なぜ上野に?意外と知らない西郷隆盛と愛犬の銅像制作秘話
2018年1月24日 更新

なぜ上野に?意外と知らない西郷隆盛と愛犬の銅像制作秘話

浴衣姿で犬を連れ、凛々しい眼差しを注ぐ。全国的に有名な上野の「西郷隆盛像」は、明治31(1898)年12月18日に除幕式が行われました。今ではすっかり上野の顔になっている西郷隆盛像ですが、なぜ上野にあるのか?連れている犬は何なのか、ご存知ですか?

ユカリノ編集部ユカリノ編集部

上野は戊辰戦争で西郷隆盛が活躍したゆかりの地

有名過ぎる「西郷隆盛像」

有名過ぎる「西郷隆盛像」

上野恩賜公園にある西郷隆盛像。高村光雲作(犬は後藤貞行作)
時は遡り明治元(1868)年。戊辰戦争において西郷隆盛は幕府の勝海舟と会談。
江戸城の無血開城を実現しました。

ですが幕府の中には納得がいかない人も多く、彼らの中からは、上野に立てこもって抵抗する人も現れました。
開城反対派が上野の地を選んだのは、徳川家ゆかりの場所だから。
上野には寛永寺という、徳川家の菩提寺があります。歴代将軍の眠る地を守ろうとしたのでしょう。
上野戦争の図

上野戦争の図

『本能寺合戦の図』と書かれているが、実際には上野寛永寺での戦闘を描いたものだそう。左側の袴姿が彰義隊、右側の洋装の兵が官軍。赤熊は土佐藩兵を描いている。
そんな抵抗派との戦いを指揮したのが、他でもない西郷隆盛でした。
だからこそ、銅像を建てる場所として上野が選ばれたのでしょう。

西南戦争の罪が赦され銅像の建設計画が始まった

西郷隆盛がこの世を去ったのは明治10(1877)年。上野の銅像が建てられたのはその21年後です。ずいぶん間があいていますが、これにも歴史的なワケがあります。

明治維新の立役者だった西郷隆盛は、その後西南戦争の指揮者として明治政府に抵抗し、命を落としています。そのため西郷隆盛は「逆賊」の名が着せられていました。
西南戦争

西南戦争

鹿児島暴徒出陣図(月岡芳年画)
真ん中にいるのが西郷。
明治22(1889)年、明治天皇の意向や黒田清隆らの努力もあり、大日本帝国憲法が公布される大赦で、西郷は「逆賊」の名を赦されます。
それを受けて、西郷隆盛と同じ薩摩藩出身の人達が、銅像の建設計画を立て始めたのです。

当初の予定では正装・騎乗だったのに…?

ですがこれもすんなりとはいかず・・・。
当初は騎乗の銅像で計画されましたが、資金不足で断念。
そこで陸軍大将の正装を着た立像で計画が進められますが、明治政府の正装を着させることに猛反発する人が。
結果、現在の浴衣姿に犬を連れた銅像になりました。


当時の浴衣は略装で、人前に出る服ではありませんでした。
人に見られることを前提とした銅像は、本来なら正装を着せるもの。
銅像を見た奥さんが「夫はこんな人じゃなかった」とショックを受けたという話は有名ですが、その真意は「人前に浴衣で出るような失礼な人じゃなかった」・・・だったようです。
その後、鹿児島に立てられた西郷隆盛の銅像

その後、鹿児島に立てられた西郷隆盛の銅像

1937年(昭和12年)、鹿児島市立美術館近くに立てられた銅像は軍装(陸軍大将)。正装で直立不動の姿勢なのは、上野の像での名誉回復があったのかも。

彫刻の都合で性別とサイズが変えられた愛犬

上野の西郷隆盛像が連れている犬は、生前に飼っていた薩摩犬・ツンがモデルです。
が、こちらもちょっとしたエピソードが。
銅像を作り始めた頃には、ツンもすでにこの世を去っていました。
そこでモデルとされたのが、同じ薩摩出身の軍人・仁礼景範が飼っていた薩摩犬。
ツンは雌でしたがモデルとされた犬は雄でした。銅像はモデルを優先され、雄犬として作られています。


さらに薩摩犬は本来もう少し小さいのですが、見栄えの観点から実際より大きく作られています。
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