第15回:日本警察の父・川路利良ゆかりの品とその軌跡【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】
2018年6月25日 更新

第15回:日本警察の父・川路利良ゆかりの品とその軌跡【小栗さくらがゆく!幕末維新のみち】

歴史タレント・小栗さくらが、幕末維新ゆかりの場所を旅する連載。第15回は、現在の警視総監にあたる初代大警視・川路利良ゆかりの地。川路ゆかりの品が多く展示されている東京の警察博物館を中心に、出生地・鹿児島にある銅像まで、その生涯を辿ります。

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明治時代、今の警視総監にあたる初代大警視となった川路利良。薩摩出身の川路は、与力という足軽に近い身分の出身でした。その川路が大出世して大警視になった年齢はなんと40歳!その最年少就任記録はいまだ破られていません。

日本の近代警察を築いた「日本警察の父」川路利良とはどんな人物だったのか、ゆかりの品を交えてご紹介します。

川路利良、伝説の逸話

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「日本警察の父」といわれた川路利良
川路は私情を捨ててでも仕事に徹する人物でしたが、その一方でユニークな逸話を持つ人物としても知られています。
とはいえ、一般的には知名度が高いとは言えない人物ですので、まずはその強烈なエピソードを2つご紹介しましょう。

列車で腹痛事件

「第5回・青山霊園」の記事でも触れましたが、川路は海外の警察制度を視察に行った時、現地の新聞に載る事件を起こしたという逸話があります。

パリへ向かう列車の中でお腹が痛くなってしまった川路。どうしてもトイレまで我慢することができずに、なんと持っていた新聞紙の上で用を足してしまいました。そしてその新聞紙を窓から投げ捨てたのですが、運悪くそれが保線夫に命中!
「日本人が便を投げ捨てた!」と現地の新聞に載ってしまったというこのエピソードは、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」の冒頭で紹介され、一躍有名になってしまいました。
この話は、川路と親しかった山下房親が語ったそうですが、事実かどうかは分かっていないのだとか。

股間に銃撃事件

もう一つはそれよりも前。旧幕府軍と新政府軍が戦った戊辰戦争の時のことです。川路は磐城浅川(福島県/場所は諸説あり)で負傷してしまうのですが、銃撃を受けた場所はなんと股間。その傷によって川路は横浜に運ばれることになってしまいます。
しかし肝が据わっていた川路。「川路は竦み上がっていなかったから大事な場所を守ることができたんだな、あいつすごい!」と感心され、「川路のキン○○」と仲間たちから讃えられたとか。
これ以上詳しい説明は書きにくいので、なんとなくお察しください。
「龍泉遺稿」(警察博物館所蔵)

「龍泉遺稿」(警察博物館所蔵)

武勇伝の多い川路ですが、漢詩を作る趣味もありました。官職を終えたらゆっくり詩を吟味したかったようです。

この中には、西郷隆盛との離別の際に詠んだ詩も収録されています。
via 撮影:ユカリノ編集部

警察制度ができるまで

肝の据わった男・川路が大警視になるまでには、紆余曲折がありました。
徳川幕府が崩壊した明治初年、東京周辺の治安は悪化し、旧町奉行らの取締だけでは人手が足らなくなっていました。はじめは薩摩や長州など有力な藩から兵を出すなどの対応をとったものの、統制がとれずとても対処しきれません。

しかもイギリスやフランスは、自国民を守るためという名目で軍隊を置いていましたから、それらを撤退させるためにも、警察制度を整える必要があったのですね。
イギリス公使ハリー・パークス

イギリス公使ハリー・パークス

パークスは、岩倉具視に、「居留民の安全を保障できるなら撤退する」と言ったとか。

西洋ポリス制度

西洋の警察制度を参考にしていく中で、明治3年、西洋ポリス制度が政府に上申され、「取締(=ポリス)」が誕生します。のちにこれは「ら卒」と改称されて、制服も西洋風のものとなりました。
「禁門の変」や戊辰戦争で活躍した川路は、やがて「ら卒総長」となります。
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小栗さくら

小栗さくら

中学生時代に司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』を読んで以来、歴史に興味を持つ。 駒澤大学歴史学科卒業と同時に博物館学芸員資格を取得。 現在『歴史タレント』として、TVやCMに出演。また、イベント司会、講演会、コラム執筆と幅広く活躍中。 諏訪市公認キャラクター・諏訪姫の声優も務めている。 タレント活動と並行し「さくらゆき」というアーティスト名で歴史をテーマにした楽曲の発信、ライブ等を行っている『歴史系アーティスト』でもある。 公式

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