【生誕地・長野県松代にて祭神として祀られた】幕末の天才兵学者・佐久間象山
2018年3月22日 更新

【生誕地・長野県松代にて祭神として祀られた】幕末の天才兵学者・佐久間象山

幕末を代表する兵学者であり、勝海舟、坂本龍馬などに多大な影響を与えた佐久間象山。「天才」とその才能を称賛されたにもかかわらず、暗殺され、佐久間家は断絶。しかし後にその功績が評価されるとともに、生誕地・長野県松代には彼を祭神として祀る象山神社が建てられました。天才ゆえにトラブルの絶えなかった象山の生涯と、象山神社をご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

出身は真田家が統治する松代藩

佐久間象山

佐久間象山

一般的には「しょうざん」、地元の長野県では「ぞうざん」と呼ばれていました。
象山が生まれたのは文化8年(1811)2月28日。あの真田幸村の兄として知られる信之が元和8年(1622)に藩主となって以来、真田家による統治が続いた松代藩(現在の長野県松代町)の出身です。

幼少より神童の誉れ高く、その才能は藩内の誰からも認められていましたが、必ずしも評判は良くありませんでした。

不評を買う一番の理由となったのが、その性格です。考え方が偏狭で、異常なまでに自尊心が強かったことから、たとえ藩主の命令であっても、おとなしく従うことはありませんでした。

たとえば8代藩主・幸貫により、世子の教育係に抜擢されますが、わずか2カ月で辞任。その後、名簿の序列をめぐって争いを起こし、4カ月の閉門を命じられるなど、トラブルメーカーとして有名だったのです。
真田幸貫

真田幸貫

松代藩の8代藩主。徳川吉宗の曾孫にあたります。老中として天保の改革の一翼を担ったほか、藩政改革にも多くの成果を上げました。

天才だけどトラブル続き

しかし、そうした性格難を補ってもあり余るほどに、象山は素晴らしい才能の持ち主でした。

幸貫もその才能を買っており、天保13年(1842)、幸貫が海防掛老中になると、その顧問に抜擢。このとき象山が提出した、海防の重要性を説く意見書『海防八策』は高く評価され、世にその名を知られるにいたりました。

独学で西洋砲術を習得すると、嘉永元年(1848)には洋書を参考に、日本人ではじめて大砲を鋳造。のちに西洋砲術塾を開き、勝海舟、吉田松陰、坂本龍馬といった幕末を代表する志士たちを多く輩出しました。

その一方で、大砲の試射を行った際は失敗しても謝らないなど、周囲とのトラブルはおさまりませんでした。
佐久間象山砲術塾跡(東京都江東区)

佐久間象山砲術塾跡(東京都江東区)

象山が西洋砲術塾を開いた信州松代藩下屋敷があった場所。嘉永3年(1850)7月から12月までこの地で砲術を教え、のちに江戸木挽町に私塾を開いています。

ついに、京都で暗殺される

そして、数多のトラブルを引き起こしてなお、その才能を評価された象山の名は、ついに将軍・徳川家茂の知られるところとなります。

元治元年(1864)、上洛中の家茂の召命により上京した象山は、天皇の御座所を幕府の警護の行き届いた彦根に移す計画を進めるため、奔走しますが、この行動が長州藩を中心にした攘夷派を刺激しました。その結果、同年7月11日、京都・木屋町の高瀬川沿いで刺客の襲撃を受け、暗殺されてしまいました。
佐久間象山遭難之碑(京都府京都市)

佐久間象山遭難之碑(京都府京都市)

象山の暗殺現場に立てられた碑。命を狙われているにも関わらず、供を連れていなかったそうです。

祭神として祀られた象山神社(長野県長野市)

象山神社にある佐久間象山の銅像

象山神社にある佐久間象山の銅像

象山の死後、佐久間家は断絶し、屋敷も取り壊されてしまいます。
しかし明治になると、彼の輩出した人物たちが幕府を倒し、新しい時代へのきっかけを作ったことが評価され、福沢諭吉が慶應義塾を創設する際にも影響をもたらしました。

そして大正2年(1913)、象山の殉難五十年祭を機に、松代町出身の大審院長を中心に象山を祀る神社の建立が計画され、昭和13年(1938)、跡地に象山(ぞうざん)神社が建てられたのです。

神社内には佐久間象山生誕地のほか、象山が幕末の志士たちと国家の時勢を論じたという「高義亭」や、暗殺されるまで住んでいた京都の邸宅「煙雨亭」が移築され、その偉業を後世に伝えています。
象山神社

象山神社

敷地内にある象山記念館には、象山が製作した電気治療機をはじめとする科学に関する資料や、政治に関して述べた記録類、自筆の墨跡などが展示されています。
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