実は桔梗紋じゃなかった?明智光秀の家紋と出生の謎【家紋のルーツ:第2回】
2018年11月8日 更新

実は桔梗紋じゃなかった?明智光秀の家紋と出生の謎【家紋のルーツ:第2回】

家紋がいつ、どのように生まれ、なぜ使われるようになったのか?そんな家紋のルーツを日本家紋研究会会長の髙澤等さんがゆかりの地とともに紹介する連載。今回は明智光秀の桔梗紋です。前半生が謎に包まれた光秀ですが、そもそも桔梗紋じゃなかった?さらに産湯が4カ所もあるなど、光秀の謎と桔梗紋のルーツに迫ります。

髙澤等髙澤等

明智光秀は「桔梗紋」を使っていない?

土岐梗紋

土岐梗紋

桔梗紋は本当に光秀の家紋なのか?

via 提供:髙澤等
実は明智光秀が使っていた家紋はわかりません。

いきなりの爆弾発言ですが、光秀が「桔梗紋」を用いていたという確たる史料はないのです。
ちょっと怪しげな系図類には土岐族とも桔梗紋とも書かれているし、由緒定かならざる木像などには桔梗紋が描かれているのですが、とても史料としては信用できるものではありません。

現在は状況的に光秀が土岐氏の一族だろう、ということで誰も疑うことをせずに桔梗紋で間違いないだろうということになっているわけです。
光秀の出自が土岐氏族であるということが確定できればよいのですが、いまのところ決定打はないのです。
とはいえ一番可能性の高いのは桔梗紋であることは間違いありません。
明智光秀

明智光秀

特に前半生が謎に包まれた光秀。
『立入左京亮入道隆佐記』という記録では、光秀のことを「美濃国住人ときの随分衆也」と書かれていて、これを根拠に光秀が土岐一族で、しかも重要な地位にあったと主張する人もいます。

「随分」という言葉には現代のように「すごい」、「相当」という意味もありますが、単に「従う」という意味もあります。しかもここには「一族」という意味はありません。
研究者によっては、これは本人が聞いたわけではなく、伝聞や風聞を書いただけなので信用できないという人もいます。ちょっと残念ですが、いつかは決定的な史料が出てくるかも知れませんね。
 (20953)

『立入左京亮入道隆佐記』の記述。
と、長々と前口上を述べましたが、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』で明智光秀が主人公に決まったことですし、そこでは当然のことのように桔梗紋で描かれるでしょうから、ここでも桔梗紋について書きたいと思います。

「桔梗紋」のルーツ

 (20971)

現代のアサガオ。
万葉の時代、桔梗は「あさがお」と呼ばれていたようです。
いまのアサガオも基本ベースは青紫色なので色には共通性があります。
花はその色で見る人のイメージを作り上げるので、桔梗のさわやかでちょっと寂しげな青紫色は日本人の琴線に触れる草花だったようです。

ところで明智光秀の家紋で、ときどき水色に彩色された桔梗紋が見受けられますが、家紋研究者の立場からするとこれは疑問符です。

最初に申したように明智光秀が桔梗紋を用いた証拠はないということもありますが、もっと重要なことに、土岐氏の家紋としては『見聞諸家紋』に「桔梗、ただし幕は無紋水色」と書かれています。

つまり家紋としては普通の桔梗紋であり、陣幕は紋形を描かず、ただ水色に染めただけということです。決して水色の桔梗紋を描いたものではありません。
『見聞諸家紋』の土岐氏部分の記述

『見聞諸家紋』の土岐氏部分の記述

「桔梗、ただし幕は無紋水色」と書かれている。

※『見聞諸家紋(けんもんしょかもん)』は応仁の乱で東軍側に付いた諸将250余りの家紋を記録した重要史料。
水色の桔梗紋が流布した原因は、信憑性の低い『明智系図』に「水色桔梗華」と書かれているからでしょう。
この系図は、なんと大和国の戦国大名・筒井順慶が明智光秀の実の弟と記されていますので、その信用度は推して知るべしというところです。

他に『明智氏一族宮城家相伝系図書』では「蔭桔梗」と書かれていて、よく引用される2つの系図ですでに伝わるところを異にしてしまっています。

このように明智光秀の出自や家紋については解らないことばかりです。
あの有名な肖像画でさえ、私は光秀を描いたものではないのではと疑っております。

産湯の場所が4カ所も!?

龍護寺(岐阜県恵那市)にある明智光秀霊廟。

龍護寺(岐阜県恵那市)にある明智光秀霊廟。

via 提供:髙澤等
私も明智光秀に関係する史跡を巡ったのですが、とても興味深いものでした。
なにせ1日で4カ所もの光秀産湯の井戸(ひとつは湯浴みをした井戸とも)というものを見られたからです。
産湯の井戸が4カ所あるということは、出生地も4カ所あるということです。
いったい光秀は何人いたのでしょう?
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髙澤等

髙澤等

埼玉県飯能市生まれ。長年、実父の日本家紋研究会前会長の千鹿野茂とともに全国の家紋蒐集を行う。家紋の使用家や分布などを、統計を用いて研究している。現在、日本家紋研究会会長、家系研究協議会理事、歴史研究家。著書に『苗字から引く家紋の事典』(東京堂出版)、『家紋歳時記』『戦国武将 敗者の子孫たち』(ともに洋泉社)などがある。 公式

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