖父である8代将軍・吉宗の享保の改革を手本に、寛政の改革を行います。

宣以の人情の結晶・人足寄場

佐渡の金山などで働かされるという半ば刑罰的な施設はあったものの、犯罪者の更生施設がなかった時代。犯罪者の自立を目的とした人足寄場を設置したことは、宣以の人情味が結晶しているように思えますし、とても評価されるべきものだと感じます。

そして、寛政7年(1795)に亡くなる直前まで火付盗賊改役として勤めあげ、その仕事ぶりから江戸の人々の喝さいを受けました。『鬼平犯科帳』が時代小説として確固たる地位を築いたのも、その考証がしっかりしていることはもちろんですが、宣以の活躍と人柄ゆえのことだったのでしょう。
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この記事のキュレーター

岡田英之

岡田英之

おかだひでゆき。1977年、神奈川県生まれ。株式会社歩き旅応援舎での古地図散歩や、SNSを活用した博物館散歩、鎌倉散歩といった街歩きなどのガイドを務める。特に、歴史ある「場所」「モノ」に対する、専門用語を使わない、わかりやすい解説を得意としている。テレビ朝日系列「羽鳥慎一のモーニングショー」のコーナー、「良純未来図」や、BS朝日の「テイバン・タイムズ」に歴史案内人として複数回出演。著書に『東京街かど タイムトリップ』(河出書房新社)がある。 公式

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