謙信の愛刀・国宝「山鳥毛」備前長船へ里帰りなるか?瀬戸内市のクラウドファンディングが11月より受付開始
2018年10月24日 更新

謙信の愛刀・国宝「山鳥毛」備前長船へ里帰りなるか?瀬戸内市のクラウドファンディングが11月より受付開始

岡山県瀬戸内市では、備前刀の最高峰である国宝「山鳥毛」が、生まれ故郷である日本刀の聖地・備前長船の地に里帰りするためのプロジェクトを開始。市民の税金に頼らず、同刀の評価額「5億円」の資金調達を目標に、市として初となる国内外に向けたクラウドファンディングを2018年11月1日(木)より開始すると発表しました。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

瀬戸内市による「山鳥毛里帰りプロジェクト」とは

10月23日、東京・帝国ホテルで行われた記者会見にてプ...

10月23日、東京・帝国ホテルで行われた記者会見にてプロジェクト概要を説明する瀬戸内市市長・武久顕也氏

日本刀の聖地なのに、国宝・重文級の刀剣が所蔵されていない「備前長船」

古くから優れた刀剣を多く輩出している岡山県。なかでも、中世を通じ全国一の日本刀の生産量を誇るのが「備前長船」。現在国宝に指定されている刀剣類111口のうち、なんと47口は備前刀なのです。
そんな日本刀の聖地にも関わらず、同地域の備前長船刀剣博物館には国宝・重文級の刀剣が一口も所蔵されておらず、その伝統文化や技術の継承が危ぶまれています。

本プロジェクトは、文化価値の高い国宝「山鳥毛」の県外・国外流出を防ぎ、教育や観光の活性化に資するとともに、日本刀の価値を広め高めることを目的としています。そして「刀工が育つまち」としての文化を育み、その文化継承の機運を高めていこうというもの。
会見には、大人気ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」のニ...

会見には、大人気ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」のニトロプラス社長が所蔵する山鳥毛の写しも展示

via 撮影:ユカリノ編集部
平成30年1月、県内の所有者より市への譲渡について打診があり、4月に市が購入する方針を表明。有識者による外部評価委員会はその資産価値を5億円以上と評価しました。
本プロジェクトでは、ふるさと納税を基本としたクラウドファンディングでの資金調達目標額を2億8千万とし、ほか企業や海外からの資金もあわせて5億円を目指すとのこと。

国宝「山鳥毛」には5億円の価値があるのか?

「山鳥毛」の文化財登録名は「太刀 無銘一文字 山鳥毛(やまとりげ)」。鎌倉中期に現在の瀬戸内市長船町で作られました。上杉謙信・景勝の愛刀として名高く、国宝『上杉家文書』の「上杉景勝自筆腰物目録」に“山てうまう”と記されていることから、“さんちょうもう”と呼ばれています。

なんといっても、その号の由来といわれる山鳥の羽毛のような刃文が魅力。国宝の約半数を占める備前刀のなかでも最高峰の品と考えられています。
岡山県立博物館で15年間「山鳥毛」の手入れ・展示を担当...

岡山県立博物館で15年間「山鳥毛」の手入れ・展示を担当してきた佐藤寛介氏(現・東京国立博物館研究員)

山鳥毛を一番近くで見てきた佐藤氏は、その価値と魅力をこう語りました。
「山鳥毛は、美術品としてだけでなく文化財としても超一級のもの。まさに国宝の中の国宝です。保存状態も極めて良く、その力強さ、華やかさは日本刀として最高峰といえます。

また、上杉景勝が愛蔵した刀のリストが書かれた『上杉景勝自筆腰物目録』には、山鳥毛が“上秘蔵”、つまりトップシークレットとして記載されています。上杉家は江戸時代を通じ、山鳥毛の存在をひた隠しにして守ってきたのです。

文化財は、美術品としての価値と、歴史的な史料としての価値、どちらも大事。
これらの価値をいちばん引き出すことができるのは、この名刀が生まれた地・瀬戸内市であり、その保護をするのは使命なのではと思います。」
瀬戸内市在住の刀工・川島一城氏(写真左)、公益財団法人...

瀬戸内市在住の刀工・川島一城氏(写真左)、公益財団法人日本刀文化振興協会評議員のポール・マーティン氏(写真右)

実際に山鳥毛を手に持ったことがあるという、備前長船の刀工・川島氏。「修行時代から山鳥毛が好きで、よく展示を見に行っていました。そのとき『手に取ってみたい』という夢が、今年ようやく叶ったのです。ガラス越しに見るのとは違い、実際にその重みを感じ、とても感動しました。この感動を備前長船で現代刀を作る人にも感じてもらえたら、すごい現代刀が生まれるのでは」

現在市内に数人しかいないという刀工のひとりとして、「日本人の心の象徴である刀剣を伝承する刀工が少なくなっているのは寂しい。備前長船に里帰りしたら、こんなにすごい刀があるというのを誇りに、この技術を国内外に広めていきたい」と語りました。

山鳥毛のレプリカも!注目の返礼品

山鳥毛の写しとともに撮影に応じた瀬戸内市市長・武久顕也氏

山鳥毛の写しとともに撮影に応じた瀬戸内市市長・武久顕也氏

本プロジェクトで返礼品として注目されているのが、大野義光作の「山鳥毛」の写し。その額なんと864万円!
個人向け返礼品としては、約2880万円の寄付でもらえることになります(笑)

他にも、片山重恒作の「樋内 真の俱利伽羅彫り 大身槍(倣い日本号)」といった高額なものから、プロジェクト記念グッズなど一般の方でも手に届く返礼品も用意されています。

武久市長は「優れた文化財が地方で生きるまちを創りたい。そして日本刀の魅力を生まれ故郷で感じていただきたい。世界に誇る日本刀の文化・伝統技術を育むこのプロジェクトに多くの皆さまのご理解ご協力をお願いします。」と呼びかけました。
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