5千石でも大大名!参勤交代も免除された日本一小さな藩・喜連川藩
2017年1月13日 更新

5千石でも大大名!参勤交代も免除された日本一小さな藩・喜連川藩

通常、大名といえば1万石以上の石高をもってそう呼ばれます。しかし、わずか5千石で10万石の格式とみなされ、江戸幕府からも優遇を受けていた小さな藩があったことをご存知ですか?今回は、何とも不思議な藩・喜連川藩についてご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

足利氏の血を引く格式!「喜連川氏」とは?

喜連川家が治める「喜連川藩」は、下野国塩谷郡喜連川にありました(現在の栃木県さくら市)。室町幕府を創設した足利尊氏の息子である基氏の流れを汲んでいます。
初代鎌倉公方・足利基氏

初代鎌倉公方・足利基氏

室町幕府から関東を治める鎌倉公方に任じられましたが、やがて将軍家とは対立、内紛もあって衰退してしまいました。その上、近隣の北条氏の圧迫もあったのです。

しかし、豊臣秀吉による北条征伐の後、秀吉は名門の血統を惜しみ存続させることにします。
当時鎌倉公方は分裂し、古河公方と小弓公方に分かれていました。そこで、古河公方の跡取り・足利氏姫と小弓公方・足利国朝を縁組させ、下野喜連川に3,500石を与えて喜連川氏を名乗らせたのです。国朝がすぐに亡くなったため、氏姫はその弟・頼氏と再婚しました。

関ヶ原の戦いには参戦しませんでしたが、頼氏は徳川家康に戦勝祝いの使者を送り、1,000石の加増を受けて旗本となります(後5,000石に)。
 (1531)

さくら市にあった喜連川陣屋跡地は、さくら市喜連川庁舎(旧喜連川町役場)に。模擬大手門があります。

参勤交代も免除!すべてが特例だらけの家柄

室町幕府初代将軍・足利尊氏

室町幕府初代将軍・足利尊氏

さて、4,500石では大名扱いにも藩にもなれません。しかしどうして喜連川藩となることができたのかというと、それはやはり家柄にありました。足利家は清和源氏の流れを汲む家柄でしたし、かつての将軍家でもあったわけです。そして、徳川家もまた源氏の血流であることを称していました。そのため、同じ源氏であり将軍家までつとめた足利家に連なる喜連川家の格式を優遇したのです。
喜連川城址。

喜連川城址。

現在はお丸山公園となり、山頂には高さ49.5メートルの喜連川スカイタワーが建てられている。
まず、喜連川藩には参勤交代が免除されていました。
一応、自主的に参勤交代をしてはいたようですが、妻子を江戸に置く必要もありませんでしたし、賦役も免除されていました。
そして、喜連川藩は御所号を許されていました。これは藩主を「御所さま」と呼ぶということでもあり、簡単に言えば「ものすごい高位」ということなのです。御所さまなんて、天皇や皇族にしか使われないような呼び方ですからね。
また、当初は将軍に拝謁するときの伺候席が、大廊下という最も良い場所でした。しかし一方で、正装は素襖という六位以下が着る装束となっており、官位もなかったのです。大名と旗本、どちらの枠にも当てはまらない不思議な存在だったのですね。

優遇されても常に財政は火の車!

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「さくら市に残る寒竹囲い:維持がしやすくローコスト、藩主推奨の一品」

様々な優遇を幕府から受けてはいても、5,000石では、いくら財政改革に腐心しても懐具合は厳しいものでした。こんな状態だったので、11代目に細川家から迎えた当主は出奔してしまったほどです。
唯一、喜連川藩の助けとなったのは、仙台藩の参勤交代が領地を通る時でした。宿場町として逗留してもらえれば、かなりの金額を落としていってくれたのです。
そのため、10代藩主・煕氏はいつもその行列を待ち構えていたということです。
橋の下で釣りをしながら待っており、藩主の頭の上を通るわけには行かないと挨拶に来る伊達家からの御進物、そして話を引き伸ばしてうまいこと喜連川に泊まってもらうという作戦だったそうですよ。
仙台藩もできれば節約したいものですから、喜連川を迂回したこともありました。すると煕氏はわざわざ江戸城まで行ったなんて話もあります。
まあ、喜連川藩にしてみれば死活問題だったので・・・と擁護してみます。これも煕氏なりの処世術だったということで。
「名君と呼ばれた喜連川煕氏が開削した御用堀」

「名君と呼ばれた喜連川煕氏が開削した御用堀」

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