天下を目指した織田信長の家紋「五瓜に唐花紋」【家紋のルーツ:第4回】
2018年8月7日 更新

天下を目指した織田信長の家紋「五瓜に唐花紋」【家紋のルーツ:第4回】

家紋がいつ、どのように生まれ、なぜ使われるようになったのか?そんな家紋のルーツを日本家紋研究会会長の髙澤等さんがゆかりの地とともに紹介する連載。今回は織田信長の家紋「五瓜に唐花紋」です。そのルーツをたどり、織田氏発祥の地を紐解いていくと、意外な場所との関係も…?

髙澤等髙澤等

織田一族が用いた、由緒正しい「五瓜に唐花紋」

日本の歴史上でも圧倒的な存在感を示す織田信長は、現代でもとても人気の高い武将ですね。

信長の家系はそれほど地位の高いものではありませんでした。
尾張半国の守護代清洲織田家の家臣に過ぎない家系から次第に力を付け、祖父信貞の代には津島湊の経済力を背景に、主家であり本家でもある清洲家と比肩するようなりました。
そして信長の代となって一気に飛躍することになるのです。
清洲城の信長像

清洲城の信長像

via 写真提供:髙澤等
一躍戦国の表舞台に現れた織田家は、「五瓜に唐花(ごか・に・からはな)」という木瓜(もっこう)系の家紋を本紋として用いました。
信長は他に揚羽蝶紋、永楽銭、無の字、五三桐、二つ引両なども使っています。
そんな中で本紋として用いた五瓜に唐花紋は、信長の弾正忠(だんじょうのじょう)家だけではなく、他の織田一族も用いた家紋です。
今回はこの五瓜に唐花紋について紹介したいと思います。
提供:髙澤等 (22843)

通称を「織田瓜」という。
via 提供:髙澤等

「五瓜に唐花」って何?

木瓜紋の1つである五瓜に唐花という家紋は、外側に瓜、内側に唐花を描いたもので、元は中国から渡ってきた文様です。
花のように見えますが花ではありません。キュウリの輪切りなどとも云われますが、本当のところは大型の鳥が地上に作った巣で、「窠(か)」と呼びました。
平安時代は貴族が用いる有職文様(ゆうそくもんよう)で、とくに袴の生地の模様として「窠に霰(かにあられ)」という文様が用いられました。
写真提供:髙澤等 (22846)

窠に霰文様の生地
via 写真提供:髙澤等
江戸時代以降、織田家の五瓜に唐花紋は、やや細く描かれたので「織田瓜(おだか・おだうり)」とも称していましたが、実のところはそれほど意識して形を変えてはいなかったようです。
家紋の紋形が精密になるのは江戸時代に入ってからのことですから、信長の時代に描き分けていたとは考えづらいのです。

ちなみに織田信長を祀っている京都の建勲(たけいさお)神社でも、ごく普通の五瓜に唐花紋を用いています。
写真提供:髙澤等 (22848)

建勲神社(京都市北区)にある五瓜に唐花紋は、いたってノーマルな形
via 写真提供:髙澤等
信長が用いた五瓜に唐花紋にはちょっと怖い話があります。
ある庚申の夜、信長は家臣を集めて徹夜で夜話をしていました。その夜話の徒然に、家臣に家紋のいわれを問われた信長は、敵の首級を三方という台に載せたときの血痕だと云ったそうです。しかし驚く家臣たちに、気を良くした信長は「作り話じゃ」と笑ったとか。
もちろんこの話し自体が作り話でしょうが面白い話しです。

また五瓜に唐花は、信長の領内にあった津島神社の神紋を家紋にしたのだとか、逆に織田信長の家紋を津島神社や京都の八坂神社が神紋に用いたなどという伝聞もあります。さらに清洲城内で見た斯波家の家紋を用いたのだという説もあります。
斯波家の家紋というのは納得がいきませんが、確かに津島神社の神紋は、五瓜に唐花紋です。
信長と縁の深い津島神社(愛知県津島市)

信長と縁の深い津島神社(愛知県津島市)

via 写真提供:髙澤等
津島神社の本殿に輝く五瓜に唐花紋

津島神社の本殿に輝く五瓜に唐花紋

via 写真提供:髙澤等
では五瓜に唐花紋にはどのような歴史があるのかを紐解いてみましょう。

「織田瓜」と「五瓜に唐花」の歴史

29 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

髙澤等

髙澤等

埼玉県飯能市生まれ。長年、実父の日本家紋研究会前会長の千鹿野茂とともに全国の家紋蒐集を行う。家紋の使用家や分布などを、統計を用いて研究している。現在、日本家紋研究会会長、家系研究協議会理事、歴史研究家。著書に『苗字から引く家紋の事典』(東京堂出版)、『家紋歳時記』『戦国武将 敗者の子孫たち』(ともに洋泉社)などがある。 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

大坂の陣で信繁は使っていない?真田の「六連銭」本当の意味【家紋のルーツ:第3回】

大坂の陣で信繁は使っていない?真田の「六連銭」本当の意味【家紋のルーツ:第3回】

家紋がいつ、どのように生まれ、なぜ使われるようになったのか?そんな家紋のルーツを日本家紋研究会会長の髙澤等さんがゆかりの地とともに紹介する連載。今回は真田の六連銭です。2016年大河ドラマ『真田丸』で一躍有名となった真田家の家紋は、本来は六連銭、しかも幸村(信繁)は大坂の陣で使っていなかった?気になる六連銭のルーツに迫ります。
信長の采配に武田軍大敗!多くの名将も散った長篠の戦い【足軽さんと巡る!?古戦場レポ:第2回】

信長の采配に武田軍大敗!多くの名将も散った長篠の戦い【足軽さんと巡る!?古戦場レポ:第2回】

歴史ナビゲーターの長谷川ヨシテルさんが古戦場をレポートする連載。第2回は「長篠の戦い」です。1575年6月29日(天正3年5月21日)、織田信長・徳川家康の連合軍と、武田勝頼の軍勢が現在の愛知県新城市近辺で激突。織田軍による鉄砲隊の活躍により、当時最強といわれた武田騎馬隊は大敗。武田軍の名将たち最期の場所など、合戦ゆかりの地をご紹介します。
実は「桔梗紋」じゃなかった?明智光秀の家紋と出生の謎【家紋のルーツ:第2回】

実は「桔梗紋」じゃなかった?明智光秀の家紋と出生の謎【家紋のルーツ:第2回】

家紋がいつ、どのように生まれ、なぜ使われるようになったのか?そんな家紋のルーツを日本家紋研究会会長の髙澤等さんがゆかりの地とともに紹介する連載。今回は明智光秀の桔梗紋です。前半生が謎に包まれた光秀ですが、そもそも桔梗紋じゃなかった?さらに産湯が4カ所もあるなど、光秀の謎と桔梗紋のルーツに迫ります。
越前の大名・朝倉義景と名門の栄華が復元された一乗谷朝倉氏遺跡

越前の大名・朝倉義景と名門の栄華が復元された一乗谷朝倉氏遺跡

室町時代から5代、約100年にわたって越前(福井県)を中心に栄華をきわめた朝倉氏。その城下町である一乗谷のにぎわいは、京のように華やかだったそうです。一時期は明智光秀も仕えたものの、織田信長に滅ぼされてしまった朝倉義景と、朝倉氏の繁栄と文化レベルの高さを偲ばせる一乗谷朝倉氏遺跡についてご紹介します。
本能寺の変の引き金?信長が家康にふるまった安土饗応膳を再現!

本能寺の変の引き金?信長が家康にふるまった安土饗応膳を再現!

織田信長が居城・安土城で徳川家康に振る舞ったといわれる饗応膳「天正十年安土御献立」。安土城の近くにあるホテル「休暇村近江八幡」(滋賀県近江八幡市)ではそれを再現した饗応膳を1日10食限定で提供中です。本能寺の変の引き金?ともいわれる膳にまつわる逸話と再現された「信長饗応膳」をご紹介します。
名古屋おもてなし武将隊に新メンバー、前田利家&陣笠・太助が加入!

名古屋おもてなし武将隊に新メンバー、前田利家&陣笠・太助が加入!

ご当地の歴史と魅力を発信するため活動するおもてなし武将隊。その元祖ともいえる「名古屋おもてなし武将隊」に新メンバーが加入!5月26日(土)に、前田利家と陣笠の太助のお披露目式が行われました。ますますパワーアップする武将隊とともに、6月8日(土)に完成公開される名古屋城本丸御殿もご紹介します。
第1回:桶狭間の戦い【足軽さんと巡る!?古戦場レポ】

第1回:桶狭間の戦い【足軽さんと巡る!?古戦場レポ】

歴史ナビゲーターの長谷川ヨシテルさんが古戦場をレポートする連載がスタート。第1回は「桶狭間の戦い」です。織田信長が今川義元を討ち取り、天下統一への足掛かりとした合戦はどんな場所で行われたのか?信長の足跡を辿りながら、合戦の経緯とゆかりの地をご紹介します。
戦国武将たちも好んで食べた、お茶漬けの原型「湯漬け」

戦国武将たちも好んで食べた、お茶漬けの原型「湯漬け」

ご飯に湯をかける「湯漬け」は、手早く食べられることもあり、戦国武将に好まれていました。大河ドラマ『真田丸』で、北条氏政の汁かけ飯のシーンを覚えている方も多いのではないでしょうか。今回は、武将も好んで食べた「湯漬け」にまつわるエピソードと、その後お茶漬けがどのように誕生したのかをご紹介します。
信長もおもてなしに取り入れた!岐阜・長良川の鵜飼の歴史

信長もおもてなしに取り入れた!岐阜・長良川の鵜飼の歴史

水鳥である鵜(ウ)を使って鮎などを獲る漁法・鵜飼。特に岐阜県長良川の鵜飼は、織田信長や徳川家康にも好まれ、現在は宮内庁式部職である鵜匠により、毎年5月中旬から10月中旬まで年8回、御料鵜飼が行われています。今回は長良川の鵜飼の歴史から、同じ長良川でもタイプの違う岐阜市と関市の鵜飼をご紹介します。
島津氏の家紋「丸に十文字紋」はおまじないだった?【家紋のルーツ:第1回】

島津氏の家紋「丸に十文字紋」はおまじないだった?【家紋のルーツ:第1回】

家紋がいつ、どのように生まれ、なぜ使われるようになったのか?そんな家紋のルーツを日本家紋研究会会長の髙澤等さんがゆかりの地とともに紹介する新連載がスタート。初回は島津氏の家紋「丸に十文字紋」です。その前に使用していたという家紋や「十文字紋」の意外な由来まで、専門家ならではのお話をご紹介します。