東京ドーム20個分の敷地に犬が〇万頭も…!?東京都中野区に作られた巨大犬屋敷の後碑とその歴史
2016年12月5日 更新

東京ドーム20個分の敷地に犬が〇万頭も…!?東京都中野区に作られた巨大犬屋敷の後碑とその歴史

現在の東京都中野区役所あたりの旧町名である「囲町」。その名前の由来は、5代将軍・徳川綱吉による生類憐みの令で設けられた犬の保護施設「お囲い御用屋敷」からきています。中野に残る犬屋敷と、生類憐みの令についてのエピソードをご紹介します。

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

中野の旧名「囲町」は、生類憐れみの令が由来

JR中野駅からほどちかい中野区役所。建物の前には犬の像と碑が建てられています。
この地は昔「囲町」と呼ばれていました。
中野区役所前にあるお囲いの犬の像

中野区役所前にあるお囲いの犬の像

由来は江戸幕府の5代将軍徳川綱吉の時代、生類憐れみの令から来ています。
歴史の授業でも勉強しましたよね。
一時期は悪法の代表と言われましたが、現在は見直しがされていること、ご存知でしたか?

今回は、生類憐れみの令と中野区と徳川家ゆかりのエピソードをご紹介します。

人や動物の虐待を止めさせようとした生類憐れみの令

徳川綱吉像(徳川美術館蔵)

徳川綱吉像(徳川美術館蔵)

生類憐れみの令は、綱吉の時代に殺生を禁じた135回ものお触れの総称。
人や動物、魚まで、あらゆる生物を対象に、「命を大切にするように」というお触れでした。


巷では捨て子や武士による手打ち、病気を患った動物の放置や虐待などが横行していたようで・・・。
生類憐れみの令は、こうした悲惨な事態を止めることを最大の目的としていたようです。


はじめは訓告程度のソフトなお触れだったようですが、従う人は少なく犠牲になる人や動物は一向に減らず。
業を煮やした綱吉は徐々にお触れを厳しい内容にし、違反者への処罰、密告者への報奨をするようになります。

中野の囲町は巨大な犬保護施設だった?!

 (1077)

※画像はイメージです。
生類憐れみの令の保護対象として、特に有名なのが犬です。
これは、綱吉が戌年生まれだったから。また、子に恵まれない綱吉が犬の多産にあやかろうとしたからなど、様々な理由が考えられています。


が、実際に犬への虐待問題は深刻だったようです。
町には捨て犬があふれ、そのために人が傷つけられることもあり・・・。
そこで綱吉は、犬の飼育を登録制度にし、犬と飼い主の身元を明らかにさせます。
さらに犬を専門に対応する犬目付職も設けました。
お囲いの位置図

お囲いの位置図

(出典「なかの史跡ガイド」)
面積は約30万坪(約100ha)にもおよび、約8万頭の犬が養育されていたといわれているそう。ちなみに1年間の総経費は98,000両(現代でいうと約122億5000万円前後)もかかっていたとか・・・
中野に作られた犬の囲町も、捨て犬を保護する巨大シェルターだったようです。
町の中には餌場や日除け場、子犬の養育場が設けられ、犬専門の医者や役人も置かれました。

他にも綱吉は、動物に芸を仕込んで見世物にすることも禁止しています。
現代でも動物ショーは動物虐待なのでは、という話があります。
そこを考えると、綱吉は相当時代を先取りした動物保護政策を行なったとも言えそうですね。

綱吉の死後、罰則は解除されても精神は受け継がれた

とはいえ、人は生き物の犠牲なくしては生きられないもの。
あまり徹底されたり、あまつさえ強制退去となると、なんとも生きづらい世になってしまいます。

綱吉が亡くなって6代将軍家宣の時代になると、早速犬小屋は廃止され、生類憐れみの令の違反者への罰則は解除されます。

ですが家宣は生類憐れみの令の精神自体を否定したわけではないようです。
「命を大切にする気持ちは、これからも守っていきたい」という要旨の記録が残されているのだとか。

ちなみに囲われた犬たちはというと、結局地域の住民たちのもとで面倒を見てもらったそうです。とはいえあまりにも数が多かったため、その範囲は所沢や厚木あたりに住む人々にまで及んだとのこと。。

現代日本の文化にも生類憐れみの令の名残が

19 件

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

ユカリノ編集部

ユカリノ編集部

全国各地の「ゆかりの」エピソードをほぼ毎日お届け。知ればもっと行きたくなる、歴史の聖地巡礼へご案内します! 公式

関連する記事 こんな記事も人気です♪

江戸時代、銀座は庶民の街だった!?【古地図と巡る江戸街並み探訪:第1回】

江戸時代、銀座は庶民の街だった!?【古地図と巡る江戸街並み探訪:第1回】

現在、世界中の高級店や老舗が立ち並ぶ、押しも押されもせぬ繁華街として栄える銀座、東京の象徴の一つにもなっている為か、最近は外国人観光客もかなり増えてきました。そんな街を、江戸時代からの姿を古地図から見ていくと、意外な発見が現われます。今回は、そんな銀座の歴史と魅力をご紹介していきたいと思います。
江戸の町にタイムトリップ!?深川江戸資料館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第5回】

江戸の町にタイムトリップ!?深川江戸資料館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第5回】

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は深川江戸資料館です。江戸時代末期の町並みを実物大で再現、細部までこだわった展示室は、まるで当時にタイムトリップしたかのよう。初めての人はもちろん、再度訪れたくなる資料館のディープな魅力をご案内します。
天下の名器・国宝「曜変天目」が公開中!静嘉堂文庫美術館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第4回】

天下の名器・国宝「曜変天目」が公開中!静嘉堂文庫美術館【加治まやの美術館 de 江戸巡り:第4回】

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は三菱財閥の2代目・岩﨑彌之助とその息子・小彌太の集めた美術品を所蔵する静嘉堂文庫美術館です。江戸をはじめとする日本や東洋の貴重な美術品のなかでも国宝「曜変天目」の所蔵で知られる美術館の魅力をお届けします。
古地図で発見!真田、黒田、毛利…東京に残る戦国武将の遺構

古地図で発見!真田、黒田、毛利…東京に残る戦国武将の遺構

関ヶ原合戦後、藩主となり江戸に藩邸を持った武将たち。東京には彼らの遺構がいくつも残されています。今回は、真田信之が東軍に参戦した真田家、黒田長政が関ヶ原で奮闘した黒田家、西軍敗北となるも減封にとどまった毛利家の遺構を、歴史をテーマにした街歩きガイドを務める岡田英之さんが古地図をもとにご紹介します。
隅田川花火大会の歴史は300年!夏の風物詩の意外なルーツ

隅田川花火大会の歴史は300年!夏の風物詩の意外なルーツ

夏の風物詩といえば花火。全国各地で趣向を凝らした花火が打ち上げられる大会を心待ちにしている人も多いと思います。なかでも有名な東京・隅田川花火大会の始まりは意外なものだったんです。日本で初めて花火を見た人や、隅田川より古い?花火大会など、知ればもっと楽しめる?花火や花火大会のルーツをご紹介します。
こいつら、全員悪人!江戸の「悪」を集めた展覧会が東京で開催

こいつら、全員悪人!江戸の「悪」を集めた展覧会が東京で開催

つい惹かれてしまう「悪」の魅力。盗賊や小悪党、悪女まで、悪人を集めた展覧会「江戸の悪 PARTⅡ」が東京・太田記念美術館にて6月2日(土)より開催されます。2015年に開催された同名の展覧会がさらにパワーアップ。しかも今年は同時期に連携展が開催されるなど、東京中が「悪」に染まる?その詳細をご紹介します。
再オープンでショップ、ガイドも充実!【加治まやの美術館 de 江戸巡り】第3回:東京都江戸東京博物館

再オープンでショップ、ガイドも充実!【加治まやの美術館 de 江戸巡り】第3回:東京都江戸東京博物館

日本の美術や歴史が大好きなモデル・加治まやさんが、美術館を巡り江戸の文化を紹介する連載。今回は4月に再オープンした東京都江戸東京博物館です。歴史を扱う博物館の中でも特にこちらがお気に入りというまやさんが、新しくなったポイントとともに通ならではの楽しみ方を伝授します!
実は明智光秀という説も!?謎多き天海の正体とゆかりの寺

実は明智光秀という説も!?謎多き天海の正体とゆかりの寺

家康・秀忠・家光の徳川三代に仕え、上野の寛永寺や、日光東照宮の建立に力を尽くした僧侶・南光坊天海。しかし、その前半生はいまだ謎に包まれています。高貴落胤説、あるいは2020年の大河ドラマの主役に決定した明智光秀という説もある、天海の謎の一端を、ゆかりの寺を巡りながら解き明かしていきましょう。
墓はあるけど謎だらけ!「八百屋お七」悲劇のヒロインの真相

墓はあるけど謎だらけ!「八百屋お七」悲劇のヒロインの真相

恋人に会いたい一心で放火事件を起こし、火刑に処された少女「八百屋お七」。しかし実際のお七は、八百屋の娘ということも含め、はっきりとわかっていません。その謎だらけの伝説がかえって関心を呼び、創作が盛り込まれ、私たちの知るお七になっているのです。今回は残された史跡を巡りながら、お七の実像を探ります。
【三大お家騒動】「伊達騒動」現場は東京のど真ん中だった!?

【三大お家騒動】「伊達騒動」現場は東京のど真ん中だった!?

「伊達」といえば伊達政宗ですが、彼の孫の綱宗の代に起きた「伊達騒動」は、「江戸三大お家騒動」のひとつになってしまうほど、複雑で大規模なものでした。当時は歌舞伎『伽羅先代萩』として上演され、山本周五郎の小説『樅ノ木が残った』が大河ドラマにもなった「伊達騒動」をわかりやすく、意外な!?事件現場とともに紹介します。