朝ドラヒロインのモデル、広岡浅子の生涯がわかる特別展示が開催中【前編】
2018年11月8日 更新

朝ドラヒロインのモデル、広岡浅子の生涯がわかる特別展示が開催中【前編】

「びっくりぽん」でおなじみ、平成27年後期連続テレビ小説「あさが来た」(NHK)のモデルとなった広岡浅子。その浅子が創業に尽力した大同生命の大阪本社ビルで、現在特別展示「大同生命の源流“加島屋と広岡浅子”」が開催中。ドラマでは今までの考えに縛られない自由な人として描かれていた浅子ですが、実際はどんな人物だったのでしょうか?歴史エッセイストの堀江宏樹さんがレポートします!

堀江宏樹堀江宏樹

明治時代、最も成功した女性実業家・広岡浅子

大同生命創業者のひとりであり、朝ドラのヒロインのモデル...

大同生命創業者のひとりであり、朝ドラのヒロインのモデルにもなった広岡浅子

NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」のヒロインのモデルになったことで、一気に知名度が高まった明治の女性実業家・広岡浅子。

浅子以前にも、坂本龍馬らをサポートしたという幕末・長崎の女商人・大浦慶など女性実業家がいなかったわけではありませんが、浅子の成功度は桁外れのものだったといえます。

1849(嘉永2)年、京都の三井家のお嬢様として生まれた浅子ですが、少女時代は本当に丁稚の少年相手にすもうを取るなど(※本人談)、かなりのおてんば娘だったそうです。成長してからはあまりに読書に没頭するため、心配になったのでしょうか、13歳(数え年、以下同様)の時には親から読書禁止を宣言されてしまいました。

しかし16歳の時、彼女は自身の判断で勉強を再開しています。そのきっかけとなったのは、1864(元和元)年、京都御所の「支配権」をめぐって会津藩と長州藩が激突した「禁門の変」だったようです。これからは何が起こるかわからない。親の言うことだけに従って、昔気質に生きているだけでは女はダメだと痛感したのかもしれません。

ちなみに「女に学問など不要」とする考え方は、浅子以前も、また彼女が日本初の女子大学を作った後も残りましたが、とくに江戸時代の上流の商家では武家以上に厳しく守られる傾向がありました。それを独断でくつがえしてしまう浅子は本当に凄いわけです。時代が変わる瞬間を、ハッキリと見分けることが出来る人は大成するものですね。

大同生命大阪本社で開催中の特別展示『大同生命の源流“加島屋と広岡浅子”』へ

特別展示が開催されている2階の様子

特別展示が開催されている2階の様子

via 写真/堀江宏樹
さてその後、彼女が17歳の時に嫁いだのが大坂の豪商・加島屋であり、夫になったのが広岡信五郎です。ドラマでは、ほわわ~んとした「ぼんぼん(お坊ちゃま)」としての側面が、玉木宏の演技で強調されていましたが、実物はコミュニケーション能力にすぐれた、やり手の実業家だったようです。趣味の茶道や謡(うたい)を通じて、経営者同士の横の繋がりを深めつつ、紡績事業など浅子との共同作業以外にも色々なことにチャレンジ、成功をおさめています。

しかし、気になるのはやっぱり広岡浅子という人物です。浅子は加島屋を支えるひとりとして、1884(明治17)年に炭鉱事業に取り組み、1888(明治21)年には加島銀行を設立、そして1902(明治35)年には、大同生命の創業に参画します。浅子の活躍によって加島屋は近代的な金融企業として大阪の有力な財閥となるのです。

そんな浅子が作った大同生命のいしずえ、そして今日まで続く会社のあゆみに触れることができる特別展示「大同生命の源流“加島屋と広尾浅子”」が、大同生命大阪本社ビル2階、それも大正時代に作られた旧肥後橋本社ビルのおもかげを残す「メモリアルホール」で行われていると聞き、足を運んでみました。

設計したのは有名な建築家・ヴォーリズ

ステンドグラスのレトロな雰囲気も素敵な建物

ステンドグラスのレトロな雰囲気も素敵な建物

via 写真/堀江宏樹
筆者が大同生命本社ビルを訪ねたのは、4月中旬のある月曜日。最寄りの地下鉄・肥後橋駅からすぐのところにあり、遠目からでもすぐにわかる、ロマンティックな雰囲気を持つビルが大同生命本社の建物です。とくに1階から2階にかけてのスペースが、特徴的なデザインになっています。まるでヨーロッパの教会内部を思わせる、高い柱で支えられているのが特徴的でした。

建物に足を踏み入れると、1階ロビーにはグランドピアノがあり、そして1階から2階にかけてエスカレーターでのぼっていくと、天井一面を覆うステンドグラスが輝いているのが目に飛びこんできます。

ちなみに、現在の社屋が完成したのが1993(平成5)年ですが、1925(大正14)年に完成した旧の肥後橋本社ビルを手がけたのは、あの有名な建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズでした。

係の方に伺ったところ、旧の肥後橋本社ビルが完成した20世紀初頭では、大阪市内でも鉄筋コンクリートのビルはまだ少なかったそうです。デザイン的にも外見は当時最先端のビル建築といった雰囲気ですね。
ヴォーリズの設計した旧肥後橋本社ビルの模型

ヴォーリズの設計した旧肥後橋本社ビルの模型

社名はなんと「大同小異」という諺から付けられたとのこと。
via 写真/堀江宏樹
旧肥後橋本社ビルは、吹き抜けの空間を覆うガラス屋根を透過する自然光が1階の壁面、天井の装飾を効果的に見せるインテリアが特徴的でした。贅沢な構造です。

ちなみに広岡浅子が71歳で亡くなったのは1919(大正8)年ですから、残念ながら浅子はこのビルの完成した姿を見ることは出来ませんでした。

何とヴォーリズとは親戚だった広岡浅子

広岡浅子とヴォーリズのつながりがわかる系図

広岡浅子とヴォーリズのつながりがわかる系図

via 写真/堀江宏樹
なんと、広岡浅子とヴォーリズって広い意味で親戚だったってご存じでしたか? 「あさが来た」でも、多少モメましたが、最終的には白岡家(広岡家のモデル)に婿入りする形で、浅子の愛娘・千代(亀子のモデル)と華族の東柳啓介(広岡恵三のモデル)が結婚するというてんまつが描かれました。

史実では、広岡恵三には一柳満喜子という妹がいました。その妹が1919年に結婚したのが、ウィリアム・メレル・ヴォーリズだったんですね。アメリカ出身のヴォーリズは才能ある建築家でしたが、当時は障害の大きかった国際結婚に、家族たちからは猛反対を受けました。

当時の日本の華族の結婚には天皇/宮内庁の許可が必要とされ、相手が外国人、しかも一般人ならば、かなり難しくなることは予想されました。結局、一柳満喜子は宮内庁の許可を得て、華族としての身分を捨て、平民となり、その後ようやくヴォーリズと結ばれたのです。

当時は困難だった結婚も応援した自由人

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堀江宏樹

堀江宏樹

歴史エッセイスト。 2017年の文庫化・新作は 『乙女の美術史 世界編』(角川文庫)7月25日発売 『本当は恐い日本史(仮)』(三笠書房)9月発売予定 『偉人たちのウソ名言(仮)』(PHP)11ー12月発売予定 近著に 『本当は恐い世界史』(三笠書房)、文庫版『乙女の美術史 日本編』(角川書店)、文庫版『愛と夜の日本史スキャンダル』、『三大遊郭』(幻冬舎)、『乙女の真田丸』(主婦と生活社)などがある。 公式

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