【 日本一危ない国宝見物!?】断崖絶壁に立つ三徳山三佛寺投入堂(鳥取県)
2017年3月28日 更新

【 日本一危ない国宝見物!?】断崖絶壁に立つ三徳山三佛寺投入堂(鳥取県)

鳥取県にある国宝・三徳山三佛寺投入堂。断崖絶壁に立つ国宝として有名ですが、2015年に「六根清浄と六感治癒~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉」の要素として日本遺産に認定されています。鳥取県中部地震(2016年10月)の影響が残りますが、先日秘仏が850年ぶりに修復し帰山したといううれしいニュースもありました。そんな三徳山三佛寺投入堂の歴史を振り返ってみましょう。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

三徳山の頂に待つ国宝「三徳山三佛寺投入堂」

三徳山三佛寺投入堂(日本旅行協会『山陰地方』昭和13年...

三徳山三佛寺投入堂(日本旅行協会『山陰地方』昭和13年刊より)

鳥取県三朝町にある天台宗の三佛寺は、標高約900mの三徳山を境内とする山岳寺院です。慶雲3(706)年の開山という古い歴史があるのですが、その見どころはなんといっても国宝に指定されている奥の院「投入堂」です。

驚かされるのは、その立地場所が垂直に切り立った断崖絶壁であること。高床式のお堂は崖の岩陰を利用した場所にあり、建物を支える柱は崖の小さなくぼみをわずかな足掛かりにして建てられています。これは「懸造り」と呼ばれる建築様式で、「清水の舞台」で知られる京都の清水寺本堂と同じです。しかし、清水寺の本堂が多くの太い柱で支えられているのとは違い、投入堂はいまにもポキンと折れそうな長く細い柱でかろうじてバランスが保たれています。
現在の投入堂。こう見ると物凄い場所にありますね。

現在の投入堂。こう見ると物凄い場所にありますね。

誰が造ったのかは謎のまま

この投入堂、誰がどのように建築したのかも謎に包まれているのですが、三佛寺の縁起では修験道の開祖とされる役小角(えんのおづの、役行者とも)が、法力を使って奥の院のお堂を手のひらサイズに小さくし、気合と共に岩陰に投げ込んだことから「投入堂」と呼ばれるようになったとされます。

しかし、近年の研究では投入堂は平安時代後期に建築されたことが判明。役小角が歴史に登場するのは飛鳥時代から奈良時代にかけてなので、このエピソードはあくまで伝説の域を出ません。

かつての投入堂は建物全体に朱塗りは施されていたとされますが、長年にわたって風雨にさらされたせいで塗装は剥げ落ち、現在のような姿となりました。それがかえって幽玄な雰囲気を高め、写真家の故土門拳氏をして「日本一の建築物」と言わしめたのです。
前鬼・後鬼を従えた役小角

前鬼・後鬼を従えた役小角

葛飾北斎『北斎漫画』
via 役小角 - Wikipedia

厳しい道のり

しかし、そこへ近づくには修験の場である行者道を通らなくてはなりません。山腹の登山受付所から投入堂までの道のりは約600m、標高差は200mほどで、途中で「文殊堂」「観音堂」などのお堂を巡りながら進むのですが、途中にはむき出しとなった木の根っこが行く手を阻む「カズラ坂」、鎖につかまらなければ上ることのできない「クサリ坂」、そして一歩間違えれば崖から転落するほど狭く険しい尾根の「馬の背」、「牛の背」などの難所が待ち構えています。

仮に投入堂の遥拝所にたどりついても、足場は狭いので油断していると滑落する危険があります。小筆も子ども時代に登山したことがありますが、特に馬の背は目も眩むほど高い場所にあったため足がすくみ、四つん這いになって渡ったことを覚えています。

入山には入念な準備を

実際に登山者が滑落して死亡するケースもあるため、入山前には寺側から服装やシューズなどが山登りに適しているかどうかのチェックを受けます。基本的にスカートは厳禁で、行者道を傷めるためスパイク付シューズも禁止。靴が理由で入山が許可されない人には寺側がわらじ(有料)を用意してくれます。また両手を使える状態が望ましいので、荷物はリュックサックにまとめるよう求められます。まさに「日本一危険な国宝見物」となるわけです。
三徳山三佛寺投入堂と共に日本遺産に指定されている三朝温...

三徳山三佛寺投入堂と共に日本遺産に指定されている三朝温泉にも立ち寄りたいところ。

当然ながら一般の登山者が投入堂に立ち入ることは禁止されていますが、特別の法要があった2007年には60年ぶりに解禁。全国公募で選ばれた3人が腰に命綱を付け、岩にしがみつくように投入堂へ向かっていく様子がメディアを通じて報道されましたが、その姿はまさに命がけでした。

修験道の道場はいずれも険しい場所にあります。現在は、多くが観光地化されて容易にアクセスできるよう整備されていますが、三徳山に残るのは平安時代とほぼ変わらない行者道だとされています。あえて自分の身を危険にさらすことで、生きていることのありがたみが実感することが修行というものなのかもしれませんね。
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