実はミステリアスな兼六園?「辰巳用水」を設計した天才・板屋兵四郎
2017年4月5日 更新

実はミステリアスな兼六園?「辰巳用水」を設計した天才・板屋兵四郎

情緒あふれる北陸の城下町・石川県金沢市。市街地には国の特別名勝で、観光地としても有名な広さ12ヘクタールの廻遊式日本庭園、兼六園があります。加賀前田藩の私庭で、岡山市の後楽園、水戸市の偕楽園とならんで日本三名園の一つに数えられています。そんな兼六園にまつわるミステリーをご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

兼六園の徽軫灯籠と霞ヶ池

兼六園の徽軫灯籠と霞ヶ池

4代藩主・前田綱紀が金沢城の外郭に当たる傾斜地に別荘を建て、その周りを庭園としたのが兼六園の始まりとされています。日本三名園のほか2園が一代の殿様によって造営されたのとは異なり、兼六園は歴代藩主が長い年月をかけて拡張、造営を重ねてきました。
文政5(1822)年、寛政の改革で知られる松平定信によって「兼六園」と名付けられます。その後、12代藩主・斉泰が園の見どころである「霞ヶ池」を広げたり、「栄螺山」を築くなどして、ほぼ現在の姿となりました。
松平定信

松平定信

疏水百選の一つ、「辰巳用水」をたった1年で作った天才

園内の噴水は日本に現存する最も古い噴水といわれている。...

園内の噴水は日本に現存する最も古い噴水といわれている。ポンプなど動力は一切用いておらず、位置エネルギーのみを利用しているのだそう。

兼六園の美しい景観をつくる豊富な水は「辰巳用水」と呼ばれる水路を通って犀川上流から運ばれています。この用水は全長約12キロという大規模なもので、寛永9(1632)年に3代藩主・利常が土木技師の板屋兵四郎に命じて開削しました。金沢城下へ引き入れられた水は、兼六園を経てから城内に供給され、残りを城下へ配水しました。

江戸時代初期になると各地に用水が整備されましたが、この辰巳用水は約3キロにわたるトンネル水路が掘られるなど、当時としては非常に高度な知識と技術が駆使されていることが分かっています。中でも兼六園と金沢城二の丸への通水は、取水地が標高の高い位置にあることを利用して揚水するという、いわゆる逆サイホンの原理を応用しているのです。この技術は相当珍しかったようで、当時「伏越の理(ことわり)」と呼ばれました。
『石川県土地改良史』(石川県) (3258)

『石川県土地改良史』(石川県)
ただ不思議なことに、藩主の命令による工事にも関わらず、関連の文献はほとんど残っておらず、兵四郎がどのようにして逆サイホンの原理を知ったのかは分かっていません。
緻密かつ正確な測量を必要とする工事にもかかわらず、兵四郎はわずか1年ほどでこの大規模プロジェクトを完成させたといわれます。

板屋兵四郎にまつわるミステリー

兵四郎自身も謎の多い人物で、算術と測量に長けていた小松出身の町人(小代官という説もあり)ということや、能登の金山開発、千枚田の設計にかかわったと伝えられるほか、詳しいことは何も分かっていません。
一説には、辰巳用水に使われた高度な技術が幕府や他藩へ漏えいすることを恐れた加賀藩が、兵四郎を密かに暗殺。その怨霊を〝袋〟に封じ込めようと、当時の河北郡袋村の神社に祭ったという伝説もあるほど。また、犀川上流の上辰巳町にも兵四郎を祭る板屋神社があり、兵四郎の功績は地元の人々によって顕彰されていることがうかがえます。
金沢市上辰巳町にある板屋神社

金沢市上辰巳町にある板屋神社

用水の恩恵を受ける人たちによって、昭和35年4月に御祭神ゆかりの地に創建されたのだそう。

金沢の起源は兼六園にあり!?

金城霊沢

金城霊沢

かつて芋掘藤五郎という男が芋を洗うと砂金がでてきたことから「金洗いの沢」と呼ばれ、それが「金沢」という地名の由来と言われています。
また兼六園の南隅には「金城霊沢」という決して濁らず、枯れないといわれる湧水泉があります。山で掘ってきた芋をこの泉で洗うと、無数の砂金が出てきたという伝説があるため、金城霊沢と名付けられたそうです。これが金沢という地名になったことを考えると、城下町・金沢の起源は現在の兼六園にあるといってもいいのかもしれませんね。

(黄老師)
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